Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

#17「黄昏を映し出す塔の移ろい」

2012-12-12 | Liner Notes
 かつて明治の黎明期において帝国列強から衛るための富国強兵に資するべく、通貨と金融のあらゆる調節を担う役割を担った日本銀行本店。

 日本に伝来したすべての思想や文化、そして宗教は長い時の洗礼を浴びて日本的に同化順応し、建築の随所に機能してきたと感じますが、明治期の急激な変化がもたらしたのは、新たな国家デザインとしての象徴だったような気がします。

 そして約半世紀の後、その役割は政府から独立した機関として国民経済の発展に資する物価と金融システムの安定に移ろいました。

 ちょうど目の前に拡がる景色も、その背後には当時の国家デザインを凌駕するそびえる塔に移ろっているような気もします。

初稿 2012/12/12
校正 2021/04/12
写真 日本銀行本店, 1896. 日本橋三井タワー, 2005.
撮影 2012/10/15(東京・日本橋)