先週水曜日の当直の時に、心肺停止の80歳女性が救急搬入されてきた。当院の受診歴はほどんどなかった。
家族の話では、2年前から骨髄異形成症候群(MDS)で血液内科のある病院に通院していた。今年の2月に急性骨髄性白血病に移行したという。
本格的な治療は難しく、貧血に対する輸血のみ行っていた。血小板減少から歯肉出血を来したりしていた。数日後にも外来で輸血を受ける予定だったそうだ。
急に胸が苦しいと訴えて、症状が続いたので、家族(娘さん)が救急要請をした。救急隊が到着してすぐに心肺停止に陥った。心肺蘇生術が開始され、体外式心臓マッサージ機が装着された。人工呼吸は普通のアンビューバッグで行っていた。
機械で心臓マッサージをすると、気管挿管をしないと人工呼吸はうまくできない。救急隊が点滴ラインも確保して、アドレナリン注を1回行っていたが、反応はなかった。
あのガシャン・ガシャンという音を立てて、体外式心臓マッサージ機が装着された患者さんが搬入された。ちょっとだけ停止してもらって、気管挿管を行った。
機械を止めると心静止だった。また機械を動かして、人工呼吸を行ったが、人工呼吸器につなぐと心臓マッサージ機と合わないので手動になる。
アドレナリン注で20秒くらいのPEAが出て、また心静止になるのを繰り返したが、その後はずっと心静止だった。瞳孔は散大して、対光反射はなかった。
挿管チューブ内を吸引しようと、いったん外すと、血液が噴出した。出血傾向のある患者さんに、機械で強力に胸部を圧迫していることになる。
心肺蘇生継続しても見込みがなく、家族に伝えると、あの機械の動きを救急車内で見てきたためだろう、「かわいそうなので、やめて下さい」と言われた。
救急室に入ってもらって、死亡確認を行った。当院としては事情がわからないので、Autopsy imagingを行わせてもらうことにした。
頭部CTは特に問題がなかった。胸腹部CTでは両側肺野に浸潤影様の陰影が広がっていた。気管支内にも液体が貯留している。CT値では血液と確定できない値だったが(水腫ではなく血性だと思うが)、気管に貯留しているのは血液だった。これは病気としてのものなのか、体外式心臓マッサージ機作動の影響なのか、判別しがたい。
体外式心臓マッサージ機は、治療とはいえ、見た目は拷問見えてしまう(個人の感想です)。両上肢を固定するので、特にそう見える。(病院に搬入後も使わせてもらうので、批判的なことは言えない。)
あのガシャンガシャンという音もかなりのものだ。機械なので確実に胸部を5cm沈ませる。家族に装着されたところをまじかで見ながら、いっしょに救急車で来る家族には強烈な印象が残るだろう。
(当地の機械はこれよりもっとゴツい)