さて、そろそろ行かなければ。
遠くでお昼を告げるサイレンが鳴っている。すごくうるさい。豊似のお昼のサイレンは空襲警報かと思うくらいうるさい。
おとうさんとおかあさんが見送ってくれる。
恥ずかしがるおかあさんを説得して、シャドウちゃんと一緒に写真を撮らせてもらった。
おかあさんが言う。
「初めて来てくれた時は紅葉が綺麗だったのよねぇ」
そう、紅葉が綺麗だった。窓から見える楓の葉が真っ赤に染まっていた。
砂利道の駐車場を、転ばないようにゆっくりと慎重に回る僕は少しかっこ悪かった。
おとうさんとおかあさんが手を振ってくれる。
僕は何度も振り返りながら手を振る。見えなくなるまで。何度も何度も。
どうして少し涙が零れるんだろう?
きっとそれは、ここが、僕が一番好きな場所だから。
そんなことを考えながら、僕は天馬街道の旅を終えるのである。