火曜日の救急当番の時に、食欲不振・体動困難の78歳女性が救急搬入された。
以前は当院にいた循環器科医のクリニックに通院している。急性心筋梗塞(下壁)の既往があった。1か月前から食欲低下、正確には食事摂取が難しくなっていた。
血液検査で貧血があり、鉄剤とP-CABが処方されていた。当院の消化器科に上部消化管内視鏡検査の依頼が来ていて、その2日後が予約日だった。
意識は清明で、よくしゃべる。一見して腹水貯留があった。眼瞼結膜は蒼白というより、白そのものだった。嘔吐すると、コーヒー残渣様の吐物が出た。排便があり、タール便だった。鉄剤内服中なので便潜血(ヒトヘモグロビン)を確認したが、陽性だった。
1か月前から食事摂取ができなくなってきている。この経過で貧血があり、腹水となれば、消化管悪性腫瘍が疑われる。
血液検査でHb4.3g/dlと著しい貧血があった。まずはCTで見当を付けることにした。胃が拡張して、食残貯留があった。空気も貯留している。幽門部が不整に肥厚して、狭窄しているように見える。腹水が中等度以上に貯留していた。
胃癌による幽門狭窄が疑われた。まずは貧血に対する輸血を行って、Hbが7~8g/dlくらいにはしないと処置はしにくい。血圧は130台と保たれていて、ショックではなかった。
消化器科医(当院はひとりだけで、体調不良で仕事セーブ中)に相談したが、う~んと(困った)いう感じだった。地域の基幹病院消化器内科に相談してみましょうか、と提案した。
一番入院ベット確保が難しい診療科なので、ダメもとという気持ちだった。輸血して少し経過みてから考えるのは当院でもできなくはないが、可能ならばお願いしたい。
電話してみると、一番上の先生につながった。受けてもいいということだった。新患係は別の先生なので、地域医療連携室に言っておくので、10分くらい後にかけ直してほしいと言われた。
診療情報提供書を書き始めて、15分してかけ直した。診療科の中では若い先生が出て、受けてくれた。ありがたく、救急搬送とした。
外科手術件数も多い病院なので、輸血のストックも院内にあると思う。当院は輸血ストックは置かないので、赤十字センターからの取り寄せになる。
搬送後にCTを見ていたが、幽門部の腫脹が癌らしくないようにも思える。十二指腸潰瘍ということはないか、とも思った。穿孔して腹膜炎にならなければ腹水貯留はないはずだが。
この患者さんは当院の眼科に通院していた。白内障手術の術前検査が3月初めに行われていた(胸部X線・心電図・血液検査)。Hb7.1g/dlとすでに貧血だった。
眼科は常勤医がいなくて、日替わりの非常勤医なので、結果をみていなかったのかもしれない。体調不良で患者さんが手術をキャンセルしたので、検査しただけになってしまったのだろう。異常値だと検査から報告が行くはずだが、常勤医がいないとどうしたのだろう。
クリニックでの採決で貧血はわかっていたので、直接の影響はなかったかのしれない。それにしてもこれは問題だったと思う。