先日、ファッションライターの南充浩さんが日経ビジネスオンラインで、「若者がファッション専門学校に来ない」とのタイトルで、寄稿されていた。この反響は大きく、筆者にもTwitterやFacebookを通じて関係者からいろんなコメントが寄せられた。
専門技術者を必要とするアニメーションやグラフィックデザインの業界に対しても、かなりの「問題提起」となったようだ。ただ、ことの本質を学校のカリキュラムや講師の資質、少子化による学生減のせいにしても解決しない。業界が優秀な人材を受け入れようと取り組む様々な仕組みにも、課題が少なくないからだ。
今回はその一つとして、「インターンシップ」を取り上げてみたい。日本でもここ数年で急速に浸透してきており、就職のミスマッチや早期離職の防止にも効果的と、期待は高い。一方で、この制度を利用した企業が「接客対応」の体験を希望した学生に対し、アルバイトと同じように清掃係をさせるなど、「名ばかり」なるものも出現。インターンシップは無給が原則であるから、人件費削減に利用する悪質な企業があると、取りざたされている。
先日もこうした名ばかりと思わしきインターンシップに遭遇した。地元の某アパレルメーカーが公共ファッション事業の一環としてこの制度を利用し、「自社ブランドの催事販売」に学校を通じて学生を借り出したのだ。
このメーカーは2年ほど前から、ファッション事業のショーイベントにも自社ブランドを出展し、タレント着用で知名度を上げて来ている。でも、商品そのものは低価格な量販系で、営業スタイルも自社サイトによるネット卸を主販路に位置づけている。
つまり、直営店を展開していないので、イベントプロモーションなしにはブランドロイヤルティのアップも、卸先拡大もできづらいのである。かといって、直営店を出店して「小売り」に進出するには莫大なコストや販売スタッフの育成が必要で、経営基盤が脆弱なアパレルが簡単にできるはずもない。
そこでインターンシップを利用して、まずは催事販売という小売りに踏み込んだようだが、問題はその内容である。場所は博多阪急という百貨店、売場は8階の催事場だった。そこで簡易売場を設け、学生を販売スタッフとして常駐させたのである。
この時期、百貨店はセールに突入し、レギュラー売場での展開が難しいのはわかる。逆にプロパー商品で荒利を取りたいという思惑もあるだろう。制度の仲立ちをした公共ファッション事業の担当者にすれば、地場の百貨店とアパレルと学生を結びつけたと、メンツは立つ。
しかし、百貨店のイメージにそぐわないブランド、お中元ギフトセンターがメーンの催事場、特別な広報も販促もなしでの商品展開等々、接客技術を学ぶという趣旨からすれば、問題は少なくない。おそらく、学生もお客の少なさに手持ち無沙汰で、「勉強にならない」と率直に思ったのではないか。
インターンシップという制度は、その名称やイメージのみが一人歩きし、公共ファッション事業や企業の「いい目的」にされている嫌いを感じる。これではまさに名ばかりで、制度の趣旨から大きく外れていると言わざるを得ない。
問題の本質はさらに奥深い。一部の学校や学生のみが制度の恩恵にあずかれて、他には前出のような実効性を欠くものをあてがわれているようなケースも見受けられる。
某事業でも当初は、それがすべての学校に広報されていなかった。それを良いことに利害関係者が自分がかかわる学校と地元アパレルとの結びつきを濃くする目的で利用するなど、不公正極まりない点があったのだ。
それを他の学校や企業側が問題視し、ようやく公平な制度として実施されるようになったようだが、はたして本当のところはどうか。何せ、利害関係者にとって都合の悪いのことは一切広報しないのだから、疑念は拭えない。
もちろん、インターンシップは受け入れる企業の性格も、十分考慮されなければならない。小売業なら、接客や販売という就業体験は受け入れ易い。アパレルメーカーでも、単純加工や検品、着出荷作業、展示会や営業のサポートなどは任せられるだろう。アニメや漫画のプロダクションでいう「べた塗り」くらいのレベルということだ。(関係各位には少し失礼な言い方だが、業界でよく引き合いに出される表現なので、使わせていただく)
しかし、グラフィックデザイン会社になると、DTPによる作業を技術が不安定な学生には怖くて任させられないし、アパレルでもデザインやパターン、縫製を学生に任せることはありえないと考えるべきだ。学校や学生がこうした企業側の事情を十分に理解した上で、制度を利用しないと企業にかえって負担をかけることになる。
当然、学校や学生のモチベーションは言うまでもない。要は「インターシップに参加した」「制度を利用した」という実績づくりなら、何の意味も無い。「リアルな就業体験がしたい」「専門的な技術を学びたい」という真の目的が重要だからだ。
インターンシップが本当に効果を発揮するには、まず制度内容について細かなルールづくりが必要である。もし、単位認定するのであれば、大学は文科省の許認可が必要になるが、専門学校は学校ごとでフリーパスというのも、おかしな話しである。
また、本当に学校や学生のモチベーションが高いのであれば、受け入れる企業にとっても喜ばしい。しかし、利害関係者が双方の蜜月や青田買い、就職率アップを考えて利用するものなら、制度の公平さを欠く。
