HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

値入れの改善と荒利益の確保。

2009-09-03 19:34:13 | Weblog
 自主編集売場を作る時、必要なことは値入れ率と荒利益率をどれくらいに設定するかである。
 多店舗化していない百貨店の場合、自主編集売場の管理コストは、商品当たり20%ほどは
かかるだろう。それに商品発注のリスクと売れ残りロスを同20%は見ないと利益は残らない。
これにじっとしてても場所貸しで入ってきた歩合を同20%乗せるとなれば、
値入れが60%以上確保できなければ、場所貸しを上回る儲けにはならない。
 だから、アパレルとタイアップするような政策では利益なんか出ないということだ。
小回りが利く中小のOEMメーカーか、工場直発注しか採算は合わないのである。
 もっとも、百貨店オリジナルだけでは品揃えのバラエティさやコーディネートの楽しさを欠くので、
利益の薄い仕入れ商品も必要になり、その分のリスクやロスをカバーする利益も出さなければならない。
それをメーカー任せでは荒利益が確保できず意味がない。だから、自主編集売場は百貨店が自ら
開発しないと成立しないのである。
 結局、百貨店の自主編集売場とは、派遣社員の人件費や売り残り在庫のリスクなど中間コストを
カットする分、オリジナル開発+αに投資できるということ。ベネトンやザラのような欧米型SPA、
またはユナイテッド・アローズやビームスのようなセレクトショップに近いコンセプト型ショップと
いうことになるだろう。
 百貨店がファッションというカテゴリーで、このようなビジネスモデルを確立すれば、ブランドに
左右されない独自性をもてるし、荒利益率は格段に改善されるはずである。各売場が有機的に結びつき、
販売スタッフの配置など効率化が図られれば、運営コストも下がっていく。
 これなら都心のみならず、郊外SCへの各店舗出店も可能になり、百貨店の新たな市場開拓に展望が開ける。
あの集客力があるのだから、売上げ回復なんか簡単である。
 当然、高い付加価値創造には、企業ブランドや客層が似ている百貨店間の提携も必要である。
(実際にはそうでないところで、経営統合が進んでいるが)
自主編集売場の構築と百貨店間の提携は、現状の百貨店向けアパレルとの関係も根本的に変える。
百貨店は自主編集売場を増やしていけば、百貨店系アパレルは出店先を失ってSPA化し、
独自で店舗展開せざるを得ない。それが長年にわたった蜜月関係やもたれあい構造に終止符を打つのである。
 百貨店が手をつけるべきは、販売チャンネルの拡大ではなく、商品と売場の改革なのである。

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手をつけるは商品と売場の改革。

2009-09-03 19:02:48 | Weblog
 そもそも百貨店のファッションが何で売れないのか。それは商品自体に魅力がないからである。
価格、デザイン、素材感、スタイリング、そして価値。外資系SPA、国内セレクトショップなど
ファッションビルの方がいい商品がいくらもあるからだ。
だから、販売不振のファッションで改革すべきことは、高い付加価値の確立。つまり、かつて
中途半端で終わってしまった自主編集売場を本格的に自社で開発することに尽きる。
 自主編集売場を広げることは、決して難しいことではない。それができれば、ブランドの
インショップと対峙できるくらいの付加価値を創造できるのである。
 まず、自店でブランドメーカーが行っているような企画、仕様開発、生産ラインと素材の確保まで
踏み込む。それによって価格に対する価値はもちろん、商品リスクまでカバーできる値入れを確保できる。
これまでのように納入掛け率の高い百貨店系アパレルと取引するのでは無理かもしれないが、
中小のアパレルにも目を向ければやり方はいくらもある。1社の規模で無理と思うなら、
統合した百貨店のスケールメリットをいかせばいい。
 自社企画とはデザイナー等の企画スタッフを抱えることではない。中小アパレルで小回りが利く
OEM(相手先ブランド生産)メーカーや細かな仕様まで対応してくれる工場を利用すれば、
百貨店のバイヤーレベルでも商品開発は容易である。
 ヤングに人気のあるセシルマクビーは、販売スタッフが絵型を描き、出来上がったサンプルで
細かな修正等の試行錯誤を繰り返しながら、求める仕様に近づけている。
 商品開発が面倒というバイヤーならいざ知らず、若手スタッフならみなやってみたい仕事のはず。
こんな時にこそ経営トップが「任せるから、やってみろ」と、トップダウンの決断を下してもいいのでは。
若手社員が集まって、センスがいいのか悪いのかよくわからない地元のスタイリストを使い、
2週間交代で売場のコーディネートするような時間と金があるなら、商品改革の方に手をつけるのが先だ。
 もう少し、具体的に説明すると、課題は百貨店の商品の価値である。例えば、商品価格を
1万円とした場合、通常、その原価率は百貨店が20%、ユニクロが30~40%と言われている。
つまり、同じ価格ならユニクロの方が価値が高いということになる。これをバイヤーは認識すべきだ。
 なぜ、こうなるかはユニクロなどのSPAやユナイテッド・アローズなどのセレクトショップが
ファッションビルに出店する時の家賃と、百貨店の納入掛け率との差が影響している。
価値を上げるには原価率を見なさなければならないのだが、それが難しいからこそ、自主編集
売場づくりが重要なのである。
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売上げ回復とネット販売。

