今年の春、僕はせっせと蜂箱を作っていた。いなくなってしまったミツバチを呼び込まなくてはならない。ミツバチを呼び込まなければハチミツが採れない。ハチミツが採らなければハチミツカフェを名乗れない。
車で10分くらいの近所にオザワジィが住んでいる。
僕は出来上がった蜂箱を三つ積んで、オザワジィの家へ向かった。
オザワジィの家へ着くと、オザワジィは庭先でコンコンと何かやっている。
「あっ、椎茸の種駒打ちだ!」
それにしてもすごい数の椎茸の原木が転がっている。
オザワジィ、御歳78。100本近いナラの木を手鋸で伐ったらしい。
僕は言った。
「来年はオレがチェーンソーで伐ってあげるね」
オザワジィが言う。
「原木、何本か持っていくか?」
僕は言う。
「うん、持ってく」
自分の分は自分で種駒を打つ。オザワジィが指南してくれるのだが、僕は椎茸の種駒打ちもナメコの種駒打ちもやったことがあるので、実のところ得意なのである。
ドリルでブィーンブィーンと穴を開けて、種駒をコンコンコンと打ち込んで・・・。
オザワジィが言う。
「上手いなぁ。おれより上手いよ。来年は全部やってもらおう」
僕は言う。
「いいよ。来年はオレがやってあげるよ」
椎茸の種駒打ちが全部終わったところでオザワジィが言う。
「これから安藤さんのところへドリルを持っていってやるんだけど、載せていってくれるか?」
僕は言う。
「いいよ。載せていってあげるよ」
車でブーンと走る。安藤さんのことは全然知らないが、安藤さんの家は僕の家のすぐそばだった。
おじーさんやおばーさんにたくさん会った。オザワジィはおじーさんやおばーさんと話し込んだらしている。
オザワジィが僕のことを話しているのが聞こえる。
「あの子はうちへよくお茶を飲みに来てくれるんだよ」
おじーさんやおばーさんが言う。
「あら、いいわねぇ」
オザワジィが嬉しそうに話していて、僕はちょっと照れる。
オザワジィの家へと戻る。
なぜオザワジィの話をしているのかって言うとね、僕はオザワジィに聞いたわけだ。
「オザワジィの栗林に蜂箱を仕掛けてもいい?」
オザワジィは言ったわけだ。
「いいよ」
さぁ、余興は終わりだ。
いざ!栗林へ!
つづく。