美しい限定本
リンク先の下の写真もぜひ見てね
Neverwhereラジオ放送は最終回を終えましたが、まだBBCサイトで聞けますね。
ベネリントン(天使イズリントンbyベネディクト)の怪演にも驚かされ、以後、ルシファーとガブリエルの名を聞いたらイズリントンの友達として思い出してしまうんでしょう。でもイズリントンには「idiot」「 bloody」呼ばわりされてるから仲良しではなかったんでしょうね。
さてベネリントンのおかげで、またいい作品に出会えました。ドラマにも本にも。
ドラマではスコッツマン・マカヴォイ君のたよりない魅力爆発でしたし、
監督・音響のダーク・マッグスがドラマの前後に色々語ってくれて
「この仕事のおかげで11月から休みもとれなかった程忙しかった」と
彼の作品に対する愛を知り、私のドラマへの親近感も湧きました。
さらに今回のドラマには原作本のようなものもあり、それも作品理解を助けてくれました。厳密には原作ではなく、日本語版の解説(中野善夫)によると、最初の企画はBBCのテレビドラマで、脚本はニール・ゲイマン。しかし彼はその出来に満足せず、その後自作を改めて小説として出版したのが本作なんだそうです。
その解説にゲイマンの言葉として「少年が大人になる話だ」と出て来ます。
確かに主人公リチャードは、キャリア志向で美人のフィアンセの見繕った一張羅を着せられ言いなりになっていた、かわいい見栄えのいい男から、地下世界でのタフな経験を経て、欲しいものは何なのかをフィアンセではなく自分で選ぶ男へと成長します。
でもそれが、地上ロンドンの価値観で見ればまったく逆の話。リチャードはスコットランドの田舎から出て来てロンドンの証券会社で働き、美しいフィアンセは大英博物館で上司の報道王(マードックより汚いと描写されている)の天使コレクションを企画、レセプションにはケイト・モスも来るという成功者。フラットはFlat Four, Newton Mansions, Little Camden Streetとあり、マンションとあるのでなかなかのフラットに一人暮らしの地位だったんです。
本では、地下から戻って来た時には、オフィスに個室が持てるポジションに出世し、フィアンセも前よりやさしくなってるけど彼女ではなく新人のブロンドの女子社員にもアプローチされ、フラットもより高級な場所に住めるようになっていました。でもリチャードはそこに価値を見いだせなくなっていて、自分でドアを作って地下世界に戻ってしまうんです。
これは、大人になるのと同時に、お金と住み心地のいい家があって、家庭を持って、という一般の「成功した大人」を否定することではないでしょうか?そこにニール・ゲイマンの意地を感じます。自分の意思で道を選び、既成の価値に惑わされるな、という。これ、簡単そうでなかなかできませんよね?つい、そこそこ生活できるなら、つまらない仕事も我慢して、さー家でDVD見て現実逃避だ!となりがちですもん。
さて、この心を刺激する世界に案内してくれた、天使ベネリントン!
本では人称は「It」です。天使に性はないですもんね。美しい堕ちた天使。
この存在は何なんだろう?
