HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

1,000円商品券の背景にあるもの。

2014-04-04 16:53:29 | Weblog
 先日の夕方、久々に友人が事務所にやってきた。いつもなら政治に始まり、経済、地元の景況の話になるのだが、その日は来る途中にビームス福岡店に寄ったようで、オレンジの紙袋を持っていたので、ファッション談義に終始した。

 筆者は近くで仕事をしているので、よく店の前を通るがビームスの店内を覗くのはシーズンに1度くらい。数年前、亡くなった藤巻幸夫氏にも店舗でお会いしたが、その後に訪れたのは数えるくらいしかない。

 仕事柄、チェックを欠かさないレディスも、売場が天神イムズやアミュプラザ博多に移ってしまったため、そちらに出かけた時くらいしか見なくなった。個人的にもアメカジ嗜好ではないため、セレクトで買い物することは全くない。

 ただ、雰囲気としてビームスに感じるのは、以前よりは客足が減ったのではないかということ。自店舗の増加、オンラインショップやアウトレットの展開、競合店やユニクロなどの台頭etc.。要因をあげるとキリがないが、一時の勢いをなくしているのは間違いないだろう。

 試しに友人に「お客さん、多かった?」と聞くと、「いや、2階は俺1人だった。スタッフが2名、暇そうだった」との答え。平日の6時過ぎ、繁華街の天神や西通りから少し離れているとはいえ、歩いても5~6分の距離。それでも、お客がいないというのは、客足はかなり遠のいているということである。

 それを裏付けるわけではないが、友人は「2アイテムで2万円強の買いものをし、1,000円の商品券を2枚くれた」と、「BEAMS お買い物券」と書かれたホログラム付きチケットを見せてくれた。目を見張ったのは商品券の利用条件である。

 通常、紳士服量販店などが発行する商品券は、スーツ等の買い取りなどのキャンペーン時に渡される。シャツなど3,000円以上のアイテムを購入する時に1枚ずつ使えるような感じだ。 利用条件は非常に厳しく、商品券というより割引券で、大してお客にメリットはない。

 カジュアルチェーンでは、ポイントやスタンプのカードで500円以上買い物すると、5%のポイントがつく程度。デベロッパーが半期に1度行う10%オフやポイント還元などもあるが、これはハウスカード会員限定や入会キャンペーンを兼ねている場合が多い。

 ところが、ビームスの商品券は利用期間こそ4月1日~5月31日の2ヵ月間だが、購入客なら誰でももらえて、使える価格に規定はない。1,000円以下の商品ではもちろんお釣りは出ないが、千数十円の商品なら差額の数十円を払えばいいだけだ。2枚あると2,000円分として使えるので、お客にとっては非常にありがたい。

 おまけに友人は「ビームスクラブ」というポイントカードも持っているため、こちらのポイントも付き、年間の購入額に応じて3%以上の還元があるという。顧客にとっては、お得な買いものができるということである。

 一方で、1万円の売上げで1,000円の商品券が確実に使われると考えれば、その分、利益率は下がることになる。ビームスのようなセレクトショップの荒利益は、仕入れ商品で35%~40%くらいだろう。これで10%の値引きと3%の還元は決して小さくない。

 逆に商品券を発行したが回収率が悪いと、今度はリピーターに結びついていないことになる。顧客や一見客の購買レスポンスがどれくらいかはわからないが、印刷費用もかかっているわけだし、半分以上は使ってもらわないと、投資対効果は良くないと言える。

 ファッションビルや百貨店、SCで、どのくらいのポイント還元や商品券発行がなされているか、その実態はつかめていない。ポイントサービスは、販促の手段として非常に奏功していると聞くから、やはり「支払い金額」に対して大半の消費者は敏感ということだ。

 加えて、業界全体がオーバーストアの競合状態であることを考えると、割引販促はかなり常態化してきていると思う。この傾向はお客にとってはありがたいことだし、ポイントや商品券を上手に使えば、賢い買いものができるのは言うまでもない。

 ただ、各店がポイントサービスをしている状況で、一人勝ちするために割引や還元の比率をアップすれば、それは自分で自分の首を絞めることになるから、横並びがいいとこだ。でも、あのビームスがお買い物券を発行しても、お客は多くないのだから、リピーター化はそれほど容易ではないことになる。

 むしろ、Tポイントカードのように異業種・業態横断型の方が、その人間のライフスタイルで購買を区切ることになり、単独の割引よりも多少の販促効果は上がるかもしれない。

 購入履歴の分析は難しくなるが、今後はJR東海のSUICAや西鉄のNIMOCAのようなカードが全国で使えるシステムにしていくことが重要になっていくと思う。アマゾンや楽天といったネット通販に対抗するにも、リアル店舗の全国連携を抜きには考えられないからだ。

 もっとも、ファッションに投資する側の身になって考えると、どうだろうか。もう商品券をもらったから、ポイント還元があるから、セールが前倒しされるからと言って、簡単に購入する気になるとは思えない。

 別にお金が無いわけではない。そこまでされたところで、ちまたにあるアイテムにそれほどの魅力、価格に対する価値を感じることがほとんど無いからだ。リピーターや顧客の囲い込みはそう簡単ではないのだ。

 これは筆者だけでなく、DCブランド世代の多くの大人が感じていると思う。もっとお金を出していいから、感性にグッとくる商品の登場を願うばかりである。
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