2013年ブリストルでの舞台を収録した映画を見ました。改装後の恵比寿ガーデンシネマよかったです。
ボーン版のあらすじ
オーロラ姫が誕生パーティーにて妖精カラボスから「成人した時にバラの刺が刺さって死ぬ」という呪いをかけられ、それをリラの精が「100年の間眠りにつくが愛する人のキスで目覚める」と呪いを軽減するところは原作と同じです。
違うのは、カラボスは追放されて死に、遺児カラドッグが王女と結婚しようとせまること、それから王女にキスをするのが王子ではなく狩猟番なのです。しかも彼は100年後も王女に会えるように永遠の命をもらえるのです。
リラの精も古典バレエでは女性ですが、ここでは伯爵です。でもボーンの世界ではその程度のジェンダー変換では驚かない(笑)。でもそれだけじゃなく、妖精達はヴァンパイアなのです。
感想
いやあ、期待以上に良かったです!!
見た後にチラシを見返したら「ゴシック・ロマンス」とサブタイトルがついてるのですが、まったくその通り、「クリムゾン・ピーク」で高まってる気分が宇宙にまで行ってしまいそうでした。
舞台セットも衣装もゴシックで、時代が1890年~1911年~現代と変わり、つまりヴィクトリアン~ジョージアン~現代と人と風景が変わります。現代とは言え、呪いの館そのものの古いお屋敷が舞台で、しかもカラドッグとその仲間は秘密クラブのコスプレパーティーのように赤と黒で統一された衣装、現代的なのは狩猟番が妖精となったというのにジーンズにパーカといういわゆる平民の服装です。でも妖精なので小さな羽がついているのがかわいい。
ヴィジュアル的に素晴らしいのは、全4幕のうち1、3&4はカラスの羽飛び散る(カラボスはカラスの羽をつけた妖精)暗~いゴスなのだけど、1911年の2幕だけ、姫の成人パーティーに集う人達みな真っ白の衣装で「ベニスに死す」の世界+バレエ・リュスのテニスのバレエ「遊戯」の世界で、そのコントラストでまったく飽きません。
それとボーン・オリジナルのキャラクター、カラドッグはすごくよかった。なぜなら、古典バレエでも笑いをとる役のカラボスは女性の妖精にもかかわらず男性ダンサーによって演じられるから。ボーン版では母カラボスと息子カラドッグをひとりのダンサーが1人二役で演じていて、その存在感が呪いを体現していたし、ちょっと退屈になりそうなお伽噺の単純な話をエロチックな仄めかしでいっぱいにしていました。
カラドッグが黒いエロスの象徴だとしたら、オーロラ姫と相思相愛の狩猟番はまるで背が伸びたホビットみたいに平和でのんびり屋でした。
実はそこが私の1番の疑問でもありました。なぜ王子じゃなくて使用人なの?
・・・その答えが浮かばないので、ちょっと調べてみたら、マシュー・ボーンが「オーロラ姫は、子供に恵まれない国王夫妻の実子ではなく、実は健康な平民の子を養女にしたのではないか?」と仮定していたことがわかりました。ですので、このオーロラ姫は深窓の令嬢ではなく元気なお転婆娘なんですね。と言うことは、平民である狩猟番との恋も身分違いではないし、もしこれが王子だったらシンデレラになってしまう。そしてこの設定、マシュー・ボーン本人も労働者階級の人だってことと関係ないでしょうか。
マシュー・ボーンは「白鳥の湖」と「くるみ割り人形」を舞台で見たので、映画版だけれど「眠りの森の美女」でチャイコフスキー3大バレエ制覇になります!ってたまたまそうなりました(笑)。
でも実はその3作品しか見ていないので、他のもこれは見なくては!