HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

専門学校生レベルに堕ちた販促キャンペーン

2013-10-23 16:14:11 | Weblog
 先日、来年春に実施される共同販促キャンペーン「ファッションウィーク福岡2014」の概要が発表された。7月に説明会、下旬に企画書提出、一次審査、プレゼンを経て、8月下旬に発注先が決定していたものだ。めでたく?代理店のA社が事業を手中に収めたようである。

 企画提案に当たって、商工会議所の担当者は「今年はガイドブックやWebサイトのレスポンスが低く、スタンプラリーもあまり効果がなかった」と仰った。販促の肝とされたスタンプラリーの応募総数がたった538枚じゃ、反響どころの騒ぎじゃない。企画運営委員長は「高島市長から春にも何かやれと急に言われたので、あまり準備期間がなかった」と言い訳したが、共同販促キャンペーンとして「失敗に終わった」のは間違いない。

 しかし、来年度の事業内容を見ても、新たに「ファッションマーケット」という一般参加型イベントが加わっただけで、媒体戦略は今年と同じ。なんせ、福岡アジアファッション拠点推進会議から拠出される総事業費は700万円。それで、集客イベントはもちろん、ガイドブックやポスター、Webサイトの制作まで賄わなければならない。代理店にとっては、あまり旨味がない仕事というのが本音だろう。

 でも、代理店を擁護しても始まらないので、来年度事業の問題点を挙げてみよう。
 まず、開催期間は2014年3月8日(土)~3月23日(日)と、今年より1週間ほど短い。これは単年度事業のため、3月中に予算を使わなければならないからと思われる。実施エリアは福岡市内全域を謳いながら、主に博多・天神・大名・薬院・今泉・警固エリアとの但し書き。これも同じだ。ただ、今年はイオンモールが郊外SCでも有料協賛し、逆に天神地下街や天神ビブレ、福岡三越などは中心部にありながら、有料協賛はしていない。

 つまり、大手各社はキャンペーンの企画内容と自店の戦略やターゲット、整合性など検討した上で、有料協賛か否かの判断したのだろう。その温度差を埋めるのが、事業をゲットした代理店の営業力になるのだが、今年の惨憺たる結果を見ると、むしろ有料協賛社は減るのではないかと思われる。

 キャンペーンの内容も参加商業施設や個店が行う各種セール・イベント、オープニングイベント、制作する媒体はガイドブック、Webサイトなど今年と全く同じだ。 有料協賛すればガイドブックやサイトで、独自の企画を告知できるメリットはあるが、それがどこまで自店の集客、販促につながるかどうかは懐疑的だ。


個人や学生のフリマで広域集客ができるのか?


 目新しいのは、ファッションマーケットである。福岡市役所前のふれあい広場を利用し、3月15日(土)の1日限りで行うフリマだ。総予算が700万円しかないのだから、有名タレントを呼べるはずもないし、コストのかかるステージングを行うにも無理がある。行きついた先が、一般参加を募ってイベント色が出せるフリマだったというわけだ。

 しかし、参加店は出店料が個店15,000円、クリエーター、学生8,000円と、法外な料金を取られる。しかも、留意事項には「バザーではありません。洋服・雑貨・アクセサリーなどのファッション発信の場となります」「出店にあたっては審査させていただきます」「出店者の小間割りのみを行いブース施工などは行いません。テーブル、椅子の貸出しは有料となります」「雨天決行」とある。 公金を利用するキャンペーンの割に、ずいぶん主催者目線の横暴な条件だ。

 まあ、この手のイベントが成り立つには、まず広場を埋めるだけの参加店を集めるのが前提だ。さらに販売される商品に魅力があり、多くお客を集客できるかになる。おそらく公共スペースだから使用料は取られないと思うが、 何らかのマス告知をしないと、集客はできないだろう。もし代理店が出店料を原資にテレビスポットなどを打ち、局から相応の手数料バックを受けるようなことがあれば、それは本末転倒である。

