昨日58歳女性が手足の脱力で動けなくなって救急搬入された。高血圧症で外来通院しているが、この方は安定剤と睡眠薬と頭痛薬の患者さんとして有名だった。30日分ずつ薬だけの処方を希望されて、さっと帰ってしまう。あまり高血圧症であることは認識されていなかった。
3日前から症状が出始めたらしい。血液検査で血清カリウムが1.9と低カリウム血症だった。CKが上昇して、ASTとLDHも上昇している。嘔吐下痢はなく、利尿剤の投与もなかった。
改めてこれまでの検査結果を見ると、以前からARBが処方されているのに、血清カリウムが3の前半と低めだった。10年以上前に当地に引っ越してきて、その時の血圧が200もあって入院していた。二次性高血圧症の検査がなされたが、特に異常はなかった。
今回腹部CTを見ると、左副腎に低濃度の腫瘤があるようだ。低カリウムから考えて、原発性アルドステロン症が疑われた。朝は食事もとれないので普段の薬(ARBのディオバンが入っている)を飲んでいなかった。搬入時の血圧は搬入時200あって、救急当番の外科医がペルジピンを静注していた。血圧は170程度になったので、このままCa拮抗薬のみで経過をみることにして、ふだんのアムロジンにアダラートを追加した。
生理食塩水500mlに塩化カリウム20meqを混合して、点滴を開始した。その日の夕方に血清カリウム2.1となって少し脱力が軽減した。そのまま点滴を継続したが、今朝は2.0で思ったより上がっていない。塩化カリウムの点滴を少し減らして、内服と併用にした。明日には内服だけにしたいがどうなるか。
とりあえず、血清レニン・アルドステロンンを提出してみた。正確にはARBをしばらく抜いてから検査すべきだろうが、内分泌性高血圧症が疑われれば当院では精査できないので、専門医のいる病院に紹介になる。血清カリウムが補正できて、歩行に支障なくなれば、さっそく退院して紹介する予定だ。