オザワジィの家の裏に小高い山があって、その山の一部がオザワジィの土地で、その山に栗が植わっている。栗林。
オザワジィはミカン畑も持っているから、ミカン畑でもいいかなぁと思ったのだけれど、オザワジィが「栗林の方がいいんじゃないか?」と言うので栗林にやって来た。
栗林からの見晴らし、とても良い。ハチさん、来るかな?
蜂箱を仕掛ける。
蜂箱は自作。
ハチの師匠のキムキムニーヤンが言っていた。
「蜂箱に蜂が入る確率は、宝くじと同じだ」
そう、野生の蜂が、蜂箱に入って営巣する確率は、恐ろしく低い。らしい。
だけど、やらねばならぬ。やらねばならぬのだ。ハチミツ、食べたい。野生のハチミツ、食べたい。
キンリョウヘンという花がある。ミツバチはキンリョウヘンの香りに引き寄せられて、蜂箱に入る。つまりキンリョウヘンがあれば確率が上がる。すごく上がる。
キンリョウヘン・・・僕にはそんなものはない。確率は下がる。
キンリョウヘンの匂いの成分を使った、人工の蜂寄せグッズが売っている。それを使えば、確率が上がる。すごく上がる。
そんなもの、僕は持ってない。すごく高い。だから持ってない。確率は下がる。
ミツロウ・・・蜜蝋。ハチの巣を茹でて溶かして冷やして固めたもの。これはある。
ミツロウを塗る。蜂箱の天井や壁や入り口に塗る。バーナーで燃やしてくっつける。
ミツロウの匂いに引き寄せられてミツバチがやってくる。確率がほんの少しだけ上がる。何もしないよりはマシというくらいの確率は上がる。
栗林の上の方に二つ。栗林の下の方に一つ。蜂箱を仕掛けた。
仕掛けたといっても置いただけ。ただ置いただけ。
あとは、待つ。春に入らなければ、終わり。また来年の春を待つ。宝くじの確率。つまり、ほとんど入らない。
一年に一回、宝くじを買う。そんなイメージ。
「まぁ、入らないだろうなぁ・・・」
やらなければ入らない。やれば入るかもしれない。でも、まぁ、入らないだろうなぁ。