誤嚥性肺炎で入院した98歳男性は、肺炎が治っても嚥下障害でゼリーを少量くらいしか飲み込めなかった。ムース状のソフト食でも誤嚥して肺炎が起きた。家族は胃瘻造設を希望せず、といって多少話ができるので、そのまま末梢用の点滴で看取るというのもはばかられた。点滴できる末梢血管があまりない方だった。どのくらい維持できるかわからなかったので、とりあえず大腿静脈からCVラインを入れて、高カロリー輸液を開始した。栄養が入ると、さらに反応がよくなり、テレビを見ることもあった。高カロリー輸液を継続して、療養型病床へ転院の方針となった。ただし、喀痰培養でMRSAが検出(colonization)された点がひっかかって、なかなか受け入れの話が出なかった。
高熱が続いて胸部X線で(全体に汚い印象はあるが)明らかな肺炎はなく、尿が以前より混濁したため、尿路感染症として治療を開始した。すぐに解熱して、10日間の投与で尿所見は改善して抗菌薬を中止した。ところが、やめた翌々日からまた高熱が出た。胸部X線で右上肺野に浸潤影が出現して、ゼリー食を再開したこともあり誤嚥性肺炎かと思われた。抗菌薬再開で、またすぐに解熱した。しかし、抗菌薬を中止してすぐに高熱が出たことから、カテーテル感染(カテーテル関連血流感染)が疑われた。
血液培養2セット(1セットはカテーテルから)を提出して、抜去したカテーテル尖端の培養も出した。鎖骨下からCVカテーテルを挿入した。すると、まずカテーテル尖端からMRSAが検出された。血液培養2セットからもまだ確定に至らないが、グラム陽性球菌(MRSAだろう)が検出された。
最初の発熱からカテーテル感染だった可能性がある。ただし使用した抗菌薬はメロペンで、MRSAには効かない。使用してすぐに解熱して検査値も改善したことには合わない。発熱したのが休日の夜間だったので電話指示で培養の提出なしで抗菌薬を開始していた。その後の経過がいいことから血流感染ではないと思っていた。再度の発熱は平日だったので、培養が出せたのだった。原則としては、休日夜間でもすぐに駆けつけて培養を出さなければならないが、現実には難しい。