昨日の外来に95歳男性が食欲不振・体重減少で受診した。退職する若い消化器科医が、来週の内科再来に予約を入れていたが、それまで待てなかった。11年前に急性膵炎で消化器科に入院して、その時の画像で膵鉤部と膵体部に多発性嚢胞を認めた。その時すでに84歳で、経過観察となった。一昨年にも急性膵炎をきたして、その時には嚢胞の増大があった。
今年の1月下旬に背部痛で受診した。腹部造影CTで膵体尾部から連続して腹腔動脈周囲に充実性腫瘍が浸潤していた。嚢胞性病変の目立つ鉤部ではなくて、体部の嚢胞から癌化したことになる。鎮痛薬を処方して、私の外来にフォローを依頼されていた(直接は聞いていないので、この患者さんのことは知らなかった)。
腫瘍マーカーを提出すると、CA19-9が11500と上昇していた(CEAは10)。息子さんに膵癌が浸潤していることを説明した。患者さん自身はまだ体力がありそうだった。入院すると、退院にもっていけるかどうかわからない。できるだけ自宅で過ごして、もっと悪化した時点での入院を提案した。血糖を確認するとHbA1cが6.2%と少し上がっていたが、まだステロイドを使用できると判断した。デカドロン点滴(その日は結果待ちで点滴していた)をして、内服として処方した。1週間後に外来予約を入れて、通院継続か入院かを判断する。興味深い症例ではある。購入していた「臨床消化器内科2014年12月号IPMNの診療の現況」を読み返すことにした。