Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

「追憶と、踊りながら」感想

2015-05-23 16:23:00 | ベン・ウィショー
映画館の先着プレゼントにこちらのファイルいただきました


今日から劇場公開の「追憶と、踊りながら」、さっそく見て来ました。
英語版DVD「Lilting」を見た感想は → こちら と こちら2

英語版DVDを見た時と、劇場版を見た感想の違いは、日本語字幕のおかげで登場人物の感情がより強く理解できたと思ったことです。

特にこの作品は半分は中国語なので、そこは英語を読むという私にとっては二重苦だったわけです!

言葉とは不思議なもので、(それがこの映画のおもしろさを作ってもいるのですが)母語だったら何も考えなくてもわかるけど、大人になってから習った外国語の場合、左脳をフル回転して理解しているので、感情を理解する右脳をも同時に働かせるのは労がいるのだと思います。

同じ英語でも耳から聞いて理解する場合は、言い方やスピード、表情と同時なので感情もわかりやすいのですが、なぜか字幕だと文字通りフィルターが間にあるようにダイレクトに感情が伝わってこないのです。(ロスト・イン・トランスレーション~♪)

で!

日本語字幕で見たら、リチャードがカイの死後老人ホームに尋ねて来る前に、カイの母ジュンは、息子とリチャードの関係を知っていただろうと思いました。

だからこその嫉妬でリチャードのことを嫌っていたのではないのでしょうか。でなければ、ジュンがリチャードを嫌う理由が特に何もないではないですか。

それなのに、カイはお母さんにカミングアウトしようとして苦しんで、そのための作戦でディナーを計画して、その途中で交通事故にあって死んでしまうなんて、辛い。

誰が悪いから事故にあったというわけではないけれど、リチャードにとってはカイの苦しみはお母さんの存在が原因で、だからといって彼女を憎むこともしないリチャードの気持ちが切なく、そして感情的にならない彼の理性は、強い。

このリチャードの知性と心の強さがどうすごいかというと、中華料理が得意でベーコンいためるのに菜箸を使うことから推測して、東洋文化を理解しようとし、まるごと受け入れられる広さなんです。

ジュンが息子にたよるのは、異国の地で言葉による現実的な助けがいること以外にも、中国系親子の絆の強さも、日本と同じかそれ以上だからだと思うんですね。だからこそカイは親をホームに入れたことに罪悪感をもってしまうのです。

老人の一人暮らしかホーム暮らしが当たり前のイギリスにはそういう感情はないです。親の面倒を見られなくて苦しむカイの気持ちは、普通のイギリス人にとってはわかりません。いつまでも英語を覚えないで、いい年の息子を一緒に住まないと言って責めるなんて変なバアさんと思うイギリス人多いでしょう。(でも自分のことを大切にしないと文句言うイギリス人の老婆はいる。姫育ちだからな。)


ところで、箸使いのアップはなかったあたり、実はウィショーくんはあんまりじょうずじゃないのか・・・と疑ってみました。リアリズムの映画じゃなくてよかったね!(←決めてる)