HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

店を見直す契機にしないといけない。

2013-10-18 14:15:25 | Weblog
 やはり書かなければならないだろう。今月31日からゾソタウンが始める新サービスのことである。専用アプリ「WEAR」をダウンロードしたスマートフォンで、商品のバーコードを撮影すればそのままゾゾタウンのサイトにジャンプして、商品が購入できるというものだ。
 
 また、商品を展開するブランドの担当者やショップバイヤーなどから、コーディネートのアドバイスを受けることもできる。お客にとっては「リアルショップで買うか」「家に帰って検討してから買うか」と、いろんな条件を踏まえられるなど、これまでにないショッピングの価値が生まれていく。

 当然、ゾゾタウンとブランドがバッティングする百貨店や駅ビル、ファッションビルは、猛反発。ルミネにあってはすぐさまテナントに「WEARによる行為禁止」を通達したと言われている。百貨店やデベロッパーは、ブランドやテナントの歩率家賃を得ているわけで、店舗がショールームや試着だけの場所になってしまうと、収入が確保できなくなるのだから無理もない。

 もちろん、ゾゾタウンに加盟しているブランドやショップが新サービスに参加することが条件になる。加盟社の中には、クロスカンパニーのように「当面は路面店を中心にサービスを広げる」と、デベロッパーとの全面戦争を避けようというところもある。

 しかし、リアルショップとEコマースの両方で販売戦略を行っているユナイテッドアローズは、「確実に売上げに貢献する」と前向きにとらえる。もし、加盟して格段に売上げが伸びるようなことになれば、ブランドやショップは五月雨式に新サービスを受け入れていくと思われる。

 デベロッパーの中には、同業者の諜報活動を阻止する目的でとってきた「館内撮影禁止」を拡大解釈して、「お客さんがスマホで商品タグを撮影する行為に出くわせば、このルールで対処する」ところもあるようだ。 裏を返せば、テナントに対し「撮影行為を止めなければ、それは契約違反」と、言わんばかりである。

 さらに「路面店とビルインでバーコードを付け替えれば」なんて言い出すところもあらわれた。ご当人はデベロッパーとテナントとの全面戦争を避ける「懐柔策」として表明したのだろうが、そんなことをすれば現場が大混乱することが全くわかっていらっしゃらないようだ。

 実際、どうなるかは蓋を開けてみないとわからない。ただ、若者の間ではスマートフォンが定着。購入した商品の画像をFacebookなどにアップして、SNS通じてあれこれ言い合うというライフスタイルは日常化している。そこにWEARが登場すれば、さらに購入の時点でいろんな価値をもたらすわけで、ショッピングの楽しさが増すのは言うまでもない。

 結果として、リアルショップがショールーム化するかもしれないが、それをお客のマナーを持ち出したり、あるいは強権をもって阻止するのは時代遅れのような気がする。それでも絶対阻止するということになると、とどのつまりはクラシックコンサートでホールが採用している携帯電波の遮断しかないだろう。



 米国は日本とは違い、百貨店でも商品は「買い取り」である。だから、売場に並べるだけでなく、Eコマースにも対応して、お客にあらゆるショッピングの可能性を提供している。つまり、リアルショップ、チラシやカタログ、DM、Eコマースなどを統合した「オムニチャンネル・リテイリング」がいちばん「顧客を創る」ことだと考えられているのだ。
 
 写真はNY在住の知り合いから送ってもらったショールーミングの手法だ。NYはこれからサンクスギビングデー、クリスマスホリデー、ブラックフライデーと、コマーシャル月間に突入する。お客は店舗が混雑するとゆっくり買い物できない。ならば店頭のコードをスマホでスキャンし、カフェでゆっくり商品を吟味して、購入するかどうかを検討できる方がはるかに便利だ。



 つまり、米国ではビルインのリアルショップでも、お客がスマホ撮影~Eコマースへの行為はまったくフリーになのだ。法的にも「商品の所有権を持たない=デベロッパーが商業者(店舗)の商行為を不当に制限できない」と、解釈できるからである。

 これが日本でも適用されるかどうか。大学時代、商法の講義で、教授がこれに近いようなことを語っていたような記憶があるが、手元に六法全書を持たないので法的根拠はわからない。少なくとも、日本の商法も「商行為は独立した営業者に認められる」スタンスだから、百貨店やデベロッパーが法廷闘争に出るとすれば、民法の「不法行為」を立証するしかないだろう。

 筆者はEコマースは頻繁に利用するし、ゾゾタウンのサービスはむしろありがたいと思う。それは百貨店やデベロッパーにとって死活問題というのも理解できる。ただ、百貨店やデベロッパーがどこまでテナントの営業指導を行って来たかと言えば、首を傾げたくなる。

 定期的なハウスカード会員向けのポイント割引は、かなりの効果があるようだ。しかし、それ以外はイベントによる集客策ばかりで、それが販促につながっているとは思えない。本当に営業指導に力を入れるのなら、テナントごとの販売力向上、ホットスポットやクールスポットの分析、品揃えへのフィードバック、顧客の購買行動分析など、ディーラーヘルプに踏み込むことも必要だろう。

 「お客さんに来てもらって、洋服を買ってもらう」と、巨額な税金を使う共同販促キャンペーンに携わるお方が代理店に企画を丸投げし、上がったものがゴミ屑同然のパンフレットと、アクセスが少ないWebサイトと、ブツ切れの媒体ばかりいいのか。広告枠が売れてもそれは制作費と印刷代の原資が生まれただけで、子飼いの会社に仕事を出せる程度に過ぎない。

 そして、真っ先に予算を投入するのは「タレントを呼ぶイベント」ばかり。巨額な税金を使いながら、オムニチャンネル戦略など一切考えない方々に、百貨店やデベロッパー、商店主は「事業から、速やかにご退場願いたい」とはっきり言っていいはずである。

 むしろ、せっかく紙やWebを制作するなら、ジャパネットたかたの「AR」まで踏み込むことも考えられる。まあ、コンテンツは都心部の有名ショップから、郊外の路面店まで、スマホで撮ってもらった商品アピール用の動画でも十分だろう。それを専用サイトにどんどんアップしてもらえばいい。そのためのインフラ構築に税金が使われるのなら、口を挟むつもりはない。

 ショールーミング化からEコマースの流れには、リアルショップでの販売手法や顧客作りも重要なカギを握る。今のお客は「店舗で見て、ネットで買う」だけでは満足しない。「ネットで見て、店舗で買う」ことも十分考えられる。ショップでの感動やドキドキ感も、お客にとってはショッピングの醍醐味だし、衝動買いを生む条件になるからだ。

 オムニチャンネル・リテイリングは、単にリアルショップとEコマースの融合ではない。肌感覚で勝負するショップを見直すことこそ、オムニチャンネル・リテイリングは有効に機能していくのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする