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読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

沈まぬ太陽:劇場公開

2009年11月08日 21時55分21秒 | ■見る
山崎豊子作
楽しみにしていた「沈まぬ太陽」を見てきました。3時間22分の上映時間は、途中の10分間の休憩がなくとも見られたと思います。正に力作でした。途中「お涙頂戴」的な場面がたくさんあったにもかかわらず、白けることなく、ストーリーに身をゆだねて鑑賞できました。それは、脚本がしっかりしており、役者が良い演技をしており、何よりも、画面から緊張感が伝わってきたことが理由であると思います。
とにかく、出演者の演技が良かった。今まで(私は)評価していなかった役者の皆さんの目を見張る演技に感動しました。
良かったと思った主な出演者は以下の通りです。
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阪口清一郎役:宇津井健
国見正之役 :石坂浩二
恩地元役  :渡辺謙
八馬忠次役 :西村雅彦
堂本社長役 :柴俊夫
行天四郎役 :三浦友和
三井美樹役 :松雪泰子
恩地りつ子役:鈴木京香
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他の皆さんも素晴らしかった。今年私が見たワーストワンの映画「火天の城」とは本当に雲泥の差がありました。
さて、私は原作はまだ読んでいません。映画を見て、妻共々感激しましたが、映画にあるようなことが、そのまま現実にあることは稀です。ましてや、もっと詳細な表現が可能な原作である小説であっても、所詮、著者の視点から描かざるを得ないという制約に立ったものなので、様々な評価があるのではないか、と興味を持ち、ネットで情報を得ました。その主なものは以下のURLの通りです。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/沈まぬ太陽 => 中立的な紹介
     http://www.jalcrew.jp/jca/public/taiyou/asahi-shintyou.htm => 作者よりの見解
     http://www.rondan.co.jp/html/ara/yowa3/index.html => 批判的な見解
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特に最後の批判的な意見は、原作の重要な場面と現実の違いを詳細に示しており、作品全体を否定しています。私の半世紀余の体験を振り返ると、人は邪悪であり、同時に善でありうると思います。(私を含め)同一人物が、今まで、全くの正論・正義を唱えていたと思うと、自身の利害を守るために屁理屈を主張する。人が自身の利害を超えて、人生を語ることは本当に難しい。今野敏さんの「隠蔽捜査シリーズ」が心に響くのは、偏屈な主人公が、自身の利害を顧みない立派な、より正しい結論に到達する天晴れさに心打たれるからではないかと思います。
本作が現実を下敷きにしたフィクションである以上、作者の限られた人生観や世界観を通して単純化せざるを得ない事情があったと思います。(そして何より、分かり難い小説では読者に受け入れられないかもしれません)恐らく現実の中の主人公は、もっと複雑で正邪が判然としない人物であると思います。また、悪役として登場する人物たちの”悪”にも、次善の策を取った結果でああったかもしれません。
しかしながら、現実世界が、正邪半ばする中途半端な人たちだけでなく、真実邪悪な人々がいることも間違いありません。私の身近にも何人かいますが、そうした人は、恐ろしい程に計算ずくで生きているので、強固な城壁に守られています。だから、本作品のうち、なにがしかの真実があることを私は疑いません。世への、そして私自身への警鐘として本作を味わいたいと思います。
評価は5です。

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