なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

肺癌・トルソー症候群

2019年03月11日 | Weblog

 今日はがんセンター呼吸器内科から、肺癌・トルソー症候群の71歳男性が転院してきた。脳梗塞で四肢の麻痺と失語がある。

 そのそもは1月末に高血圧症・糖尿病で通院している内科クリニックから、血清CEA高値(漸増)の精査目的で、当院放射線科に胸腹部造影CTの依頼があった。結果は、「左肺に腫瘤があり、肺癌が疑われる」だった。ただ、「脾臓と右腎臓に陰影欠損があり、脾梗塞・腎梗塞が疑われる」、もあった。

 その時点では肺腫瘤は緊急性がなく、脾梗塞・腎梗塞の方が緊急性を要する。CTのみの依頼なので、読影レポートが依頼元に送られた。CT・MRI依頼だけでも、たとえば脳出血がある場合は放射線科から院内の担当科に連絡が行くが、その時はなかった。

 内科クリニックでは、腫瘍マーカー高値の精査だったこともあり、(腹部の方は気にしないで?)がんセンター呼吸器内科に紹介した。そして受診時には左半身の麻痺と失語を呈していた。頭部MRIで多発性脳梗塞を認めて、緊急入院となった。

 心エコーで大動脈弁に疣贅があり、ヘパリンの持続点滴が開始された。血液培養は陰性で、感染性心内膜炎ではなく血栓と判断された。肺癌とも関連からトルソー症候群と診断された。

 ヘパリン持続点滴で大動脈弁の血栓消失を確認して、DOAC内服に切り替えたが、脳梗塞が再発した。心エコーで大動脈弁と僧房弁に血栓を認めて、ヘパリン持続点滴が再開された。

 この段階で当院に転院依頼の連絡が来た。ヘパリン持続点滴を皮下注に変更予定とあった。今日転院して来ると、皮下注になっていた。12000単位を朝夕皮下注している。

 診療情報提供書には、肺癌自体は小さく転移もないことから、担癌患者さんとしては長い予後になるだろうと記載されていた。むしろ血栓塞栓症の再発が予後を決めることになりそうだ。

 四肢の不全麻痺でベット上では盛んに体を左右に動かしていた。失語があるので会話はできない。ヘパリン皮下注継続となると、施設入所はできないので、病院入院を継続するしかない。この条件で療養型病床に頼めるだろうか。

 トルソー症候群がなければ、肺癌の手術ができたはずで、それも治癒する可能性がある。気の毒は患者さんだった。

 

 

 

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「ジェネシャリスト宣言」

2019年03月10日 | Weblog

 「ジェネシャリスト宣言」岩田健太郎著(中外医学社)を読んだ。ジェネシャリストGenecialistは岩田先生の造語で、ジェネラリスト(いろいろな呼び名があるが、たとえば総合内科)とスペシャリスト(臓器・分野ごとの専門医)のハイブリッドだそうだ。ジェネラリストかスペシャリストかという二元論ではなく、両者を兼ね備えた存在になる必要があるという主張だ。

 内科全般についての広い領域をカバーした上で(ジェネラリスト)、たとえば循環器専門医や呼吸器専門医や消化器専門医などの専門を持つ(スペシャリスト)ということだ。これが医学界新聞に掲載された時や、感染症の学会で岩田先生のジェネシャリストについての講演を聴いた時は、なるほどそれが正しい在り方だと納得したものだ。

 ただその時と状況が変わり、すでに内科専門医制度が始まっている。内科専門医がジェネラリストの研修に、その次には二階建ての臓器・分野別の研修(循環器・呼吸器・消化器など)がスペシャリストの研修に、自動的になる。実際、岩田先生も3年間の内科専門医制度には(内容はともかく)賛成している。そうなると、スペシャリストになった後もジェネラリストとしての勉強を継続するべきだということだけが、岩田先生の主張になる。

 最近はジェネラリストとスペシャリストの境界がかぶってきている。さらにはスペシャリストの中でも、ジェネラルなスペシャリストと、その中でさらに専門に特化したスペシャリストに分かれている。たとえば循環器だと、ジェネラルな循環器専門医と、その中でもさらに専門的なカテーテルアブレーションを行う不整脈専門医がいる。

 どこまでも専門に分かれて行っても、基本である内科専門医としての診療もきちんとできれば、問題ないのだろう。

The GENECIALIST Manifesto ジェネシャリスト宣言

  

