Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

α32D「女 Woman」朝倉響子, 1970.

2023-06-10 | Exhibition Reviews
 暖かい陽の光が、ぐっと握りしめた両手の力をほどきつつあるものの、空を仰ぐ彼女の表情をいまだ窺い知ることはできません。

 "なぜ、〈わたし〉がそう思うのか?"

ありとしあらゆるものは、言葉によってその意味が自ずから分かれ、その意味に応じて限り無い〈世界〉がいくつも存在するのかもしれません。

 でも、眼前の彼女は、過剰に積み重なったなんらかの意味が生成した〈世界〉から逃れた瞬間なのかもしれません。

 ひょっとしたら、ふりそそぐ光によって〈わたし〉の視界が拓けるとき、〈あなた〉と〈それ以外〉が織りなす〈世界〉の意味を物語る表情が窺い知れるような気がします。

初稿 2023/06/10
写真「女 Woman」朝倉響子, 1970.
撮影 2023/01/18(東京・吉祥寺)