HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

クリスマスデコレーションを考え直してみよう。

2014-12-03 05:38:41 | Weblog
 12月とともにクリスマス商戦がピークを迎えている。1年でいちばん消費意欲が盛り上がるだけに、各店はあの手この手で集客にしのぎを削る。でも、クリスマスと言えば「これ」というベタ過ぎるデコレーションには、いささか食傷気味の感もある。

 サンタクロースの衣装が「赤」になったのは、コカコーラがプロモーションのために自社のコーポレートカラーを使ったというのは有名な話だ。当時としては、それこそ画期的なアイデアではなかったかと思う。

 時代が移り変わると、巷にあふれるクリスマスのデコレーション、ディスプレイ、各種媒体のデザインのマンネリ化は否めないようで、街行く人々の注意や興味につながっているのか。また、販促につながる効果があるかは、疑問である。

 ファッション業界、特にアパレル小売業には、「リテール・プロモーション」という手段がある。ただ、日本ではまだまだ理解されているとは言いづらい。ほとんどがツリーやオーナメントによるもので、最近ではイルミネーションというややオープン化した手法で完結している。

 筆者がマンションアパレルにいる頃、日本のアパレル専門店の巨塔であったワールドの「リザ」と「鈴屋」。リテール・プロモーションでは両社は際立っていたし、仕事をしていた90年代半ばのNYではこの考え方が定着していたので、ずいぶん参考にさせてもらった。

 例えば、店内販促用の「エクステリア・グラフィック」というカテゴリー。所謂、二次元でプリントしたものだ。次に「マーチャンダイジング&ディスプレイ」。商品そのものパッケージや展示である。3つ目が「テイクホーム」で、紙袋やキャリーバッグだ。

 他にも壁や天井、フロアなどが媒体のポジションになり、それらをシーズンごとに使い分けていろんな販促展開をするという考え方である。尤も、店舗やビルをトータルでみてプロモーションを行うには、より引いて見た感覚でデザインを考えなければならない。

 こうした作業には、二次元でプリントする「グラフィック」と言っても、チラシやカタログ、せいぜいポスターしか制作していないデザイン感覚では厳しいだろう。クリエーターにはオープン広告や3Dに近い制作能力が求められるということである。

 米国ではこの辺の線引きがしっかりしているが、日本ではまだまだ曖昧なところは否めない。それに日本のクリスマスプロモーションは最近、イベント化してきている。LEDライトによるイルミネーション、さらに今はプロジェクションマッピングが大流行りである。

 確かにこうした装飾やコンテンツは、「人を集める」「注目させる」という広告的意味で、多用されている。でも、どこまでセールスプロモーション、いわゆる販売促進につながるかは疑問である。

 特に自治体や商工会議所、デベロッパーがこうしたイベントにカネをかけながらも、各小売り業、店舗には「独自で販促を行ってください」ということには非常に違和感を憶える。その前に納税者や会員、テナントへの営業指導としてヘルプするのが先ではないかと思うからだ。

 まあ、文句ばかり言ってもしょうがない。小売業にもかつてのリザや鈴屋のようにクリスマスプロモーションを見直す面は大いにあるだろう。では、実際にどうすればいいのか。それはまずお客さんへの販促ポジションはどこかを考えてみることである。
 
 大きく分けると、店舗の場合、ウィンドウ、壁面、天井、フロアの4つである。最大のポイントはウィンドウだ。最近の店舗ではウィンドウを設置しないところもあるが、筆者はお客の視線を惹き付け、洗練されたVMDを構成するには欠かせない場面だと思う。

 欧米のラグジュアリーブランドがその価値を高めているのは、ウィンドウのディスプレイが秀逸だからという面もある。そのため、クリスマスのデコレーションに力を入れるブランドは少なくない。これには小売業者もお客も意外に気づいていない。

 ただ、有名ブランドのようにカネをかけたからと言って、必ずしもいいデコレーションになるとは限らない。やはり自店がアイデアを駆使し、思い思いに表現してみることが先決だ。細かい作業が必要だと思うと敬遠しがちだが、デコレーションは大胆な表現こそインパクトが出る。

 一例をあげると、タペストリーなんかも大いに復活させていいと思う。最近は販促ツールを制作するデジタル機器が発達したことで、ツール制作も随分コストダウンできるようになっている。

 PCでサイズを決めてデザインすれば、紙から塩ビのシートまで自由にプリントアウトしてくれる。しかも、1m×1mがカラーで3000円程度だから随分安くなった。昔ならB全のポスター1枚を印刷するのにいくらかかっただろうか。雲泥の差である。だから個店にも推奨できるのだ。

 クリスマスモチーフのデザインを起こし、塩ビシートに出力する。後は巻物のように上限に芯をつければ、天吊りは可能だ。芯にする丸木やつり下げる天蚕糸は、100円ショップで簡単に手に入る。

 肝心なデザインはどうだろうか。オープンにディスプレイされているクリスマスツリーはありふれて、インパクトはない。オーナメントでデコレーションし、スノースプレーで演出したところで然りである。インパクトを出すには引き算のデザインで、できるだけシンプル化するのだ。

 もみの木をモチーフにするなら、極限までデフォルメしてはどうだろう。それをプリントアウトしてパネルに貼り100円ショップに売っているLEDライトを仕込めば、即興でイルミネーションタペストリーができる。

 いくらグラフィックソフトが高度な表現力を持つと言っても、光の軌跡を表現するまでには行かない。これはやはりリアルなライトの方がふさわしい。

 今は身近にいろんな資材が溢れている。アイデアさえあれば、それを利用していろんなデコレーションを作ることは可能だ。むしろ今はコストをかけずに、いろいろと面白いツールが制作できる環境にある。

 何でも業者に任せるのではなく、まずは自店でやってみることがクリスマスプロモーションを活性化される第一歩ではないかと思う。
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