 今日は誤嚥性肺炎を再発した88歳男性が急変して、午前3時半に病院に行った。結局病状は改善せず、午前10時過ぎに亡くなった。もう一人の患者さんも意識がなくなってしまい、1日もつかどうかという状態になっていたが、前から病状悪化時はDNRの方針になっていたので、日当直医にお願いすることにした。

 

 

 

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「ブラッシュアップ急性腹症 第2版」

2019年03月09日 | Weblog

 「ブラッシュアップ急性腹症 第2版」窪田忠夫著(中外医学社)を読んでいる。実際に診療している外科医なので、実感できる内容になっている。研修医にお勧め。中外医学社の本は、これまで紙質が厚くて粗雑で印刷が薄いというものが多かった(この本の第1版も)。この本は紙質が薄くて良く、印刷もしっかりしていてカラー写真もきれいだ。

 コラムで私見を述べておられるのが納得の内容だった。まず「イレウス」について。日本では従来、腸閉塞を機械的イレウス(腸管の閉塞あり)でも麻痺性イレウスでもイレウスと称しているが、国際的には、腸閉塞は腸管の閉塞のあるもので、イレウスは麻痺性イレウスでのみ使用している。単に「イレウスです」と言ってしまうと、そこから原因検索に向かわずに思考が止まってしまう危険がある。腸閉塞と称すれば、そこから必然的に腸管閉塞の原因検索に向かうようになる。著者は「イレウス(という用語の)撲滅運動」展開中だそうだ。

 次に「胃腸炎」について。そもそも胃腸炎という病気はあるのかと著者はいう。ウイルス性・細菌性腸炎の症状は、腹痛・嘔吐・下痢だが、この場合の嘔吐は腸炎に付随した症状であり、胃の炎症ではない(まあ何度も嘔吐すれば結果的に胃粘膜の発赤・びらんは生じるか)。胃炎は胃炎でまた違う疾患だ。

 そして「便秘」について。腹痛で受診した患者さんの腹部X線で大腸内の便が目立つと便秘と診断してしまう。そこで浣腸をして排便の有無にかかわらず症状が(ちょっとでも)軽快すると、帰宅としてしまう。1~2日便がなくて、X線で大腸の便が目立つだけで、腹痛の原因を便秘をしてしまっていいのか。他の疾患を見逃しているのではないか。

 昭和な感じの著者が隣にいてアドバイスしてくれるような印象の記載になっていて、とてもいい。自分の記載に自分でつっこみを入れたりしているのも面白い。そもそも急性腹症の本自体あまりないし。

ブラッシュアップ急性腹症 第2版

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透析患者の糖尿病治療

2019年03月08日 | Weblog

 先週血液透析をしている49歳の糖尿病患者さんの、血糖コントロールを頼まれた。以前にいた腎臓内科医がやめてから、当院の透析担当は外科の常勤医になっている。血糖が1000mg/dlと出て、驚いたらしい。血糖に関しては内科での対応になる。

 この方は6年前から内科外来に通院していた。地元の町立病院の糖尿病専門医が診ていたが、その先生とケンカして通院を中断したそうだ。当院受診時はHbA1c10.%になっていた。

 その後1年でHbA1cは6%台になった。処方はDPP4阻害薬とメトホルミン。喫煙とアルコール性肝障害(脂肪肝)があり、やめるように勧めたが継続していた。血糖コントロールは良好だったが、4年前からネフローゼ症候群となり、腎機能もしだいに悪化した(処方はDPP4阻害薬になった)。糖尿病の初期治療が予後を決めるという遺産効果を実感する経過だ。

 ネフローゼによる全身浮腫が出現して、腎臓内科(大学病院から応援)併科から腎臓内科通院になった。利尿薬の最大投与でも全身浮腫がとれず、何度か内科入院になっていた。特に下半身がすごいことになっていて、両下肢を開かないと歩行できなかった。水分のとり過ぎなので、入院すると利尿薬は同量でもしだいに軽減して退院していた。

 その後血清クレアチニンは4mg/dl程度だったが、浮腫のコントロールができず、除水のためにも早期に血液透析導入になった。透析になってからも水分のとり過ぎで、透析管理が難しかった。引き過ぎると血圧低下した。

 今回入院してすぐの血糖は200mg/dl程度だったので、血糖1000mg//dlは本当かとも思ったが、その後血糖が400~500mg/dlで推移した。実際に血糖は悪化していて、おそらく液体の糖分をとった後の血糖だろうと推定された。

 昨年12月まではHbA1cでいうと6%台で推移して、糖尿病薬なしで過ごしていた。それが今年1月に上昇し始め、2月にぐっと上昇して(HbA1c8%相当、今回の入院に至っていた。外来に来てもらっている透析担当の腎臓内科医が、HbA1cではなく、グリコヘモグロビンで評価していた。透析で溶血したり、腎性貧血の問題もあるので、HbA1c出ない方がよいという判断だそうだ。でもこの方はネフローゼでグリコアルブミンでの評価も問題だと思うが。

 当方がグリコへモグロビンを測定しているのは、異常ヘモグロビンの患者さんだけで、それでも1回おきにHbA1cとグリコヘモグロビンを測定している。単純にグリコヘモグロビン値の1/3がHbA1c値と覚えている。2月はグリコアルブミン25.2、今回は61.2で、もう変換自体意味を成すかどうかわからない(HbA1c20%?)。グリコヘモグロビンだと上がっても診る方の医師が悪化を実感しないのではないか。

 今回悪化したのは、1月から清涼飲料水を1日2L飲み続けていたからと判明した。インスリン強化療法とDPP4阻害薬を開始して、血糖はしだいに低下して、倦怠感が消失した。透析から飲水制限を言われているが、普段全く守っていない。入院してからは病棟看護師さんに注意されると、飲んでいないと言い張って怒鳴っていた。

 

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肺癌で転院

2019年03月07日 | Weblog

 呼吸器科の専門病院から肺癌の64歳男性が転院してきた。その病院の心臓血管外科で胸部大動脈瘤でステント留置の処置を受けていたが、途中で通院しなくなり、フォローから外れていた。

 昨年末から背部痛で整骨院に通院していたそうだ。症状が続いて、今年の1月に近医からまたその病院に紹介されたが、すでに多発性骨転移があった。抗癌剤治療は希望せず、緩和ケアを受けることになった。

 オピオイド増量(オキシコンチン150mg/日)でせん妄状態となって、減量されていた。現在は50mg/日になっていたが、レスキューのオキノーム10mgを頻回に内服するらしい。

 当院よりも大学病院かがんセンターの緩和ケア病棟(ホスピス)の方が好ましいが、比較的近い?という理由で当院転院を希望されていた。当院の医療圏ではまったくないが(当院は山沿いで住所は海沿い)。

 画像でみると、胸部X線・CTで原発の肺癌は大きくはない、むしろ多発骨転移が目立つのだろう。CEAが700と著増している。送られてきたCD画像の中にPET-CTもあった。きれいなカラー画像だが、ステントが挿入された胸部大動脈瘤の周囲に癌があるのが気持ち悪い(浸潤から大動脈破裂)。

 食事摂取がほとんどできないのは、何に由来しているのだろう。久しぶりの本格的な緩和ケアになる。3か所病院から肺癌の転院があるが、この方が最初のひとりだ。

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OTSCって何?

2019年03月06日 | Weblog

 昨日地域の基幹病院消化器内科から、88歳女性が転院してきた。出血性胃潰瘍で当院から搬送したので、正確には当院に戻ったということになる。

 化膿性脊椎炎・硬膜外膿瘍で当院の整形外科に入院していた。先月の日曜日に吐血・下血(タール便)があり、その日の整形外科当番だった大学病院の先生が、基幹病院に救急搬送していた。(当院の消化器科は重症でない場合の平日のみ対応になっている)

 NSAID投与による出血性胃潰瘍と診断されて、通常の内視鏡的止血術が行われた。行われたが止血が得られず、最終的にはOTSCで止血したと診療情報提供書に記載されていた。

 OTSCって何?と思った。調べてみると、内視鏡的(消化管壁)全層縫合器Over-The-Scope Clip(=OTSC)だった。消化管穿孔や通常の方法では治療できない消化管出血に用いる、(写真を見ただけだが)すごいクリップだった。食道静脈瘤結紮術(EVL)の要領で、内視鏡先端に付けたキャップ内に消化管の全層を吸引して(場合によっては鉗子で引っ張り込んで)大きなクリップをかけるというものだ。これは知らなかった。

 「今後は吐血・下血が再発再燃しても、貴院でできる範囲で対応して下さい」、とあった。家族の話では、「ふだん行っていない方法で処置しました。やれるだけのことはやりました。」、と言われたそうだ。これ以上は勘弁して下さい、ということだろう。なにしろこの患者さんは、非代償性肝硬変(原発性胆汁性肝硬変)があり、化膿性脊椎炎・硬膜外膿瘍も治ってはいない。

