タイトルの「きのね」は「柝の音」と書く
歌舞伎や相撲などで使う拍子木を「柝」といい、これをたたくときに出る音のこと
解説を見ると、歌舞伎の十一代目市川團十郎の妻の生涯を書いているとのこと
本の中では市川團十郎ではなく(評伝ではないから当然ですが)松川玄十郎
主人公はその妻、光乃
光乃は継母に育てられ、姉や弟も母親が違う中で育った
父親の羽振りがいい時に女学校に入学し、卒業するころは父親の仕事がなくなり家族はちりぢりに
光乃は大叔母の家で居候しながら卒業する(昭和8年 18歳)
口入れ屋で紹介された就職先が、役者の家だった
この家で女中として働き、雪雄(のちの玄十郎)を目の当たりにし、目鼻立ちのハッキリした美形にすっかり魅了される
光乃は無駄口をきかず黙々と働くので、雪雄に付いてずっとお世話をすることになる
雪雄の愛人の産後の手伝い、
雪雄の新婚家庭の下働き(女中)、
養子先の松川家へも女中として付いていき、
戦中・戦後の食料調達、
雪雄がチフスで重体になったときは輸血のために献血する
疎開先では主従とはいえ雪雄と2人きりの生活
戦後、雪雄は役者に行き詰まる時期があり、光乃は暇を出されるが、姉と父が住む秋田に行くしかなく、そこで事情を知らない姉が用意してくれたお米を持って、雪雄の元へ戻る
この時、妊娠していることに気付く
お産は、とうとう一人で生んでしまう
この場面は圧巻だった
まだまだ先がある@@ そして、今を時めく十一代目海老蔵に繋がるんですね@@
光乃の生涯なので、海老蔵さんは出てきませんが^^;
歌舞伎役者の家系や歌舞伎の世界が少し垣間見れて、とても興味深い内容
宮尾登美子の本はついつい先を読まされてしまい、目を通さなくてはと思う新聞がたまっていく
これだけの内容を書くについては、相当な取材が必要であっただろうが、團十郎側から抗議を受けることもなく文庫本も発売されているのだから、作家の力だろう!!
宮尾登美子!何ともすごい人!!