Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

おいでフレック、ぼくのところに

2015-05-02 18:26:00 | イギリス
娘が紙のリサイクルとして捨てた中にハードカバーの本がありました。「きれいで一度も読んでないのに捨てた?!」と取り上げたら、かわいい犬の表紙。



原題「One Dog and His Boy」を見て、「あ、これ、イギリスの本だな」と思いました。同じく思った方は、イギリスのTV番組「One Man and His Dog」をご存知ですね? (*その番組は牧羊犬と飼い主のコンテストという人気長寿番組でDVDにもなっています)

私の母、つまり娘にとっては祖母からのプレゼントで、リサイクルペーパーとして捨てたなんて哀しすぎて母と本に申し訳なさすぎます。しかし娘は文学にまったく興味がないのです(涙)。せめて私だけでも読もう、と読みました。

お話は、10歳になる男の子ハルが「誕生日にはどうしても犬がほしい」と毎年両親にたのんでいる、ということから始まります。

実はうちの子も常々「犬を飼ってよ」と私を苦しめているので、なんだ、彼女好きそうな内容じゃないの、と読み進めました。

ハルの父親は会社の重役で、いつも世界中を飛び回り、家にいてもイヤホンで世界中と取引の連絡をとっているので子供のことは妻に任せている感じ。母親は、買物が大好きで、洋服はもちろん、インテリアも流行に敏感に高級品や特注品で揃え、家も買い替えようかと考えています。息子ハルにはハムリーズ(ロンドンの玩具専門店)やハロッズ(同じく高級百貨店)のギフト担当者に選ばせたプレゼントセットを注文して、「その年頃の男の子が欲しがるもの」は何でも買い与えてくれます。

・・・あれ?なんかうちの子が共感できない方に話が違って来たな・・・うちと偉い違い。

ハルの母は、犬が高価なカーペットや家具を汚したり傷つけたりすることが耐えられません。

私には対策として「ダウントン・アビー」を見せて「お金持ちの家には犬がいなくてはならない」と思わせるのはどうかと思いました。

・・・いやいや、私は子供に共感するのではなく、母親として子供が犬を欲しがっても飼わないのは、すでに家の中も外も子供とその父親によってゴミ箱状態だと言うのに、これ以上収集がつかなくなったら私が発狂するからです。私だって基本、犬は好きです。一人暮らしになって家がコントロール可能になったら飼いたいです。

私の事情はこのくらいにし、物語は、「子供はすぐにあきるもの」とふんだ両親は、レンタルペットを誕生日に手配し、週末明けにハルが学校から帰って来たら犬が返されていたので、彼はだまされたことに気づき、犬をペット屋から盗んで家出する・・・というところから冒険が始まります。

ハルは父方の祖父母の家を目指して旅をします。祖父母は貧乏(でも漁船と家は所有してる)だけどハルのことを「犬を飼うべきだ」とよくわかってくれます。彼らの息子つまりハルの父は、奨学金を得てお金持ちの子の寄宿学校に行って以来、貧乏な家を嫌い、お金をもうけに南へ働きに行ってしまったのです。

うん、きっといい時代だったからですね。今ではお金のない人がお金のかかる学校へ行く道はどんどん狭くなっているそうですから。私は実はハルの母がどういう家の出身なのかも気になりました。本には出て来ませんが。

旅にはフレックと同じケージに入れられていたほかの犬4匹も同行することになり、彼らが旅の途中で見せるそれぞれの人生(犬生?)がまたこの本の私の好きな部分です。著者の思想を感じるところです。

お金持ちのハルの話だけど、貧乏なイギリス人一家や、インドネシアからペットのようにイギリス人夫妻に養女にもらわれてきて「英語を話さない」と孤児院に入れられた女の子、訛りのあるギークな若者など現代のロンドンらしく多様な人が登場します。私はそのギークくんが気に入っていて名前もスプロケットなんてすっとぼけているとおり、役どころは笑いをとるマヌケでちっともかっこよくはないのですが、もし映画になったら若いころのウィショーくんにやって欲しかったと密かに思いました。

あとインド人のキャラも出て来て、何かとうるさいハルの母に比べ、そのお金持ちインド人は仏教徒なのでロールスロイスの白いレザーシートに犬が座っても、釈迦は動物も人間と同じく大切にしているのでかまわない、というくだりがあります。まあ、イギリスの子供の本だから?インドは仏教発祥の地だけど現在の国はヒンズー教ですよね?日本にもイスラム教徒の方もいるように、ちょっと小数派のインド人だったのかしら。

私はこんな感じでちょっと大人の視点をはずせないまま本を読み終わりました。

うちの娘だったら、犬も欲しいけど、ありとあらゆる物を欲しがっている(大きい家でさえ!)ので、ハルをすごくうらやましがって、この本の趣旨である「お金よりも大切なもの」を理解できないかなあ。