HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

意外にミセスはいけるかもしれない。

2013-10-03 14:01:37 | Weblog
 先日、東京に出張し仕事を終えた後、アパレルの代表とゆっくり話す機会を得た。そこで話題に上がったのが、「最近、ミセスの服はどうよ」だった。ヤング向けの商品は、安もんのタレントタイアップからファストファッションまで市場には吐いて捨てるほど、出回っている。ところが、ミセスで「これはイイ」というブランドや業態が見つからないと、この代表はいうのだ。それで、以下のような話の展開になった。

 ミセス服はどうしても「おばちゃんファッション」と受け取られる嫌いがある。しかし、それはリサーチ能力が乏しい百貨店バイヤーやファッション音痴の三文メディアの認識だろう。ミセスといっても、20代から50代と幅広い。エージで区切ると、体型の問題からパターンが決まってくるため、身幅が広いおばちゃん服のイメージが強くなる。しかし、マインド&エージレスで見れば、企画のリソースは格段に広がるのだ。

 さらに眼の肥えているミセス層は、ヤングのようにブランドやプロモーションでは飛びつかない。素材のクオリティ、サイズ感や着心地、カッティング、手の込んだ装飾など、服を選択する条件は別のベクトルになる。そんな層はマスマーケットにはならないが、全国各地にピンポイントで存在する。だから、業態を開発するのではなく、専門店系アパレルが卸で中小のブティックやセレクトショップ向けに対応していかなければならないのだ。

 市場は百貨店やファッションビル、郊外SCにテナント出店してショップの顔を見せるほどの規模にはないから、一般的には見えないだけなのである。ただ、百貨店のハコはキャリアにしてもミセスにしても、バブルが弾けてから以降、その存在価値を確実に失っている。景気が回復しているとは言っても、肝心な商品は百貨店側の利益確保が優先され、アパレル側の掛け率に値下げ圧力がかかって、価格のわりに質、感度とも良くない。

 ファッションビルや駅ビルは、ヤングやOLがメーンターゲットで、ミセス向けは置いていてもセレクト系のスピンオフ。商品もカジュアル色が強く、ナチュラル系のトーンで編集され、顔写りがよくない。郊外SCもミセス系のテナントはデイリーウエアが主流で、売れてるニコアンドもどちらかというとライフスタイル寄りになる。強いてミセス受けするブランドと言えば、独特なカラートーンと装飾を加味したドレスが秀逸な「ブージュルード」くらいだろうか。

 それゆえ、マインド&エージレスをコンセプトに、上質でカッティングの良いウエアやクロージングは、開拓の余地は十分あると思う。上質というとどうしてもメイドインジャパンやインポートを連想する方々が多いが、アジアにもフランスやイタリアのアパレル生産で定評のあるメーカーはいくつもある。もちろん、国内の専門店系アパレルも数は減っているが、良い商品を企画するところは残っている。ただ、如何せん、業態開発、小売り直営までにいかないため、商品の顔や欲するターゲットが見えないだけなのだ。

 筆者の周りにいる30代、40代のミセスは、雑誌の編集者やイラストレーター、グラフィックデザイナーなどの仕事をもっているが、みな今のファッション流通には満足しきれていないようだ。百貨店はインポートやラグジュアリーなら感度的に納得できるが、価格面でとても毎シーズン購入するというまでにはいかない。かといってファッションビルや郊外SCでは、素材も色もデザインも満足いかず、価格も安過ぎるのである。

 唯一の頼みがネット通販になるのだが、ヤングと違って素材感や着心地が購入条件になるため、失敗や返品の手間を恐れ、購入には二の足を踏む。都市部や郊外で路面展開しているブティックやセレクトショップを回ればきっと見つかるはずだが、実際は時間的に不可能だ。ならば、都市部でお披露目の催事をやってもいいのではないかと思う。百貨店が納入アパレルとの関係で無理なら、ファッションビルではできないだろうか。また、自治体はどうなのか。

 巨額な税金を使うファッションウィークの目的を、「お客さんに来てもらって、服を買ってもらう」と宣うのなら、タレント呼んでステージングに何百万円もかける企画に実効性があるはずがない。メジャーになりにくいが、上質で高感度なミセス服を企画する専門店系アパレルの展示即売会を実施した方が、はるかに服は売れるはずだ。ただ、業界慣行上、アパレルの直販は難しい。ならば、そうした商品を扱う中小の小売業者を一同に集め、彼らにイベントスペースを提供すればいいだけの話だ。

 ファッションビルなどの商業施設は客層がバッティングしなくても、営業上、難色を示すことが想像される。だったら、公開空地など公共の場を提供してあげられないのか。そこでの販売は営利目的だから公共性がないと言うなら、芸能事務所所属の外国人に税金でギャラを払うことは公共上許されるのかということにもなる。ファッションマーケットは大手流通や商業施設ですべてが攻略できるほど、単純ではない。ニッチから多少膨らみ始めたミセスマーケットこそ、狙い目だと思われる。
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