インターンシップが学校にも学生にも、また業界にとっても有益な制度であるためには、業界ごとでの詳細なルールづくりや内容決めが必要になると思うのである。
専門技術者を必要とするアニメーションやグラフィックデザインの業界に対しても、かなりの「問題提起」となったようだ。ただ、ことの本質を学校のカリキュラムや講師の資質、少子化による学生減のせいにしても解決しない。業界が優秀な人材を受け入れようと取り組む様々な仕組みにも、課題が少なくないからだ。
今回はその一つとして、「インターンシップ」を取り上げてみたい。日本でもここ数年で急速に浸透してきており、就職のミスマッチや早期離職の防止にも効果的と、期待は高い。一方で、この制度を利用した企業が「接客対応」の体験を希望した学生に対し、アルバイトと同じように清掃係をさせるなど、「名ばかり」なるものも出現。インターンシップは無給が原則であるから、人件費削減に利用する悪質な企業があると、取りざたされている。
先日もこうした名ばかりと思わしきインターンシップに遭遇した。地元の某アパレルメーカーが公共ファッション事業の一環としてこの制度を利用し、「自社ブランドの催事販売」に学校を通じて学生を借り出したのだ。
このメーカーは2年ほど前から、ファッション事業のショーイベントにも自社ブランドを出展し、タレント着用で知名度を上げて来ている。でも、商品そのものは低価格な量販系で、営業スタイルも自社サイトによるネット卸を主販路に位置づけている。
つまり、直営店を展開していないので、イベントプロモーションなしにはブランドロイヤルティのアップも、卸先拡大もできづらいのである。かといって、直営店を出店して「小売り」に進出するには莫大なコストや販売スタッフの育成が必要で、経営基盤が脆弱なアパレルが簡単にできるはずもない。
そこでインターンシップを利用して、まずは催事販売という小売りに踏み込んだようだが、問題はその内容である。場所は博多阪急という百貨店、売場は8階の催事場だった。そこで簡易売場を設け、学生を販売スタッフとして常駐させたのである。
この時期、百貨店はセールに突入し、レギュラー売場での展開が難しいのはわかる。逆にプロパー商品で荒利を取りたいという思惑もあるだろう。制度の仲立ちをした公共ファッション事業の担当者にすれば、地場の百貨店とアパレルと学生を結びつけたと、メンツは立つ。
しかし、百貨店のイメージにそぐわないブランド、お中元ギフトセンターがメーンの催事場、特別な広報も販促もなしでの商品展開等々、接客技術を学ぶという趣旨からすれば、問題は少なくない。おそらく、学生もお客の少なさに手持ち無沙汰で、「勉強にならない」と率直に思ったのではないか。
インターンシップという制度は、その名称やイメージのみが一人歩きし、公共ファッション事業や企業の「いい目的」にされている嫌いを感じる。これではまさに名ばかりで、制度の趣旨から大きく外れていると言わざるを得ない。
問題の本質はさらに奥深い。一部の学校や学生のみが制度の恩恵にあずかれて、他には前出のような実効性を欠くものをあてがわれているようなケースも見受けられる。
某事業でも当初は、それがすべての学校に広報されていなかった。それを良いことに利害関係者が自分がかかわる学校と地元アパレルとの結びつきを濃くする目的で利用するなど、不公正極まりない点があったのだ。
それを他の学校や企業側が問題視し、ようやく公平な制度として実施されるようになったようだが、はたして本当のところはどうか。何せ、利害関係者にとって都合の悪いのことは一切広報しないのだから、疑念は拭えない。
もちろん、インターンシップは受け入れる企業の性格も、十分考慮されなければならない。小売業なら、接客や販売という就業体験は受け入れ易い。アパレルメーカーでも、単純加工や検品、着出荷作業、展示会や営業のサポートなどは任せられるだろう。アニメや漫画のプロダクションでいう「べた塗り」くらいのレベルということだ。(関係各位には少し失礼な言い方だが、業界でよく引き合いに出される表現なので、使わせていただく)
しかし、グラフィックデザイン会社になると、DTPによる作業を技術が不安定な学生には怖くて任させられないし、アパレルでもデザインやパターン、縫製を学生に任せることはありえないと考えるべきだ。学校や学生がこうした企業側の事情を十分に理解した上で、制度を利用しないと企業にかえって負担をかけることになる。
当然、学校や学生のモチベーションは言うまでもない。要は「インターシップに参加した」「制度を利用した」という実績づくりなら、何の意味も無い。「リアルな就業体験がしたい」「専門的な技術を学びたい」という真の目的が重要だからだ。
インターンシップが本当に効果を発揮するには、まず制度内容について細かなルールづくりが必要である。もし、単位認定するのであれば、大学は文科省の許認可が必要になるが、専門学校は学校ごとでフリーパスというのも、おかしな話しである。
また、本当に学校や学生のモチベーションが高いのであれば、受け入れる企業にとっても喜ばしい。しかし、利害関係者が双方の蜜月や青田買い、就職率アップを考えて利用するものなら、制度の公平さを欠く。
インターンシップが学校にも学生にも、また業界にとっても有益な制度であるためには、業界ごとでの詳細なルールづくりや内容決めが必要になると思うのである。