3月17日(月)から「メルセデスベンツ ファッションウィーク東京」が渋谷ヒカリエ、他で開催される。期間中には東京コレクションなど、クリエーターによるショーもあり、観覧するのが今から楽しみだ。
80年代頃までは展示会と言えば、春夏と秋冬の年2回。期中のフォローや定番の追加は除いて、この展示会がメーカーにとっては、営業の絶好の機会だったのだ。
専門店側のバイヤーにとっても、アパレルがどんな商品を企画しているのか。サンプルを見て、見きわめることがシーズンの売上げを左右する。当然、東京以外に大阪・神戸のメーカーとも取引していれば、そちらも訪れなければならない。
展示会はせいぜい3日程度で、開催日は各社ともまちまちだった。東京3日、一旦地元に戻って大阪・神戸にまた3日という出張のスケジュール。だから、地方都市に店を構えて、あれこれ見たいバイヤーには、非常に効率が悪かった。
かつてあるバイヤーからこんな話を聞いたことがある。「青山、原宿、千駄ヶ谷のメーカーと20社くらい取引していると、3日では厳しい。1社との商談に2時間かかるとして、移動時間を入れると、せいぜい1日4~5社がやっと。立ち食いうどんさえ、食えない日もある」と。
そうした全国のバイヤーのことを考え、始まったのが「東京ファッションウィーク」だったと思う。それでも、目利きのバイヤーをがっちり捉まえているマンションアパレルの中には、あえて期間を外してじっくり商談を行うところもなくはなかったのである。
アパレルメーカーなんてワールドやイトキンのような大手を除けば、大半が年商5億円以下の中小零細企業である。ただ、量販される商品は他店にも並ぶ公算が高いから、あえて小さくても企画力のあるアパレルと取引するバイヤーは少なくない。
でも、バブルの経済崩壊以降、ファッション業界全体が厳しくなると、メーカー1社ではなかなかバイヤーを集客することができなくなった。そこで、中小零細のメーカーが何社か集まって合同展示会を開催するようになったのである。
カジュアルファッションを集めた「フロンティア」とか、アッシュ・ペー・フランスがプロモートする「rooms」とかがそうだ。大きなものでは、繊研新聞が主催する「IFF(インターナショナル・ファッション・フェア)」「プラグイン」「MaG」。雑貨を集めた「TREASURE」などがある。
先日、ファッションライターの南充浩さんも、ご自身のブログで合同展示会について書かれていた。
「良いか悪いかは別にして、『1社だけでは来場者数が増えないから合同展示会にしたら来場者数が増えるのではないか?』という考え方が業界にはある。ある意味でこれは正しい。
1社で展示会を開催するよりも10社くらい集まって展示会を開催した方が、来場者数は増えやすい。だから昔からアパレル業界では合同展示会が盛んに行われた。
その昔は『レディースブランド合同展』『カジュアルブランド合同展』『子供服合同展』なんていうのがあったし、今でもその名残でいくつかの合同展が残っている。
(中略)
来場バイヤーを多数誘致したければ、レディースブランドとメンズブランド、子供服ブランドの混合合同展を開催する方が効果的といえるだろう。そこに雑貨類、インテリア類などがあるとさらに効果が期待できる。」と。
合同展示会は東京、あるいは大阪・神戸のように全国からバイヤーを集められる都市なら有効だ。ところが、福岡のような地方都市での開催は、かなり厳しいと思う。
なぜなら、ファッショントレンドが世界規模で流布し、マスマーケットがほぼ全国一律で形成される時代。フットワークの良い専門店バイヤーなら、直接、東京や大阪・神戸に出かけ、効率よくメーカー回りができる勘所をもっている。
さらに海外のトレードショーで直接発注したり、工場まで出かけて自分の目で素材から確かめて別注するバイヤーさえ、もはや地方のセレクトショップにもいるくらいだ。
確かに中高年向けの専門店を運営していたり、足腰が弱って遠くまで出張に出かけるのが辛いという店舗経営者にとっては、地方での展示会は好都合なのかもしれない。それにしても、合同展示会に参加するメーカーが自店にあった商品を企画してくれることが大前提だ。
メーカーにとってはバイヤーが来てくれる展示会は、営業的に効率がいい。でも、専門店側にすれば、日頃からこまめに店を訪れてくれて、売れ筋を聞いてくれたり、企画ニーズの掘り起こしをしてくれるとかの「マーケティング営業」の方が本当はありがたいのだ。
メーカーがプロダクトアウトの姿勢を貫きたい気持ちはよくわかる。しかし、これだけトレンドの変化が激しく、マーケットが細分化される時代。より単サイクルの生産体勢が求められるからこそ、展示会頼みの営業スタイルから脱却しなければならない面もある。
福岡では、3月5日、6日の2日間、合同展示会「GOLDRUSH」が開催された。http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/85/85798_17155090_misc.pdf
