施設に入所している56歳女性が誤嚥性肺炎で入院した。脳性麻痺のため、寝たきり状態で四肢は拘縮している。最近嚥下障害が進行して、抗てんかん薬もやっと飲み込む状態だった。経管栄養を考えていた矢先の誤嚥性肺炎だった。
ユナシンで治療を開始したが、4日目に全身に発疹(紅斑)が散在していた。好酸球増加が見られたが、肝機能障害はなかった。すでに解熱していて、入院時から酸素吸入が必要な状態ではなかったので、ユナシンを中止して発疹が軽快するのを待った。4-5日かかって発疹は消退した。幸いに抗菌薬中止後も、胸部X線の浸潤影は改善して、炎症反応も軽快した。抗菌薬を変更して治療再開する予定だったが、使用しないでそのまま経過をみた。たぶん自力で肺炎は治った。
今回は肺炎が治癒した後に胃瘻造設を予定していたが、どうもすんなりとはいかないと思われた。胸部腹部CTで胃が肋骨弓から下に出ていないし、結腸ガスが心窩部に目立った。前回の内視鏡検査で、瀑状胃で内視鏡の挿入が困難と記載されていた。再度内視鏡を挿入すると確かに瀑状胃で、内視鏡が幽門側へ進んでいかない。胃大彎を思い切り圧迫する形にして、やっと幽門側へ入るが、それ以上は進まない。透過光は腹壁に全く見えず、内視鏡的胃瘻造設は不可能と判断された。
外科医に事情を話して腸瘻造設を依頼すると、来週やりましょうと、あっさり言われた。外科としては麻酔がちゃんとかかれば大した手技ではないようだ。特にこの患者さんは脳梗塞の高齢者とは違って50歳代と若く(寝たきり拘縮ではあるが)、造設すれば十年単位での生存が期待できるのでやりがいはある。