平成22年2月19日(金曜日) 財務金融委員会
○野田(毅)委員 まず冒頭、菅副総理にお伺いしたいんですけれども、今、日本の検察行政の最高責任者はだれですか。
○菅国務大臣 検察と言われたんですね。(野田(毅)委員「はい」と呼ぶ)総理大臣だと思います。
○野田(毅)委員 今、自衛隊の最高責任者はだれですか。
○菅国務大臣 総理大臣だと思います。
○野田(毅)委員 税務行政の最高責任者はだれですか。
○菅国務大臣 それも総理大臣だと思います。
○野田(毅)委員 固有名詞で言ってください、職名ではなくて。
現在の総理はだれですか。
○菅国務大臣 鳩山由紀夫総理大臣です。
○玄葉委員長 野田君、委員長の許可を得てから発言してください。
○野田(毅)委員 わかりました、済みません。
そうなんですよね。今、確定申告がもう始まっています。その中で、私は、世界じゅう、こんな例は、よほどのことがない限り聞いたことがない。税務行政の最高責任者が、自分のことは横に置いて、国民に向かって正しい納税を呼びかける。漫画ではないですか。この事態を財務大臣としてどうごらんになりますか。
○菅国務大臣 この鳩山総理の件は、もう予算委員会あるいは党首討論でも御本人からいろいろと説明もありますけれども、御本人としては、そのことが贈与ということにみなすべきだということがわかった段階でみずから納税をされている、このようにおっしゃっていますし、そう理解しておりまして、確かに、いろいろなマスコミ等での言い方あるいは国会の議論等での言い方はありますけれども、私は、鳩山総理がそういう形できちんと対応されている、このように理解をいたしております。
○野田(毅)委員 言葉は、例えは悪いんだけれども、亀井大臣もおられるので、かつての仕事で警察庁におられたんだけれども、自首という場合は、指名手配になってから出てきたって、これは自首にならないんですよね。これは世間で騒がれて問題になって、期限後申告だ。これは自主納税に入らない。だから、きちっと納めているという話じゃない。もしばれなかったら、世間で話題にならなかったら、そのままほっかむりだ。
この事態を、総理に次ぐ税務行政の責任者である菅財務大臣はどう受けとめていますか。
○菅国務大臣 鳩山総理のいろいろな機会の説明では、まず、そうした贈与があったことを知らなかった、それがはっきりした段階で贈与とみなして納税をされた、こういうふうに理解しておりまして、私は、今野田議員が言われたこととは若干違うんじゃないかなと。つまり、知った段階できちんと納税されたというふうに理解しております。
○野田(毅)委員 贈与の事実は今もって御存じないんじゃないですか。天地神明に誓って知らないと言っておられる。大体、これはだれが聞いたって、そんなことを正面からそのとおりと信ずる人はいないですよ。親子の間の贈与を本人が知らぬで、秘書かだれかが横に入って、それだけしかわからない、こんなことで世の中通るわけがないし、私は、こんな日本は恥ずかしい。一体どういうことですか。
この点について、私は、菅副総理はしっかりと税務行政の責任者として、鳩山さんをかばうんじゃなくて、しっかりとその責任を果たせと。知らなかったと言うことが説明責任にはならないんだ。どう責任をとるんですか。どう責任をとってもらうんですか。聞かせてください。
○菅国務大臣 これも鳩山総理みずから言われていますけれども、知らなかったと言ってもなかなか国民の皆さんにも理解していただくのは難しいかもしれないけれども、まさに天地神明に誓って知らなかったという表現をされております。
私も鳩山総理とはかなり長いおつき合いになりますけれども、一般の方、私を含めて一般の人であれば、親子関係の中で多額な贈与がある場合は普通知らないということは一般にはあり得ないと思いますけれども、やはり鳩山総理の場合は、御本人言われているように、ある意味で大変恵まれているというんでしょうか、大きな資産を関係者が持っておられて、いろいろそれを管理するための人たちもおられるということも聞いておりますので、そういう中で、普通の、何といいましょうか、私どもの感覚とは違って、そういう管理体制のある中での出来事ですので、率直なところ、鳩山総理とのつき合い、個人的なおつき合いも含めて、あそこまではっきりと知らなかったと言われていることについては、一般の常識とは違うかもしれませんが、鳩山総理の場合はそれも十分あり得る、そういうふうに私は認識をいたしております。
○野田(毅)委員 まさに一般の常識から外れているんですよ。別の言葉で言えば、非常識だ。納税道義を一番国民に求めている最高責任者が、みずからの納税に関してそんな非常識なことをやっていて、日本国の総理として適切ですか。世界じゅうの人がこの問題を見ていますよ。日本の政治家は一体何だと。日本の政治そのものに対する信頼を汚しているんじゃないですか。この点について、これは菅さんに幾ら言ってもしようがないのかもしれぬが、しかし、少なくとも総理に次ぐ税務行政の最高責任者である以上、事実関係をつまびらかにする責任がある。
同時に、税務調査を総理だから受けなくていいということにはならない。金額が年間一億八千万で済んでいるかどうか、それさえわかるはずがない、本人は知らないんだから。もっと多いかもしれないじゃないか。この種の問題は、私もかつては……(発言する者あり)だれかが要らぬことを言っているけれども、検察じゃないんだよ。国税ですよ。まさに、申告是認案件じゃないんですよ。当然のことながら、これは場合によっては強制捜査案件ですよ、本来なら。許されるわけがない。知らなかったでは済まないんですよ。私も若いころは現場におりましたよ。一線の税務行政をこっちは指揮する立場でしたよ。当然のことながら、これは強制捜査案件ですよ。それを、総理大臣であるからということにおいて強制的な調査も免れるということならば、これはだれでも総理大臣になりたがるね。
