つれづれおもふ

思えば遠くに来たもんだ~ぼつぼつ語る日々の出来事

風に舞いあがるビニールシート・・・森 絵都

2012年04月16日 | 本・・・

面白かった。

童話 に近い印象はぬぐえないが、読みごたえのある中編が並んでいた。

「物語」というのは織物に似ていると思う。

縦糸と横糸が折り込まれて、それが綾なす布地の美しさ、時には素晴らしい模様が現れる。

だが、本当の逸品というのはその「綾なす」という部分を感じさせないのだろうと思う。

この「風に舞い上がる・・・」はその縦糸と横糸が意識されてしまう感があるが、

それが若い書き手だということで、これからの可能性を感じるものとなっている。

 

物語はどれも、読み手である私にとっても、登場人物にとっても少し違う道を進ん行く。

どうしてなんだろうと悩み、いくらか耐えて進むと、そこにいくばくかの明るさが待っている。

なるようになる というか、これでいいんだ というか、

人の生きようってこういうもんだよなという共感が残る。

どれも印象に残るが、私は表題作よりも「守護神」が好きだ。

でてくるのが大学生で、我が子たちと重ねる部分があるのかもしれない。

単位不足の恐れから、4年で大学卒業が危ぶまれる主人公“裕介”が、レポートの代筆の達人“ニシユキ”に代筆を依頼するところから物語は始まる。

いまどきの、遊びに夢中で努力の足りない大学生というイメージの裕介。

それがニシユキとの会話の中で、彼の本当のありようや、裕介自身も気がついていなかった姿が浮き彫りにされていく。

さあ、ニシユキは代筆を引き受けるのか・・・読んでいない人のために、ここは黙っていましょう。

 

 

コメント (2)
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