もうひとつ本の解説にニールの言葉があります。「<変異>の物語」である、と。
最初この言葉は、少年から大人への変異かと思ったんですが、と同時に、
天使から悪魔への変異。
これはパワーと美の象徴だったフィアンセがそうじゃなくなる、
ストランドでの個人オフィスもペントハウスのフラットもいらなくなる、
というこの物語すべての変異の象徴だったのか。
ベネリントン(複数)の歌がありました。輪唱になってます。いいな複数。
最後に小さな疑問:
地下世界から、もとの世界のロンドンに戻る途中でリチャードは、3000年前のロンドンでドアに会う。そこへ行く時、電車を降りたのが、セント・パンクラスに似た駅でした。今ではユーロスターの発着駅として、大陸への玄関として生まれ変わったその駅の裏の方は、旅行客は決して行かない、都心なのにもの佗しい工場跡のような地域で異次元へのドアがいかにもありそうな所だった。ネバーウェアが書かれた1990年代にももっと寂しかったんだろうか。私が住んでいた2000年代、ドラッグ中毒者が一掃されたばかりと聞いたけれど。
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ネバーウェア後、Banksy/バンクシーのネズミを見てももう嫌じゃなくなった。
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Neverwhereラジオ放送は最終回を終えましたが、まだBBCサイトで聞けますね。
ベネリントン(天使イズリントンbyベネディクト)の怪演にも驚かされ、以後、ルシファーとガブリエルの名を聞いたらイズリントンの友達として思い出してしまうんでしょう。でもイズリントンには「idiot」「 bloody」呼ばわりされてるから仲良しではなかったんでしょうね。
さてベネリントンのおかげで、またいい作品に出会えました。ドラマにも本にも。
ドラマではスコッツマン・マカヴォイ君のたよりない魅力爆発でしたし、
監督・音響のダーク・マッグスがドラマの前後に色々語ってくれて
「この仕事のおかげで11月から休みもとれなかった程忙しかった」と
彼の作品に対する愛を知り、私のドラマへの親近感も湧きました。
さらに今回のドラマには原作本のようなものもあり、それも作品理解を助けてくれました。厳密には原作ではなく、日本語版の解説(中野善夫)によると、最初の企画はBBCのテレビドラマで、脚本はニール・ゲイマン。しかし彼はその出来に満足せず、その後自作を改めて小説として出版したのが本作なんだそうです。
その解説にゲイマンの言葉として「少年が大人になる話だ」と出て来ます。
確かに主人公リチャードは、キャリア志向で美人のフィアンセの見繕った一張羅を着せられ言いなりになっていた、かわいい見栄えのいい男から、地下世界でのタフな経験を経て、欲しいものは何なのかをフィアンセではなく自分で選ぶ男へと成長します。
でもそれが、地上ロンドンの価値観で見ればまったく逆の話。リチャードはスコットランドの田舎から出て来てロンドンの証券会社で働き、美しいフィアンセは大英博物館で上司の報道王(マードックより汚いと描写されている)の天使コレクションを企画、レセプションにはケイト・モスも来るという成功者。フラットはFlat Four, Newton Mansions, Little Camden Streetとあり、マンションとあるのでなかなかのフラットに一人暮らしの地位だったんです。
本では、地下から戻って来た時には、オフィスに個室が持てるポジションに出世し、フィアンセも前よりやさしくなってるけど彼女ではなく新人のブロンドの女子社員にもアプローチされ、フラットもより高級な場所に住めるようになっていました。でもリチャードはそこに価値を見いだせなくなっていて、自分でドアを作って地下世界に戻ってしまうんです。
これは、大人になるのと同時に、お金と住み心地のいい家があって、家庭を持って、という一般の「成功した大人」を否定することではないでしょうか?そこにニール・ゲイマンの意地を感じます。自分の意思で道を選び、既成の価値に惑わされるな、という。これ、簡単そうでなかなかできませんよね?つい、そこそこ生活できるなら、つまらない仕事も我慢して、さー家でDVD見て現実逃避だ!となりがちですもん。
さて、この心を刺激する世界に案内してくれた、天使ベネリントン!
本では人称は「It」です。天使に性はないですもんね。美しい堕ちた天使。
この存在は何なんだろう?
もうひとつ本の解説にニールの言葉があります。「<変異>の物語」である、と。
最初この言葉は、少年から大人への変異かと思ったんですが、と同時に、
天使から悪魔への変異。
これはパワーと美の象徴だったフィアンセがそうじゃなくなる、
ストランドでの個人オフィスもペントハウスのフラットもいらなくなる、
というこの物語すべての変異の象徴だったのか。
ベネリントン(複数)の歌がありました。輪唱になってます。いいな複数。
最後に小さな疑問:
地下世界から、もとの世界のロンドンに戻る途中でリチャードは、3000年前のロンドンでドアに会う。そこへ行く時、電車を降りたのが、セント・パンクラスに似た駅でした。今ではユーロスターの発着駅として、大陸への玄関として生まれ変わったその駅の裏の方は、旅行客は決して行かない、都心なのにもの佗しい工場跡のような地域で異次元へのドアがいかにもありそうな所だった。ネバーウェアが書かれた1990年代にももっと寂しかったんだろうか。私が住んでいた2000年代、ドラッグ中毒者が一掃されたばかりと聞いたけれど。
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ネバーウェア後、Banksy/バンクシーのネズミを見てももう嫌じゃなくなった。