この展示会については、当コラムでも過去に取り上げたが、正直、閑古鳥が鳴くほど来場者が少ない。企画をしているのは地元の什器メーカーで、知り合いのアクセサリーメーカーも参画している。
ここ数年は福岡アジアファッション拠点推進会議、福岡商工会議所、福岡県や福岡市も共催に名を連ね、「福岡ファッションコレクション」というゴロの悪い冠も付いている。今回は昨年から始まった「ファッションウィーク福岡/FWF」の共催事業として、無理矢理位置づけられた格好だ。 それでも、地元専門店のバイヤーが大挙して来場する光景は見られない。
RKB毎日放送は先日、早朝ニュースをパブ枠にして、GOLDRUSHの模様を報道した。1分程度の内容で、中高年のバイヤーとメーカーとの商談風景に、昨年の「福岡アジアコレクション/FACo」のビデオをインサートして、ファッションウィーク福岡と「福岡発信」をことさらに強調していた。
ところが、実態は出展社37社中、地元アパレルはたった9社に過ぎない。後は雑貨やアクセリーの卸、そして大阪、東京のメーカーを加えて何とか体裁を保っている状態だ。RKBの報道に反して、実際に訪れているバイヤーは他県も含めて極端に少ない。 これで本当に「福岡発信」の機能が果たせていると言えるのだろうか。
筆者の知り合いである関西のバッグメーカーも出展しているが、間に長崎の代行会社を咬ませてのものだ。出展料はもとより、出張費を含めると、展示会の経費もバカにならない。それで訪れるバイヤーが少なく、商談がまとまらなければ完全に赤字だ。
間にレップを咬まして営業を代行してもらう。実に賢いやり方だが、こうしなければ中小零細のメーカーは生き残れない。おそらく出展社のほとんどがペイしていないのではないだろうか。でも、それが地方で開催される合同展示会の実態なのである。
RKBにしてみると、自社事業の「福岡アジアコレクション/FACo」に商工会議所や福岡市から資金提供があるため、事実とはかけ離れた偏向報道もリップサービスのうちなのだろう。 まあ、ファッション音痴のローカルメディアに合同展示会の実態を正確に報道できるはずもないが。
ただ、推進会議や自治体は立場が違う。公金を提供して支援する以上、「なぜ、地元のバイヤーに人気がないのか」「福岡を発信するための展示会とはどうすべきか」についても、主催者を交えてもっと考えても良いはずだ。
地元の小売りに見向きもされない展示会が「福岡発信」のはずがない。根本から手法、内容を見直すべきだと思う。でなければ、メーン事業のファッションウィーク福岡すら、利害関係者の単なる「公金獲得事業」というレッテルを拭えないことになる。
80年代頃までは展示会と言えば、春夏と秋冬の年2回。期中のフォローや定番の追加は除いて、この展示会がメーカーにとっては、営業の絶好の機会だったのだ。
専門店側のバイヤーにとっても、アパレルがどんな商品を企画しているのか。サンプルを見て、見きわめることがシーズンの売上げを左右する。当然、東京以外に大阪・神戸のメーカーとも取引していれば、そちらも訪れなければならない。
展示会はせいぜい3日程度で、開催日は各社ともまちまちだった。東京3日、一旦地元に戻って大阪・神戸にまた3日という出張のスケジュール。だから、地方都市に店を構えて、あれこれ見たいバイヤーには、非常に効率が悪かった。
かつてあるバイヤーからこんな話を聞いたことがある。「青山、原宿、千駄ヶ谷のメーカーと20社くらい取引していると、3日では厳しい。1社との商談に2時間かかるとして、移動時間を入れると、せいぜい1日4~5社がやっと。立ち食いうどんさえ、食えない日もある」と。
そうした全国のバイヤーのことを考え、始まったのが「東京ファッションウィーク」だったと思う。それでも、目利きのバイヤーをがっちり捉まえているマンションアパレルの中には、あえて期間を外してじっくり商談を行うところもなくはなかったのである。
アパレルメーカーなんてワールドやイトキンのような大手を除けば、大半が年商5億円以下の中小零細企業である。ただ、量販される商品は他店にも並ぶ公算が高いから、あえて小さくても企画力のあるアパレルと取引するバイヤーは少なくない。
でも、バブルの経済崩壊以降、ファッション業界全体が厳しくなると、メーカー1社ではなかなかバイヤーを集客することができなくなった。そこで、中小零細のメーカーが何社か集まって合同展示会を開催するようになったのである。
カジュアルファッションを集めた「フロンティア」とか、アッシュ・ペー・フランスがプロモートする「rooms」とかがそうだ。大きなものでは、繊研新聞が主催する「IFF(インターナショナル・ファッション・フェア)」「プラグイン」「MaG」。雑貨を集めた「TREASURE」などがある。
先日、ファッションライターの南充浩さんも、ご自身のブログで合同展示会について書かれていた。
「良いか悪いかは別にして、『1社だけでは来場者数が増えないから合同展示会にしたら来場者数が増えるのではないか?』という考え方が業界にはある。ある意味でこれは正しい。