 認知症がない点だけはすばらしいが、ちょっとベットアップしても背部痛・腰痛があり、食事摂取も進まない状態だ。末梢血管は点滴静注できそうな血管がほとんどない。CVラインを入れていたらしいが、転院時は抜去されていた。

 ご家族には、どのくらい持ちこたえるかわからないが、とにかくやってみましょうとお話した。

  こんなクリップ。

 

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感染性肝嚢胞

2019年03月05日 | Weblog

 88歳女性が内科新患を受診した。一昨日の日曜日の夜間に心窩部重苦感と食欲不振で受診した。腹部CT(単純)で多発性肝嚢胞を認めて、炎症反応が上昇していて、他に感染巣がないことから肝嚢胞の感染を疑ったらしい。

 月曜日に内科新患を受診するように指示していたが、月曜日は倦怠感があり、受診しなかった。具合が悪くて病院に来れないというのは高齢者でよくあることだ。食欲不振が続いて、今日は息子さんが連れてきた。やせた小柄で腰の曲がったおばあさんだった。

 腹部エコーで見ると、肝膿瘍ではなく、肝嚢胞の内部の液体貯留が二層に分かれていた。造影CTで見ると、肝内に嚢胞が散在していて、左葉外側の嚢胞は壁肥厚と造影効果があり、感染の併発が示唆された。膵尾部にも嚢胞があった。

 肝内胆管は一部わずかに拡張しているようにも見えるが、明らかな総胆管拡張はなく、胆嚢結石もなかった。肝機能障害はほとんどない。入院で抗菌薬投与を行って経過をみることにした。

 

 

 今日は地域の基幹病院消化器内科から、出血性胃潰瘍でやっと止血した88歳女性が転院してきた。今週はさらに同病院泌尿器科から術後、がんセンターと大学病院と心臓呼吸器などのセンターのある専門病院からいずれも肺癌の転院がある。先週末に入院が30名を切ったが、今週はまた40名になる勢いだ。

 

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また食道アカラシア

2019年03月04日 | Weblog

 昨日の日曜日に30歳代後半の男性が、食事をとれなくて、ふらつくという訴えで救急外来を受診した。血液濃縮を認めたが、単なる脱水症ではなかった。

 先月に胸痛を訴えて、心臓血管センターのある専門病院に救急搬入された。検査の結果、心臓病はなく、食道アカラシアと診断された。大学病院の専門外来予約となり、今週受診することになっていた。水分と半固形食の摂取を勧められていたが、守ってはいないらしい。

 腎前性と判断される腎不全を認めて、点滴継続のため入院になった。担当したのは先日食道アカラシアの患者さんを大学病院に紹介した内科の先生だった。偶然だが日曜日に内科日直をしていたので、当る時は当たるものだ。

 縦隔気腫も認めたが、嘔吐による胸腔内圧上昇が関連しているのだろうか。発熱はなく、炎症反応は陰性だった。大学病院受診まで点滴を継続して経過をみることになる。

 胸部単純X線で、心陰影の後ろに拡張した食道による陰影がある。CTで著明に拡張した食道と貯留した消化液と食物残渣を認める。

 

 

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一発診断5

2019年03月03日 | Weblog

 水曜日の内科再来を受診した66歳女性(糖尿病・高血圧症)から、「もう痕が残っているだけだが、先月右指(第4指の基節部)に皮下血種が出現して痛かった」、という話を聞いた。  

 「何でしょうか」と訊かれたが、明らかな打撲もなく、出血傾向もないのでわからなかった。車の運転をした後に発症していて、「強く握り過ぎて毛細血管から出血したものでしょうか。また発症したら診せて下さい」と答えるしかなかった。

 その後にCareNeTVで下記の症例をみて、同じものかと思われた。

 

CareNeTV
一発診断
第5回 右第3指の痛みとしびれを訴える52歳女性

Illness Script 9
52歳女性
現病歴:
 右第3指に痛み、しびれを突然自覚し、同部位にあざができていると訴えて受診 以前にも同様の症状あり
身体所見・検査所見:
 既往歴、外傷歴なし 血液検査 異常なし
一発診断:
アッヘンバッハ症候群

