HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

開催根拠に乏しいFイベント。

2013-12-11 17:53:26 | Weblog
 先日、福岡アジアファッション拠点推進会議から来年3月に開催される「ファッションウィーク福岡」の参加店募集と「ファッションマーケット」出店の案内概要が発表された。
 
 これまでWebサイトにもほぼ同じ内容が掲載されていたが、PDF化された「企画概要書」は一般の小売店や個人店、フリーのクリエーター向けだと思われる。でも、これがファッションイベントに携わる人間のセンスかと疑うようなロゴブロック。もし正式なデザインなら、一気に参加意欲が失われるようなしろものだ。

 おそらく商工会議所の推進会議スタッフが言われるままに、Webサイトの原稿をコピペして、ワードで適当に制作したのだろう。それにしても、タイトル付け方、書体や行間を工夫しないと、100歩譲ってもビジネス文書としても体を成していない。

 書式評論はそのくらいにして、本題に入ろう。結局、概要を見ると、来年も今年と大差ないようだ。7月に代理店を集めて行われた企画コンペのオリエンでは、「昨年のF.W.Fのロゴマークは継続して使用するか、それとも…」「ガイドブックは評判が悪かった。コンパクトなものがいい」「参加商業施設およびショップでスタンプラリーを実施は、あまり効果がなかった」といった数々の失敗点、反省材料が提供された。

 オリエンにはデベロッパーも参加させる念の入れようで、それらをもとに「企画を考えろ」というのが推進会議側の思惑だったようだ。しかし、拠出される予算は、総額700万円。これを原資に前回とほぼ同じで宣伝・広報媒体として「ガイドブック」「サイトやSNS」「ポスター等広報ツール」「集客促進のための方策」まで作れというのだから、代理店にはかなり堪えたと思う。

 前回のガイドブックは「10万部印刷した」というから、ザっと見積もっても印刷代だけで700万円~900万円はいくだろう。それにポスター、チラシ、Webデザインまで制作し、イベントまで行えば、制作費と印刷費、イベント経費を合わせると、軽く2000万円近くにはなる。

 前回はガイドブックのページを割いて広告枠とし、協賛社を集めて何とか経費を工面している。今回の企画コンペでも、推進会議側は「コンペに勝たせる代理店=協賛社も集められる営業力」を条件としたと考えられなくもない。

 ただ、代理店の側に立ってみると、旨味のある仕事ではない。何せガイドブックは印刷、デザイン、撮影はすべて外注。前回、岩田屋やパルコ、キャナルシティ博多などが購入した1ページの広告枠には一応地場のモデルを起用し、ヘアメイク、スタイリストなども噛ませている。それらのギャラもすべて外注費だ。





 おまけにポスターやWebデザインも外注すると、制作費はべらぼうな額になる。つまり、営業をやって協賛社を相当数集めたところで、ほとんど経費で飛んでいき、代理店の利益にはならないのである。おそらくオリエンに参加したAEのほとんどが予算700万円と聞いて、それらの懸念が頭をよぎったはずである。

 まあ、ノー天気なところは、制作費はデザイン会社やカメラマン、印刷費は印刷会社を叩けば少しは安くなると考えたかもしれない。マジでイベント会社にステージの見積もりを取ったところもあるくらいだから。でも、コンペに勝てば何とかなると考えたとすえば、それは大きな勘違いだ。

 代理店にとっては、新聞の15段広告やテレビスポット、あるいは駅貼り、中吊りなどのマス媒体が使えるのなら、モチベーションも上がっただろう。しかし、そうはうまく行かないところに、このイベントを含め一連の事業の「裏事情」があるということである。

 オリエンでは、企画運営委員長の御仁が代理店とデベロッパーを前にして、「企画を考える方々」とおっしゃった。でも、制作媒体も予算も決まって、どう企画を立てろというのであろうか。実際にできるのは広告枠の営業をし、デザインを制作会社に外注し、上がってきたデータを印刷を印刷会社に渡し、あとは経費とスケジュールの管理をするに過ぎない。前回の反省からガイドブックをコンパクト企画にしても、下がるのは印刷代くらいだ。

 春のイベントとして、福岡にお客を集客し、本当に販売促進につなげたいのなら、下らないファッションイベントやトークショーなんてやらずに、物販サイドにインセンティブをつければいいだけの話である。デベロッパー各社が行うカード客向けの「10%ポイント還元」が何より証明している。

 代理店に企画を丸投げすること自体、企画運営委員長と名乗る資格はないだろう。自ら制作媒体を指定し、ファッションマーケットなんて期待薄のイベントを仕掛けるところに、責任者としての能力の限界が透けて見える。それが地元ファッション業界に向かっていないところも、関係者の多くが認識しているところだ。

 商工会議所はすでに大手百貨店やデベロッパーには声かけをしているようだし、地場でネームバリュのある専門店やセレクトショップにも勧誘の電話をかけまくっている。12月10日に発表されたイベント参加店募集とマーケット出店の案内概要は、それから漏れた個店向けになるが、エリアが天神とその周辺では参加店は限られる。

 今年の失敗要因とこれら諸々を含めて考えると、協賛する企業や店舗は減ると見て間違いない。ましてガイドブックがコンパクトになれば、スペースが小さくなるのだから個店にとっては視認性は落ちてしまう。他のフリーペーパーと一緒に置かれると手にも取ってもらえず、パラパラと立ち読みされてゴミ箱行きが正直なところだ。

 地元ファッション業界の多くが期待もしないのなら、それは愚策以外の何ものでもない。経費としての700万円は大した額ではないが、公金としての700万円が軽んじていいはずがない。先日、「福岡市長リコール市民の会│高島宗一郎市長」が結成された。でも、その前にノー無しな企画運営委員長を福岡のファッション業界がリコールすべきかもしれない。
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