75歳男性が有床診療所から左胸部痛で救急搬送されてきた。紹介した内科医の弟が当院で外科医をしていて、ちょうどその外科医が救急当番だった。
この患者さんは10日前にインフルエンザB型に罹っていた。いったん軽快した後に高熱があり、診療所に入院していた。抗菌薬投与(カルベニン)で治療が開始されて、熱は下がってきたが、微熱が続き。左胸部痛(呼吸性に痛い)が出現してきた。インフルエンザ後の二次性肺炎を疑う経過だった。バイタルサインは安定している。
胸部X線(臥位)で左肺野が均一に透過度が低下していた。胸腹部CTで左胸腔内に胸水貯留があった。外科医に相談されて見てみると、画像上は左の肺炎・胸膜炎と思われた。ところが、この患者さんは昨年腹部大動脈瘤の手術を当院血管外科で受けて、フォローされていた。血管外科医が画像を見ると、昨年と比べて横隔膜の位置で大動脈が拡大していた。一部に破裂したところがあり、胸腔内と後腹膜に出血していると指摘された。胸腔内に貯留していたのは炎症による浸出液ではなくて血液だった。当院では胸部大動脈瘤は扱えないため、専門の病院へ救急搬送された。