フィリップ・プルマンは「His Dark Materials/ライラと黄金の羅針盤」の原作者として有名な児童作家です。「ダーク・マテリアルズ」として最近ドラマ化されてライラのおじさん役をジェイムズ・マカボイがやっています。のでイギリスでは現在でも定番人気のシリーズです。
最初に、「モース」シリーズで好きなオックスフォードの街が舞台で、また主役のライラが「ENDEAVOUR」トゥルーラヴ役のダコタ・ブルー・リチャーズだったのにつられ、2007年の映画版「ライラの冒険/黄金の羅針盤」を観ました。でもオックスフォードのあの中世の屋根の上をライラがピョンピョン走り回ること以外、ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグなどベテラン人気俳優が出てる割に印象に残りませんでした。
しかもフィリップ・プルマンはコリン・モーガンが子供のために読み聞かせしたグリム童話も手がけていたし、あれはなかなかよかった、代表作の面白さがわからないのは私の教養が足りないせいかも・・・
そこでこの前日譚「ブック・オブ・ダスト」ならどうだろう、しかも河合祥一郎先生のトークライブもついてる日が調度行ける日だったので、それなら親切解説で良さがわかるかも!と期待して観に行きました。
ところが、これがやっぱり印象に残らないストーリーだったのです!
最もトークショーは、今回河合先生のゲストは部隊美術家の松生紘子さんで、彼女はイギリスで舞台美術を学び働いた経験もある人なので、今回の舞台の話題のプロジェクション・マッピングがいかに素晴らしいかはよく理解できたのですが、ただでさえその舞台装置には心を奪われて肝心のストーリーの方はどうでも良くなっていたのはそのままとなりました。
雑なあらすじは、12歳の少年と16歳の少女が、まだ赤ちゃんのライラを実の母親から守って逃亡、その旅で気の合わなかったふたりに友情が通う、と言うもの。
これ、実の母親が赤ちゃんの敵、と言うのは変な話なのでその辺が掘り下げられてたら私も興味を持ったかもしれないのですが、そこは最初から不倫の元カレの子供で思い入れはなく、ただその子が世界征服のキーになる予言があるので追っていると。
そのかわいそうな赤ちゃんを守るのが12歳の子供だけど大人が演じていて、俳優さんがジェイムズ・コーデンの弟みたいな体型で憎めないし子供特有のアクセントでうまい、けどそれ以上の魅力は感じず。16歳の少女の俳優さんもまた同じで悪くはないけど、引かれるものがない、= 主役ふたりの人間関係が見もののはずがそのふたりに興味がないので喧嘩しようが仲良くなろうがどうでもいいよ。。。となってしまいました。
これ、12歳の少年の目線か、16歳の少女の目線かどっちにも中心がないのも変。パブで働く16歳の少女には、当然言い寄ってくる酔っ払い男も多い。赤ちゃんの親と言っても通じるし。でも12歳の少年の方は大人の世界で働いてるけど若者文化が生まれる前の時代のような子どもらしい子どもで、最初は大嫌いだった少女と心を通わせた時に思わずキスしたくなって顔を近づけるのに、少女からピシャリと「私たちにはそういうのナシ!」と言われて、「ハイ、わかりました」と納得した様子。それって私がやらしいのか納得がいきませんでしたよ。。。
まあ深く考えず、舞台での生き生きとした「水」の表現と、人間の魂が可視化された動物の人形を楽しむには価値があります。それに上演されたブリッジ・シアターは、コリン・モーガンとロジャー・アラムの「A Number」を見て狭くて舞台が客席に張り出していていいなあと思った所。小さめのステージでもこんなにスケールの大きい表現ができるなら、演劇を総合芸術として考えたときに可能性を広げた作品と言えるでしょう。
「ブック・オブ・ダスト」、私も観ましたが、私もしましまさん同様、ストーリーにはほとんど心惹かれず、ただひたすらプロジェクションマッピング演出の可能性にあんぐり感心しているうちに終わりました。ま、それだけでも十分値打ちはあるとは思いましたが。
>不倫の元カレの子供で思い入れはなく、ただその子が世界征服のキーになる予言があるので追っている
私は「予言の子を奪い合う」という設定だけで正直うんざりしてしまいました。『ダーク・マテリアルズ』は前に一度読んだことがあり、その時も全く相容れなかったので、今回の舞台についてもストーリーは私の趣味に合わないだろうと最初からわかっていたのがせめてもの救いでした。
っていうか、
>コリン・モーガンとロジャー・アラムの「A Number」
なんでこっちを録画して上映してくれないのよおおおお!!!