アッヘンバッハ症候群
概念:
・外傷や血液凝固異常などの誘因がないにもかかわらず掌側の手指に
1)痛み 2)しびれなどの異常感覚
3)血腫・紫斑 がみられる
・腫脹した指は運動が制限され、蒼白・冷感を伴うこともある
病因:
・はっきりわかっていない
・水道の開け閉め、重い荷物を持つなどの日々の軽微な物理的損傷が原因になることもある
疫学:
・50歳以降の女性に多くみられる(男性の7倍)
・発祥平均年齢:約50歳(60歳未満が90%を占める)
好発部位:
・第2指、第3指の順でみられ、忠節部と基節部に生じやすい
・指先、爪床にはみられない
 まれに足趾・足底にみられることもある
治療:
 冷却・安静により平均4日(2~14日)で自然消退する
 繰り返すことが多いため、、重篤な疾患ではないという保証を与える

一発セオリー:
中年女性に手指の掌側に疼痛を伴う皮下血種が突然発症したら・・・
アッヘンバッハ症候群

Illness Script 10
28歳女性
現病歴:
 2日前から39℃の発熱、昨日から腹痛・嘔気・下痢などがあり受診
 腹痛症状が最もひどく、軽度の嘔気と10回/日以上の下痢あり
身体所見・検査所見:
 体温38.6℃ 血圧118/58mmHg 脈拍96/分 
 血液検査 白血球12000/μL CRP5.4mg/dl
 腹部は平坦・軟
 臍周囲から右下腹部にかけて圧痛を認める
 便のグラム染色 カモメの羽様のグラム陰性桿菌
追加問診:
 3日前に鶏肉を摂食
(後日 便培養でCampylobacter jejuni/coliが検出)
一発診断:
カンピロバクター腸炎

カンピロバクター腸炎
疫学:
・細菌性腸炎の中で最も多い
・旅行者下痢症の代表
原因:
・鶏肉の摂取(50~70%)
 牛・羊・豚・汚染された牛乳・水でも起こりうる
潜伏期間:
 3日間(1~7日)
症状:
・前駆症状(高熱、筋肉痛、倦怠感
、頭痛、めまい、不穏など)が1日(まれに数日)続いたのちに(約1/3)、消化器症状が出現
3大症状:発熱・腹痛・下痢
 発熱(90%以上)
  微熱~40℃以上の発熱、1週間続くこともある
 腹痛
  下痢よりも腹痛が強いのが特徴
  右下腹部痛を訴える場合、虫垂炎との鑑別が必要となる
  腹痛は下痢が治ってからも続くことがある
 下痢
  軟便~水様もしくは血性(15%)が1週間続く 10回/日以上みられることもある
 嘔気はよくみられるが、嘔吐は少ない(15~25%)
 基礎疾患がある場合、菌血症や敗血症を来すことがある(0.1~1.0%)
他の右下腹部を来す疾患(偽性虫垂炎)との鑑別
・感染性 
 カンピロバクター腸炎、サルモネラ腸炎、エルシニア腸炎(39℃以上の発熱)
 ウイルス性腸間膜リンパ節炎
 エンテロウイルス・パルボウイルスB19・アデノウイルス
 伝染性単核球症、猩紅熱、麻疹(発症前期)
・非感染性
 SLE、糖尿病性緊急症、クローン病、血管炎、骨盤内炎症性疾患、卵巣出血、卵巣嚢腫破裂・茎捻転、憩室炎、急性胆嚢炎、急性膵炎
便検査:
 グラム陰性桿菌 gull wing(カモメの翼)様 感度89% 特異度99.7%
治療:
・軽症の場合は対症療法のみ
・基本的に抗菌薬は使用しない
・以下の場合は抗菌薬を使用
 1)高熱 2)血便 3)1週間以上症状が続く 4)妊婦  5)免疫抑制患者
 第一選択薬はマクロライド系抗菌薬
(キノロン耐性が増えている)

一発診断:
下痢よりも腹痛・発熱が主症状の腸炎をみたら鶏肉の摂食を確認し、便グラム染色でgull wingを認めれば・・・カンピロバクター腸炎

 

 

 

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一発診断4

2019年03月02日 | Weblog

CareNeTV
一発診断
第4回 腹部膨満を訴える寝たきりの80歳男性

Illness Script 7
80歳男性
現病歴:老人保健施設に入所中で寝たきり。数日前からの腹痛・腹部膨満感・食欲不振を訴えて受診。腹部手術の既往なし。
身体所見・検査所見:腹部は膨満し、腸蠕動が低下。
腹部X線:coffee bean sign
一発診断:S状結腸軸捻転

結腸軸捻転
・腸閉塞の原因となる、緊急処置が必要な疾患の1つ
・大腸閉塞の原因として悪性腫瘍・憩室炎の次に多い
・腸捻転の部位はS状結腸が最多(75~80%)

