アルツハイマー型老年認知症でグループホームに入所している86歳女性が、両側下肢の浮腫で紹介されてきた。紹介したのは施設の嘱託の内科医でかなり高齢の先生だった。昨年施設に入所した時から浮腫はあったが、急に悪化したという。
車椅子に乗って施設職員と家族に付き添われた診察室に入ってきた。確かにむくんでいるが、酸素飽和度は正常域で、呼吸苦はない。心不全ではないなあと思いながら、検査を入れた。家族から、動くときに左股関節部を痛がっているので、そこも診てほしいと言われた。自力歩行可能で、夜も施設内を歩き回っていたが、今日は痛がるという。転倒したかどうかはわからないらしい。
心・肝・腎は問題なし。FDPとd-ダイマーが高値で深部静脈血栓症が疑われたが、あっさりX線で左大腿骨頸部骨折と判明した。深部静脈血栓症を否定するために、そのまま造影CTを施行したが、否定的だった。腹部に下大静脈を圧迫する悪性腫瘍も疑われたので、腫瘍マーカーも提出していたが、異常なしだった。最終的には、もともと肥満体型で静脈還流が悪く、下肢にある程度の浮腫があったが、頸部骨折のために浮腫が増悪したというものだった。結果的には過剰な検査になったが、十分な術前検査をしたことにしよう。