1社で展示会を開催するよりも10社くらい集まって展示会を開催した方が、来場者数は増えやすい。だから昔からアパレル業界では合同展示会が盛んに行われた。
その昔は『レディースブランド合同展』『カジュアルブランド合同展』『子供服合同展』なんていうのがあったし、今でもその名残でいくつかの合同展が残っている。
(中略)
来場バイヤーを多数誘致したければ、レディースブランドとメンズブランド、子供服ブランドの混合合同展を開催する方が効果的といえるだろう。そこに雑貨類、インテリア類などがあるとさらに効果が期待できる。」と。
合同展示会は東京、あるいは大阪・神戸のように全国からバイヤーを集められる都市なら有効だ。ところが、福岡のような地方都市での開催は、かなり厳しいと思う。
なぜなら、ファッショントレンドが世界規模で流布し、マスマーケットがほぼ全国一律で形成される時代。フットワークの良い専門店バイヤーなら、直接、東京や大阪・神戸に出かけ、効率よくメーカー回りができる勘所をもっている。
さらに海外のトレードショーで直接発注したり、工場まで出かけて自分の目で素材から確かめて別注するバイヤーさえ、もはや地方のセレクトショップにもいるくらいだ。
確かに中高年向けの専門店を運営していたり、足腰が弱って遠くまで出張に出かけるのが辛いという店舗経営者にとっては、地方での展示会は好都合なのかもしれない。それにしても、合同展示会に参加するメーカーが自店にあった商品を企画してくれることが大前提だ。
メーカーにとってはバイヤーが来てくれる展示会は、営業的に効率がいい。でも、専門店側にすれば、日頃からこまめに店を訪れてくれて、売れ筋を聞いてくれたり、企画ニーズの掘り起こしをしてくれるとかの「マーケティング営業」の方が本当はありがたいのだ。
メーカーがプロダクトアウトの姿勢を貫きたい気持ちはよくわかる。しかし、これだけトレンドの変化が激しく、マーケットが細分化される時代。より単サイクルの生産体勢が求められるからこそ、展示会頼みの営業スタイルから脱却しなければならない面もある。
福岡では、3月5日、6日の2日間、合同展示会「GOLDRUSH」が開催された。http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/85/85798_17155090_misc.pdf
この展示会については、当コラムでも過去に取り上げたが、正直、閑古鳥が鳴くほど来場者が少ない。企画をしているのは地元の什器メーカーで、知り合いのアクセサリーメーカーも参画している。
ここ数年は福岡アジアファッション拠点推進会議、福岡商工会議所、福岡県や福岡市も共催に名を連ね、「福岡ファッションコレクション」というゴロの悪い冠も付いている。今回は昨年から始まった「ファッションウィーク福岡/FWF」の共催事業として、無理矢理位置づけられた格好だ。 それでも、地元専門店のバイヤーが大挙して来場する光景は見られない。
RKB毎日放送は先日、早朝ニュースをパブ枠にして、GOLDRUSHの模様を報道した。1分程度の内容で、中高年のバイヤーとメーカーとの商談風景に、昨年の「福岡アジアコレクション/FACo」のビデオをインサートして、ファッションウィーク福岡と「福岡発信」をことさらに強調していた。
ところが、実態は出展社37社中、地元アパレルはたった9社に過ぎない。後は雑貨やアクセリーの卸、そして大阪、東京のメーカーを加えて何とか体裁を保っている状態だ。RKBの報道に反して、実際に訪れているバイヤーは他県も含めて極端に少ない。 これで本当に「福岡発信」の機能が果たせていると言えるのだろうか。
筆者の知り合いである関西のバッグメーカーも出展しているが、間に長崎の代行会社を咬ませてのものだ。出展料はもとより、出張費を含めると、展示会の経費もバカにならない。それで訪れるバイヤーが少なく、商談がまとまらなければ完全に赤字だ。
間にレップを咬まして営業を代行してもらう。実に賢いやり方だが、こうしなければ中小零細のメーカーは生き残れない。おそらく出展社のほとんどがペイしていないのではないだろうか。でも、それが地方で開催される合同展示会の実態なのである。
RKBにしてみると、自社事業の「福岡アジアコレクション/FACo」に商工会議所や福岡市から資金提供があるため、事実とはかけ離れた偏向報道もリップサービスのうちなのだろう。 まあ、ファッション音痴のローカルメディアに合同展示会の実態を正確に報道できるはずもないが。
ただ、推進会議や自治体は立場が違う。公金を提供して支援する以上、「なぜ、地元のバイヤーに人気がないのか」「福岡を発信するための展示会とはどうすべきか」についても、主催者を交えてもっと考えても良いはずだ。
地元の小売りに見向きもされない展示会が「福岡発信」のはずがない。根本から手法、内容を見直すべきだと思う。でなければ、メーン事業のファッションウィーク福岡すら、利害関係者の単なる「公金獲得事業」というレッテルを拭えないことになる。