何軒かの車屋を周り、時は刻々と過ぎ、自分に出来ることがどんどんなくなっていく。そもそも、自分に出来ることなど、ほぼない。
国道407号のスズキの修理工場で、すぐの修理を断られ、僕の心は決まった。
向かう先は関口モータース。行きつけの車屋。
関口モータースへ行かないために、車検物語は始まった。関口モータースへ向かうということは、つまり、そう、敗北宣言、ということである。
僕は負けた。
何に負けた。
車検に負けた。
6万円・・・浮くはずだったのに。日給マイナス6万円になってしまった。ははははは。
道中、僕の頭の中にはさだまさしの関白宣言が流れている。
いや、ほら、敗北宣言だから。
関口モータースに関口さんはいなかった。
しばし待つ。
そもそも、あと二日しかないのだ。関口さんも嫌な顔をするに決まってる。ブレーキを修理しないといけないし。関口さんに頼まずに、自分で車検を通そうとした不義理者だし。裏切り者がのこのこと来てんじゃねぇ!と言われてもおかしくない。
しばし待つ。
・・・。
赤いテリオスキッドに乗って、関口さんが帰ってきた。
ことの顛末を話す。
関口さんが言う。
「ブレーキを直して、どうする?自分で車検通す?うちでやる?」
「すべてお願いいたします」と僕は言う。
だって僕の手にはもう白旗しか握られていないのだから。
「じゃあこれに乗って行って」と赤いテリオスキッドを指差した。
神様仏様関口様なのである。
関口さんに預けてしまえば、もう大丈夫。数日後か数十日後には、車検に通ったジムニー号が僕の元へと帰ってくる。
さて、結局、僕がついていたのか、ついていなかったのかは、わからない。
ついていなかったような気もするが、ついていたような気もする。
一日中走り回って、いろんな人と話した。
まぁ、小さなことに振り回されながら生きてるってことを実感したりしなかったり。
色々と勉強になったなぁと言い聞かせてみたり。
総じて言えば・・・まぁ、楽しい一日だったと・・・言えなくもない。