このほど、ユニクロと繊維メーカーの東レは、提携関係を進化させると発表した。これまでにも両社は、
01年秋冬に大ヒットしたフリースをはじめ、汗がべたつかないドライ、保温下着のヒートテックと数々の
ヒット素材を開発し、提携力を見せつけてきた。
今回は、「素材開発から製品供給まで一体化を進めて、さらに競争力を高める」ということだが、ユニ
クロが標榜する「ファッションベーシック」と東レとのコラボレーション型SPA強化によって、商品開発
にさらに磨きをかけ、時代やシーズンごとのトレンドを過不足なく、盛り込んでいこうというものだ。
ただ、見方を変えれば、提携強化は最近のユニクロがフリース、ヒートテックに続く、ヒットアイテム
に恵まれていない面もある。理由は世界の大都市を中心にメガストア、いわゆる大型旗艦店を出店してい
るため、商品拡充がうまく行っていないのだ。売場を埋めるために品番を増やし過ぎ、中途半端な商品が
数多く生まれたり、MD計画が煩雑でコントロールが難しくなり、本来力を入れるべきところに入らず、
力が分散してしまっている。
もともと、ユニクロは商品構成に奥行きがないから、いろんな商品をちまちま売ったところで、販売効
率はあがらない。今年3~6月期の既存店売上高において、前年同期比7.4%減という結果がこうしたMD
戦略の脆弱さを如実に表している。これは柳井正社長も認めるところだ。
ただ、こうした問題はユニクロがSPAである限り、永遠に背負い続けなければならない重い十字架でも
ある。SPAといっても、ユニクロは小売業のオリジナル戦略の発展系で、「作った商品を売り減らす」い
たって古典的なスタイルに過ぎない。企画から生産段階の価値創造に軸を置くビジネスモデルで、それは
必ずしも流行や消費者の嗜好の変化とは合わず、柔軟なシステムとはほど遠い。
どうしても長いスパンでのターゲット狙いと、大量ロットのアイテム生産、それに伴うローコスト調達
を行なうプッシュ型で、必然的に消化率や商品回転率は少なくなる。シーズンの大半、同じ商品が並んで
いる売場を見れば、一目瞭然だ。
要するに、これまでも売り逃しや売れ残りによる在庫過多などをずっと繰り返しているのである。背景
には企業規模が大きくなるにつれ、組織は官僚的になって、リスクを取らなくなってしまったことがある
だろう。当然のことながら、ヒット商品を生みたいなら、リスクを取らなければならない。なのに今のユ
ニクロにハイリスク・ハイリターンを目指し思い切った量を積み上げ、売上げ計画の下ブレによる在庫リ
スクを低減できるスタッフがどれだけいるだろうか。
ユニクロのMDは、何万品番にも及ぶアイテムを、いつ、どれだけ製品化し、販売するかという、決定
権をもつ。だが、思うように商品が売れなければ、数十億円単位の売上げが吹っ飛んでしまう。まさに、
ユニクロの屋台骨を支えるだけに、サラリーマンMDにとっては相当のプレッシャーと責任がのしかかる。
柳井社長が現場に復帰したのは、おそらく大株主である自身しか、この責任は取れないと感じからであ
ろう。だとしても、とある雑誌のインタビューで、「マーケティングやマーチャンダイジングを読んで、
品揃えを決めるのは店長だから、それらを失敗したとしても売上げと利益を取りにいかなければならない」
と公言しているところをみると、自身も「先読みの難しさ」「リスクを張る重圧」は感じているのかもし
れない。
それゆえ東レとの提携強化には、ハイリスク、ハイリターンのアイテムづくりより、確実性の高い素材
トレンドに力を入れて、売上げの安定的部分を確保しようという狙いが見受けられる。
柳井社長は2006年に10年「グループ売上げ1兆円」を公言していたが、それを達成できないまま、昨
年9月には2020年に売上高5兆円を発表した。これはユニクロと関連ブランド、さらにM&Aを加えたも
のだが、手法としては06年の構想発表時と何ら変わらない。
ただ、東レと提携強化するとは言え、現状の店舗&MD戦略でそれが可能かというと、やはり厳しいだ
ろう。なぜなら、先に書いたようにユニクロのビジネスモデルが、「作って売り減らす」古典的なものだ
からだ。
トレンド商品を多品番企画することは、ユニクロのビジネスとは相容れない。ただ、SPAの世界第一に
躍り出たスペインの「インディテックス」(ザラ)は、短いスパンでのターゲット狙いと小ロット多品種
投入というプル型で、高い消化率と高い回転率を実践してきた。言い換えれば、最新モードやトレンドア
イテムを売りに、それらを中低価格で提供できるビジネスモデルだからこそ、世界トップになり得たので
ある。
だとすれば、ユニクロが作って売り減らすビジネスモデルと、素材頼みのトレンド戦略で世界トップク
