Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

β5「君の名は。」

2019-10-20 | Movie Reviews
 約千年の時を経てふたたび厄をもたらす彗星。そして約三年の時を超えてはじめてめぐり逢うふたりの物語。

 ユング心理学において、太古の昔からひとの心に受け継がれてきたイメージが元型(アーキタイプ)と呼ばれ、それらは、自らの意識において在るべき姿を追い求める「自我」と自らの無意識において在るべき姿とは全く逆の「影」、異性の理想像を司る「アニマ/アニムス」、人智の及ばぬ存在や原理を司る「老賢人」、生と死を司る自然の摂理を司さどる「グレートマザー」。

 ひとの心に潜むそのイメージに支配されるのではなく、そのイメージに自らが向き合ったとき、因果関係が無いはずのめぐり逢わせを、どこかでつながっていると意識すれば、自分だけの物語が始まるのかもしれません。

 エンディングにふたりが問いかける「君の名は。」という台詞には、自分だからこそ乗り越えられたという自信と自分らしく生きることの意義を示唆しているような気がします。

♪運命だとか 未来とかって 言葉がどれだけ手を伸ばそうと 届かない場所で僕らは恋をする♪
(Lyrics by RADWIMPS )

(新海誠 監督作品, 2017)

初稿 2019/10/20
校正 2020/09/06
写真「何処かで巡り合う君と僕」
撮影 2012/11/07(東京・新宿遠景)