Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

α34D「WOMAN」朝倉響子, 1978.

2023-06-24 | Exhibition Reviews
 暖かい陽の光を浴びた彼女が、両脚を地につけながら、ゆっくりとじっくりと、そしてしなやかに両腕を上げようとしています。

 覗き込もうとしても、塞ぎ込んだ顔を窺い知ることすらできなかった彼女※1が、暖かい光に誘われて空を仰いで※2、鼻筋が通ってきた顔のなかに※3、現れた唇から何かを物語ろうとするかのような兆しにも思えます。

 ところで、"なぜ、〈わたし〉がそう思うのか?"

 阪神・淡路大震災によって大きな被害を受けた神戸にて、その激震に耐えた高層ビルの市庁舎の前に佇むその姿からは、憤りや悲しみを受け入れようとする〈わたし〉が〈わたし〉という存在を再構築しているような気がします。

 朝倉響子が創る作品たちは置かれた場所や時間、そしてその姿かたちが違えども、思いもよらぬ巡り逢わせから、その意味を考えると、ひょっとしたら、〈わたし〉だけの〈世界〉が存在するのかもしれません。

初稿 2023/06/24
写真「WOMAN」朝倉響子, 1978.
撮影 2023/03/16(神戸・花と彫刻の道)
注釈
※1)α31D「女」朝倉響子, --?.
※2)α32D「女 Woman」朝倉響子, 1970.
※3)α33D 「Woman」朝倉響子, 1973..