ラス入りが可能かどうか。自ずと答えが見えてくるような気がする。
01年秋冬に大ヒットしたフリースをはじめ、汗がべたつかないドライ、保温下着のヒートテックと数々の
ヒット素材を開発し、提携力を見せつけてきた。
今回は、「素材開発から製品供給まで一体化を進めて、さらに競争力を高める」ということだが、ユニ
クロが標榜する「ファッションベーシック」と東レとのコラボレーション型SPA強化によって、商品開発
にさらに磨きをかけ、時代やシーズンごとのトレンドを過不足なく、盛り込んでいこうというものだ。
ただ、見方を変えれば、提携強化は最近のユニクロがフリース、ヒートテックに続く、ヒットアイテム
に恵まれていない面もある。理由は世界の大都市を中心にメガストア、いわゆる大型旗艦店を出店してい
るため、商品拡充がうまく行っていないのだ。売場を埋めるために品番を増やし過ぎ、中途半端な商品が
数多く生まれたり、MD計画が煩雑でコントロールが難しくなり、本来力を入れるべきところに入らず、
力が分散してしまっている。
もともと、ユニクロは商品構成に奥行きがないから、いろんな商品をちまちま売ったところで、販売効
率はあがらない。今年3~6月期の既存店売上高において、前年同期比7.4%減という結果がこうしたMD
戦略の脆弱さを如実に表している。これは柳井正社長も認めるところだ。
ただ、こうした問題はユニクロがSPAである限り、永遠に背負い続けなければならない重い十字架でも
ある。SPAといっても、ユニクロは小売業のオリジナル戦略の発展系で、「作った商品を売り減らす」い
たって古典的なスタイルに過ぎない。企画から生産段階の価値創造に軸を置くビジネスモデルで、それは
必ずしも流行や消費者の嗜好の変化とは合わず、柔軟なシステムとはほど遠い。
どうしても長いスパンでのターゲット狙いと、大量ロットのアイテム生産、それに伴うローコスト調達
を行なうプッシュ型で、必然的に消化率や商品回転率は少なくなる。シーズンの大半、同じ商品が並んで
いる売場を見れば、一目瞭然だ。
要するに、これまでも売り逃しや売れ残りによる在庫過多などをずっと繰り返しているのである。背景
には企業規模が大きくなるにつれ、組織は官僚的になって、リスクを取らなくなってしまったことがある
だろう。当然のことながら、ヒット商品を生みたいなら、リスクを取らなければならない。なのに今のユ
ニクロにハイリスク・ハイリターンを目指し思い切った量を積み上げ、売上げ計画の下ブレによる在庫リ
スクを低減できるスタッフがどれだけいるだろうか。
ユニクロのMDは、何万品番にも及ぶアイテムを、いつ、どれだけ製品化し、販売するかという、決定
権をもつ。だが、思うように商品が売れなければ、数十億円単位の売上げが吹っ飛んでしまう。まさに、
ユニクロの屋台骨を支えるだけに、サラリーマンMDにとっては相当のプレッシャーと責任がのしかかる。
柳井社長が現場に復帰したのは、おそらく大株主である自身しか、この責任は取れないと感じからであ
ろう。だとしても、とある雑誌のインタビューで、「マーケティングやマーチャンダイジングを読んで、
品揃えを決めるのは店長だから、それらを失敗したとしても売上げと利益を取りにいかなければならない」
と公言しているところをみると、自身も「先読みの難しさ」「リスクを張る重圧」は感じているのかもし
れない。
それゆえ東レとの提携強化には、ハイリスク、ハイリターンのアイテムづくりより、確実性の高い素材
トレンドに力を入れて、売上げの安定的部分を確保しようという狙いが見受けられる。
柳井社長は2006年に10年「グループ売上げ1兆円」を公言していたが、それを達成できないまま、昨
年9月には2020年に売上高5兆円を発表した。これはユニクロと関連ブランド、さらにM&Aを加えたも
のだが、手法としては06年の構想発表時と何ら変わらない。
ただ、東レと提携強化するとは言え、現状の店舗&MD戦略でそれが可能かというと、やはり厳しいだ
ろう。なぜなら、先に書いたようにユニクロのビジネスモデルが、「作って売り減らす」古典的なものだ
からだ。
トレンド商品を多品番企画することは、ユニクロのビジネスとは相容れない。ただ、SPAの世界第一に
躍り出たスペインの「インディテックス」(ザラ)は、短いスパンでのターゲット狙いと小ロット多品種
投入というプル型で、高い消化率と高い回転率を実践してきた。言い換えれば、最新モードやトレンドア
イテムを売りに、それらを中低価格で提供できるビジネスモデルだからこそ、世界トップになり得たので
ある。
だとすれば、ユニクロが作って売り減らすビジネスモデルと、素材頼みのトレンド戦略で世界トップク
ラス入りが可能かどうか。自ずと答えが見えてくるような気がする。