秘湯からの帰り道。来た道を戻る。
熊笹が生い茂る道を行く。
僕はきたさんの後を行く。
きたさんの足取りが急にゆっくりになる。
ほぼ止まるくらいになる。
おっ、なんだ?なんかあったのか?と身構える。
きたさんが再び歩み始める。
おっ、なんだったんだ?と考える。
きたさんが吐き出した煙がぶわーっと広がって、後ろを行く僕に全部かかる。
タバコ?タバコに火を点けたの?
えっ?この状況で?熊笹を藪漕ぎしているこの状況で?
バカなの?えっ?バカなの?なんで今なの?
あっ、バカだった。そうだ、こいつバカだった。
そんなことを思いながら、僕はきたさんの後ろを無言でついていくのである。