ニホンミツバチはね、
巣箱の天井から巣を作り始めて、どんどんと下の方へと巣を伸ばしていく。
女王蜂は卵をどんどん産んで、働き蜂がじゃんじゃん増えて、巣の上の方にハチミツが貯まって、ハチの群れはどんどん大きくなっていく。
夏の暑い日には、働き蜂が外に出て、巣箱の入り口付近に集まって、後ろ向きになって羽根をブーンと震わせる。巣箱の中へ涼しい空気を送っているのである。
ある夏の日。ハチの様子がおかしい。ハチの群れが巣箱の外へ出てしまっている。すごい数。ちょっと引くぐらい、すごい数。これ全部に刺されたら、きっと死ぬ。
なぜ、ハチが巣箱から出てしまっているのか・・・素人だから、わからない。
「暑いのかな?」
「窮屈なのかな?」
「なんなのかな?」
わからない。でも、まぁ、どう見ても、状況は良くはなさそうだ。
「困ったな」
ハチは上から下へと巣を伸ばしていく。
翌日、巣箱の中を覗いてみた。
上から伸びてきた蜂の巣が、下まで伸びて巣箱の底にくっつきそうになっていた。
なるほどなるほど、そういうことか。
ハチの居場所がなくなっている。そして、狭いから暑い。暑いし狭いし、みんな外へ出る。
さて、どうするか?
そういう時のために、継ぎ足すための箱がある。
巣箱の下の方に、同じサイズの木枠を足せるようになっている。
ダルマ落としの逆の要領で、巣箱を持ち上げて、木枠をスポっとはめていく。
ハチが営巣出来るスペースを確保。
その日から、ハチが外へ出て巣箱の壁に張り付く現象はなくなった。
日々勉強なのである。知らないことしかない僕にとっては、起こることとその対処、その全てが勉強なのである。
僕にハチと巣箱を分けてくれてキムラ師匠はこう言うのである。
「ハチの気持ちになって考えろ!」
僕は目を閉じて考える。
「ハチの気持ち、ハチの気持ち・・・」
うーん・・・
ハチの気持ちなんて・・・全然わかんないのである。
いくら考えても、ハチの気持ちはわからない。
全然ダメダメな僕なのである。