2009-09-03 18:55:46 | Weblog
 不況と顧客離れが相まって販売不振に歯止めがかからない百貨店。
それから1日も早く脱却しようと岩田屋が9月2日、新戦略を打ち出した。トレンドの
ファッションを集めたインターネットショッピングサイト「スタイルエディション」がそれだ。
これまでギフトや食品のサイトはあったが、ネットショッピングが急速に拡大?していることも
あって、岩田屋もようやく重い腰をあげたようだ。
 というより、売上げ回復のためならもう四の五の言ってられない。少しでもビジネスの可能性が
あるなら何でもやるということだ。ただ、「溺れる物は藁をも掴む」ということわざがあるが、
ファッションビジネスで考えると、それは「遅きに失した」と言わざるを得ない。
 なぜか。ネットショッピングはすでに大手が市場を席巻し、後発の業者との激しいシェア争いを
繰り広げている。市場規模は数兆円あるものの、各社とも売上げは頭打ちの状態になっている。
特にファッション系ショッピングのコンバージョンレート(消費者がアクセスした数に対して実際に
購入した比率)は、10%程度と限界値にきていると言われる。
 ニッセンのような通販企業も、かつてのような倍々で伸びる時代ではないと言い始めているし、
ヤフーは今年に入り出店数の伸びが減速していることもあって対策に追われている。
つまり、消費者はネットショッピングというチャンネルを特別ものとは思わなくなってきたのだ。
ネットで商品を確認して、実際は売場で試着して商品を買う、そういう購買行動に移ってきている。
だから、後発の岩田屋がネットショッピングに入ったところでどれほどの効果があるのか。
投資以上の売上げが得られることは正直難しいと言わざる得ない。
 そもそも、岩田屋を始めとする百貨店のファッションがなぜ売上げ不振に陥ったのか。
それを担当者はわかっているのだろうか。バブル崩壊後、百貨店は高級品が売れなくなったことで、
MD(商品政策)の見直しを打ち出した。しかし、結果的にMDは売れ筋偏重になり、
他店との商品の同質化を招いてしまった。そこで、今度は「自主編集売場」の構築を
声高に叫び始めた。自らリスクを抱えて、商品を仕入れ販売するという戦略である。
 しかし、百貨店は販売員の8割は、メーカーなどの取引先からの派遣社員で、品揃えや価格の決定権、
在庫の最終処分のリスクは取引先が負う消化仕入れ構造でずっとやってきた。それが長い商慣習だった。
 実際に作られた自主編集売場はほんの一部で、買い取り比率は売上げで1%程度。
軌道に乗せられところも伊勢丹のような人材が豊富なところに限られた。岩田屋のように買い取り、
自主販売に踏み出したはいいが、単なる買い取りではリスクに見合う高い値入れが確保できず、
逆に人件費率のアップで荒利益が下がるという惨憺たる結果を招いたのは、周知の通りである。
販売効率も収益性も消化仕入れの水準に達しないため、結局、自主編集売場も拡大されないまま、
今日まで来てしまったということである。
 だからといって、すでに踊り場に来たネットショッピングではないだろう。百貨店のファッションが
売れない原因は何か。それを突き詰め、商品改革に手を付けるのが先決だ。これから先は話が
長くなるので、後段で述べることにする…続き。

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