S状結腸軸捻転
危険因子:
 高齢男性
 長期臥床
 慢性便秘
 精神神経疾患の合併(パーキンソ ン病、認知症、統合失調症など)
 薬剤性(下剤、鎮静薬、抗コリン 作用のある薬剤)
解剖学的特徴:
 癒着、巨大結腸、結腸過長症など
症状:
 腹痛・腹部膨満・便秘(三徴)
 嘔気がみられるが嘔吐は少ない
身体所見:
 視診では左下腹部が虚脱
 拡張した大腸を触診できることが ある
 腸蠕動は亢進・減弱いずれも起こ りうる
 腹膜炎を起こしていなければ圧痛 は認めない
腹部X線
・診断率は57~90%
・coffee bean sign
 典型的な所見は60%以下(CTを推 奨)
・下記所見のどれかが当てはまれば 診断可能(特異度00%)

1)ループの頂点が左横隔膜の下
2)ループの壁が左下方へ収束
3)ループの壁が下行結腸に重なる
腹部CT
 whirl sign:捻転部位で結腸管膜と血管が渦を巻いているように見える
 beak sign:捻転し拡張した腸管が鳥のくちばし様に先細りして見える
 直腸は虚脱し、ガスを認めない
治療・予後
 腹膜刺激症状・血便・壊死を疑う 所見が
 (-)→内視鏡敵整復術
 (+)→緊急手術
 約60%の患者で再発がみられるため、待機的手術が望ましい
S状結腸軸捻転は小児・若年者でも起こりうる

一発セオリー
寝たきりの高齢男性に腹痛・腹部膨満・便秘がみられ、直腸診で便塊を認めず、腹部X線でcoffee bean signがあればS状結腸軸捻転

Illness Script 8
34歳女性

現病歴:4週間ほど前に37℃の発熱・鼻汁・咽頭痛があり、市販の風邪薬を内服。数日で症状は良くなったが、その後から咳が始まり治まらないため受診。
身体所見・検査所見:
 咽頭所見 鼻汁が咽頭後壁に流れ落ちている
 聴診 異常なし
 胸部X線 異常なし
 下腿浮腫 なし
 胸やけ なし
一発診断
 上気道咳嗽症候群(UACS)


慢性咳嗽の原因
1)上気道咳嗽症候群(UACS)
2)咳喘息(気管支喘息)
3)胃食道逆流症(GERD)
4)非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)
5)感冒後咳嗽(PIC)
1)~3)で90%
非喫煙者・ACE阻害薬(-)・
胸部X線異常なし→1)~3)で慢性咳嗽の99.4%

上気道咳嗽症候群(UACS)
・慢性咳嗽の原因で最多41%
・上気道の異常に関連して生じる咳 の総称
・ウイルス感染症やアレルギー性鼻炎などの炎症により咳受容体が刺激されるために咳が出現するといわれているがはっきりわかっていない
原因:
 急性鼻咽頭炎、副鼻腔炎、アレル ギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎 (血管運動性鼻炎など)、妊娠性 鼻炎など
症状:
 咳嗽、鼻症状(鼻汁・鼻閉)
 頻回の咳払い(喉にひっかかり飲 みたくなる痰)
 嗄声、鼻汁が喉に落ちてくる感  じ、喉のむずむず感
診察:
 咽頭粘膜の敷石状変cobblestone appearance
 鼻汁の垂れ込み
 喘鳴
 喘鳴を来す最も多い原因は上気道 咳嗽症候群

上気道咳嗽症候群には、
・特徴的な症状や所見はない
・咳以外に症状や所見がないこともある20%
・後鼻漏による咳嗽患者の20%は後鼻漏に気づいていないかその存在と咳嗽の関連に気づいていない
・後鼻漏が咳の原因であることを証明できる検査はない
受診時に鼻症状がなくても、鼻症状を伴う感冒後に長引く咳をみたら本疾患が原因と考えて診断的治療を開始するのが妥当

治療:
・鎮咳薬は効果なし
・第1世代の抗ヒスタミン薬+鼻粘膜うっ血改善薬
・アレルギー性鼻炎が原因なら
 第1世代の抗ヒスタミン薬+ステロイド点鼻薬
少なくとも1週間(必要があれば4週間)は続ける必要がある
咳嗽の原因
・原因が2つ以上18~62%
・原因が3つ42%
最初に処方した薬の効果が十分でない場合でも中止せずのほかの病態を考慮して薬を追加する

一発セオリー
慢性咳嗽の最も多い原因は上気道咳嗽症候群

 

 

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