なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

非結核性抗酸菌症(NTM)疑い

2022年06月05日 | Weblog

 水曜日の夕方に救急外来をみていた先生(大学病院外科からバイト)から慌てた様子で連絡がきた。

 当院内科外来に通院している74歳女性が、呼吸困難で救急搬入された。酸素飽和度が60%台で到底外科医では診られません、ということだった。

 検査は新型コロナの抗原定性検査だけしていて、画像検査などはまだだった。感染病棟(COVID-19 病棟)にいたので、この患者さんを外来で診ている内科のい若い先生に連絡して、診てもらうことにした。

 

 救急室で看護師さんが喀痰吸引を行うと、酸素飽和度100%(酸素6L/分)になっていた。何度か喀痰吸引をして、少しずつ酸素吸入慮を調整して、3L/分でも98%になった。

 重症肺炎であれば地域の基幹病院呼吸器内科への搬送も考慮していた。胸部X線・CTで確認すると、右中葉の肺炎があり、右肺にもありそうだが、肺炎の程度と酸素飽和度からは、まず当院で治療してもいけそうだった。

 

 抗菌薬(ゾシンPIPC/TAZ)で開始して、翌日には解熱していた。病室に診に行くと、しっかり開眼して普通に会話ができる。鼻カニュラ3L分で酸素飽和度は良好だった。

 

 この患者さんはもともと内科医院に通院していた。2014年に当院放射線科に胸部CTの依頼があり、読影レポートは「両肺に気管支拡張像が見られ、斑状影・空洞形成もみられる。診断:非結核性抗酸菌症疑い」だった。内科医院でクラリスロマイシンが投与されていたようだ。

 今年の3月に、右末梢性顔面神経麻痺で当院耳鼻咽喉科に入院した。入院後に発熱と炎症反応の上昇があり、胸部CTで左下葉背側に浸潤影を認めた。肺炎で内科転科となって、内科の若い先生が担当した。

 始めはセフトリアキソンで治療を開始したが、思わしくなく、ゾシン(PIPC/TAZ)に変更して軽快した。退院後はそのまま内科外来で診ていた。

 ただ喀痰の抗酸菌検査は行っていなかった。外来で、クラリスロマイシンとリファンピシンを投与していた。専門医には相談していなかった。

 

 木曜日に大学病院から呼吸器科外来に来ている先生(呼吸器と感染症の専門医で、結核・抗酸菌認定医)に相談した。内科医院でのクラリスロマイシン単剤投与を聞くと、嘆いていた。NTMは当然単剤では治らない。キードラックが単剤投与で薬剤耐性になると、その後の治療は困難になる。

 今回喀痰の抗酸菌塗抹を3日間行い、培養とPCR(結核・MAC)を提出した(塗抹陰性でも提出)。もっとも薬が入っているので出ない可能性が高い。

 患者さんが耐えられるようであれば、地域の基幹病院呼吸器内科に紹介して気管支鏡検査を検討したいという(この先生はそちらの病院にも行っている)。

 治療薬としては、マクロライド+リファンピシン+エタンブトールの3剤併用よりマクロライド+エタンブトール2剤併用の方が、治療成績が3剤併用と遜色がなく、治療中断が少ないそうだ。私ならアジスロマイシン+エタンブトールです、と言っていた。

 

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