 ただ、出店者は自ずと決まってくる。店を持ってても立地にハンディがあるか、個人でもの作りを行っているか。商品は服と言ってもバリエーション無しの1点もの、雑貨やアクセサリーもほとんどが手作りだろう。きちんと商品を製造し、卸を行っている業者なら、わざわざ露天に出して商品のイメージを下げる必要はないからだ。だから、専門学校生が作るような商品か、それに毛の生えたアイテムになるのは間違いない。

 でも、1日限りで高額な出店料を支払って、ビジネスとしてペイするはずはない。学生は学校が参加料を負担してくれたにしても、出店するだけで売上げという評価がなされなければ、勉強にはならない。所詮、個人や学生のレベルなら、「ファッション発信」が安っぽくなるのは、目に見えている。

 また、雨天決行だから、一応テントは用意されるだろう。でも、今年のように桜の開花が早ければ、今度はお客自体が来なくなる懸念もある。どちらにしても、「お客さんに福岡に来てもらって、ファッションを買ってもらう」という目的では、集客の起爆剤になるとは考えにくいのである。


誰も手にしないガイドブックはゴミ屑同然


 一方、制作媒体は今年と同じ、ガイドブックとWebサイト。余裕があればポスターも作るのだろうか。今年はガイドブックで期間中に行われる推進会議や有料協賛施設のイベント、FACoなどが告知された。残りのページは参加店舗の有料広告枠で、これを代理店が子飼いの会社に、会員名簿を頼りに大手から個店まで営業させた。それで1000万円ほどの収入を確保し、ガイドブックの制作費と印刷代を捻出したようだ。

 ところが、7月の説明会でも報告されたように、ほとんど販促効果につながらなかったのだ。キャンペーン中に関わらず、ガイドブックは商業施設によっては写真のように大量の在庫が残っていた。またWeb媒体も公式ホームページはアクセス数が6万8000程度。 Facebookにいたっては「いいね」がたった230人と、とても知名度を云々するレベルではない。

 来年はガイドブックの広告枠が30,000円と50,000円になっている。おそらく今年より枠の料金を下げて、多くの有料協賛店を集めようという狙いだろう。しかし、販促効果はほとんどなかったわけだから、百貨店や各デベロッパーがおいそれと協賛するとは考えにくい。

 個店は対象を美容室やカフェまでに広げたにしても、もともと余裕がないのだから、有料協賛は厳しいと言わざるを得ない。それでも、ガイドブックを制作するのはなぜだろうか。もしかしたら、商工会議所出入りの印刷業者に仕事を出すという水面下の取り決めがあるのだろうか。ここまで来ると何のための、誰のための事業なのかと思えてくる。

 説明会に代表的な商業施設のデベロッパーを出席させたのは、「お前らにタダで仕事はやらんぞ。ちゃんと販促につながる企画を立て、スポンサーも捉まえろ」とのプレッシャーをかけたようにも受け取れる。どちらにしても代理店が収益を出すには、スポンサー次第ということになるだろう。でも、福岡市民の血税、商工会議所会員の会費を使う以上、成果が見えず実効性が薄い事業をやっていいはずがない。

 期間中にはFACoも開催されるが、多くの商業者が言っているように、「ショーイベントをやったところで、それが服の売上げにつながることはない」のである。また、物議を醸した「カワイイ区」との連動も、新区長就任がズレ込んだため、時機を逸している。仮に連動したにしても、せいぜいいいとこトークショーが関の山だ。

 先日も書いたが、ショールーミングアプリの時代に突入し、お客にリアルショップからEコマースまであらゆる販売機会を提供しないと、服は売れなくなっている。なのに未だに「イベントをやれば、お客が来て商品を買ってくれる」と考える方々の脳みそには呆れるばかりだ。「福岡がファッションに染まる春」というキャッチコピーもちゃんちゃらおかしくなってくる。
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