東京の家の向かいに住まわれているご夫婦は、よく我が家と付き合ってくださっている。
主婦のいない家に次々と大学生が住むようになり、まして仕事を持つ姉が病気持ちだ。
事あるごとに、おかずを差し入れてくださっている。
難しい継母とのつきあいのなかで、姉はご夫婦によく相談に乗っていただいているようだ。
ご主人に前立腺癌が見つかったのは、姉の時と前後してだった。
手術はせずまず薬物治療で、それから化学療法に移り、容体を悪くしないようにここまで来ていた。
数値は悪くないと言ってほっとしていた矢先の今年の正月明けに検査に出かけ、そのまま入院が続いていた。
「緩和ケア施設に移ることをお勧めする」
今かかっているのは国立がん研究センターなのだが、治療方法がないということらしい・・・
今日、いったん退院されてきた。
昨年夏ごろだったか一度 「飲みにいらっしゃい」と誘われて、夕方のひと時を楽しく過ごさせてもらったことがある。
次々と気のきいた奥様の手料理が並べられて、おいしいお酒と尽きない話題と……穏やかで楽しい時間だった。
いや、外科手術や化学療法ばかりが、この病気の治療方法ではないはず。
痛くない、辛くない、しんどくない、 そして笑って過ごす 笑いがとてもいいはずだ。
ああ、ああ、それでも突きつけられたものの大きさは計り知れない・・・