外来に糖尿病で通院している88歳男性が、一昨日に皮膚科開業医からの紹介で受診した。右足趾が黒色になり、発赤・びらんを呈していた。この患者さんは、6年前に地元の診療所から糖尿病の血糖コントロール不良で紹介された時からの通院だった。受診時からインスリン注射を要する病状だったが、認知力低下があり、山間の町で一人暮らしだった。通院の時は娘さんが車で往復して連れてきていた。
入院はいやだというので、やむなく外来治療になった。何故か経口血糖降下薬は処方しても飲もうとしない。娘さんの話では、薬局から薬はもらうが、自宅にそのまま置いてあるという。何度か説得して入院とした。30R朝夕のインスリン注射を何とか覚えたように思われた。その後また外来通院していたが、常にHbA1cが10%以上だった。最大でHbA1c17%という値が出て、驚いた。外来なのでインスリン量を漸増して経過をみるしかなかった。教育入院はずっと拒否。
そのうちに認知症の進行で、自宅がゴミ屋敷状態となり、娘さんもやっと引き取る気になった。同居して娘さんがインスリン注射をするようになってからは、HbA1cが8%台になって、普通の糖尿病らしい値だった。その矢先に脳梗塞になり、不全半身麻痺はそれほどでなかったが、嚥下障害で経口摂取できなくなった。娘さんと相談して、内視鏡的胃瘻造設術(PEG)を行い、経管栄養を開始した。インスリンは30R朝夕から強化療法(ノボラピッド毎食直前+トレシーバ朝)に切り替えた。退院して半年経過して、胃瘻(器具)交換を今月初めに行ったばかりだった。その後から足の発赤が出現して、娘さんは熱傷と思っていたそうだが(熱傷になる理由はないが)、さらに黒色になった。、
下肢の動脈は膝窩動脈で血流が悪いそうで、抗菌薬・プロスタグランディン点滴静注で経過をみることになった。経管栄養は継続して、内科でインスリンの指示を出す。