なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

腸閉塞で搬送した後

2022年06月06日 | Weblog

 先週、地域の基幹病院外科から診療情報提供書の返事が来ていた。最近外科に紹介していないが、と思いながら、封筒を開けてみた。

 患者さんの名前を見ても、すぐには思い出せなかった。IDを入力して電子カルテを開いて、画面に張り付けている付箋を見て思い出した。2月末に腸閉塞で救急搬送していたのだった。

 

 患者さんは78歳女性で、先方の病院の呼吸器内科にステロイド依存気管支喘息で通院していた。プレドニン15mg/日を内服していて(ICS/LABA吸入あり)、抗体製剤(抗IL-4/13受容体抗体デュピクセント)を使用していた。

 その時はうっ血性心不全で同院循環器内科に入院していた。症状軽快後に廃用症候群で当院にリハビリ転院の依頼がきた。虚血性腸炎が発症(利尿薬の使用で脱水症になった)して、いったん中止した利尿薬を少量再開した直後に転院してきた。

 さらにこの患者さんは左上肢の非結核性抗酸菌症(M.chelonae)もあるという、疾患満載の患者さんだった。(この皮膚疾患が印象的だった)

 転院後の2週間のリハビリで、ベットからポータブルトイレには自分で移動できるようになり、リハビリ室で平行棒を使って歩行できるようになった。

 

 2月末になって急に腹痛と嘔吐(胆汁性)が出現した。点滴で2日経過をみたが改善はなく、腹部CTで小腸の拡張・消化液貯留を認めた。腹部手術の既往はなく、外科医に相談すると何らかの内ヘルニアだろうと言われた。

 先方の病院外科に連絡すると、受けてもらえたので、救急搬送した。

 

 搬送後、保存的に治療していたが、軽快せず10日目に手術を行っていた。小腸が横行結腸間膜に癒着していたとある。剥離・切除を行った。その後縫合不全を来したが、保存的に軽快したそうだ。

 4月になって経口摂取できるようになり、別の病院(療養型病床)にリハビリ転院を依頼して転院待ちになっていた。ところが、5月連休明けに夕食中に心肺停止となった。蘇生術施行で心拍は戻ったが、2日後に亡くなった。誤嚥からの窒息では、と記載されていた。

 

 ずいぶん苦労されて診療に当たっていたのだった。ステロイド長期使用の皮膚で、ほんの少し引っ張られただけで、ごく薄い皮膚がズルっと剥けてくるような方だった。

 リハビリ転院を依頼していた病院は県庁所在地にあり、そちらへの転院もあまりないはずだ。家族(お子さんたち)の居住地というような都合なのかもしれない。

 

コメント
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