法のもとの平等という点からして、これが許されるんですか。率直に、菅さんは正直な人だと思うから、素直に思ったままを答えてください。
○菅国務大臣 これは野田議員よくよく御存じのことだと思いますが、財務大臣あるいはかつての大蔵大臣、個別案件に関して直接国税庁を指揮するということはされないのが慣例というか、そういう形であった。歴代大蔵大臣、財務大臣の議事録等を拝見いたしましてもそうなっております。
そういった意味で、私も、鳩山総理であるとかないとかということではなくて、個別案件については直接、例えば国税庁長官を呼んで状況を聞くとか、あるいは指示を出すということはこれまでもやっておりませんし、やるべきではない。そういう中で、やはり国税庁長官を中心に、税に関しては適正、公正な課税を実現するようにしっかりやってくれているし、またそういう形でやってほしい、こういうふうに期待をし、認識しております。
○野田(毅)委員 個別に指揮しろとか指示しろと言っているんじゃないんです。あなたから総理に、みずから進んで調査を受けろということをどうしておっしゃらないんですか。
国税庁の役人は個別案件では答えられないというのは、これは当然お役人の立場があるでしょう。だけれども、少なくとも当事者である総理に、みずから進んで調査を受けろと。場合によっては、本人がわからないんならお母様にも、単なる上申書じゃなくて、きちんと説明してもらわなきゃいけない。一番説明責任があるのはお母さんじゃないですか。そう思いませんか、本人は知らぬと言っているんだから。金銭授受が本人の知らぬところで行われているというんなら、だれがお金を動かしていたんですか。お母さんじゃないですか。であれば、お母さんから事情を直接聞くのは当たり前の話じゃないですか。本人が知らぬなら、なぜ鳩山さんはお母様にしっかり説明してくれと言わないんですか。そう言うのが筋じゃないですか。どう思いますか。
○菅国務大臣 私も鳩山総理の答弁をそばで聞く機会が多いわけですが、納税はした、しかし最終的ないろいろな判断は国税庁の方がされるでしょうという趣旨の話をされておりまして、そういう意味では、国税庁がどのような判断をする、あるいはそれについての調査をするしないも含めて、総理は国税庁にある意味ではお任せをされているんではないか、そういうふうに答弁から私は理解しております。
○野田(毅)委員 現在の統治機構の中では、検察であれ国税庁であれ、動けないんですよ。小沢さんに鳩山総理から説明責任を果たすように電話したとかいうことが出ていますが、だったら、御本人みずから進んで、お母様に対して説明責任を果たすようにおっしゃるべきじゃないですか。
私は、予算委員会でもお話ししたんですが、実はこの構図はフィクションじゃないかと思っているんだ。本当に贈与であったら知らないわけがない。これはあり得ない。本当は、政治団体に対する寄附行為だったはずだ。寄附行為であれば、秘書が知っていて本人が知らぬことは間々あることですよ。お互い政治家としてわからぬじゃない。だけれども、その場合は、限度を超えた寄附をした場合は、寄附をした側も罪になるんだ。つまり、母親の方に嫌疑がかかるんだ。場合によっては、禁錮、罰金だ。限度を超えた部分は全額没収ですよ。親孝行な息子としては、母親をそういう形で傷つけるわけにいかないから、あえてルートをねじ曲げて贈与ということにしたんじゃないですか。だれが見ても明らかじゃないですか。
しかし、贈与してもらったお金をまたみずからの政治団体に寄附している。あるいは貸し付けているという構図をとっているんだ。であれば、今度は、鳩山さん自身が寄附限度を超えたという罪を背負うことになるんだ。だから、貸し付けだというフィクションをまたとろうとしている。私は、このことを、総理大臣だからこのフィクションができるんだと。一般の人ならすぐアウトですよ。皆さん、みんなアウトだよ。やはりこれは総理大臣にならなきゃ損だねという話になる。逆に言うと、総理大臣であれば、黒を白に言いくるめることもできる。
法のもとの平等のあり方から見て、これで本当に法治国家として成り立つんだろうか。深刻な問題だと思う。今後、これが前例となって似たような総理がどんどん出てきたら、一体どうするんですか。もっとも、こんなお金持ちの人はいないかもしれない。だけれども、余りにもひど過ぎると思わぬですか。
この問題、御本人と本当はもう一遍予算委員会でやりたいと思うぐらいですが、しかし、少なくとも副総理であるあなたから鳩山さんに、みずから進んで税務調査を受けるべき、母親にもそう申し上げるべきという進言をする気持ちはないですか。もう一遍聞きます。
○菅国務大臣 野田議員の方から、いろいろな可能性というのか、推測を含めての御指摘をいただいているわけですが、私は、鳩山総理はできるだけいろいろな疑問に対してあらゆる機会に丁寧に答えようという姿勢で臨んでおられますし、先ほど申し上げたように、税務当局についても、私がそばで答弁を聞いている限りは、そういった調査というのか、税務当局の判断というものにゆだねるという姿勢で貫かれておられますので、今そういう姿勢でおられる総理に、私はその姿勢は望ましい姿勢だと思いますので、それ以上何か私から言わなければならないとは思っておりません。
○野田(毅)委員 言葉は過ぎるけれども、それでは菅さん、あなたも同罪だ。日本国の税務のあり方の最高責任者の一人として、こんな状態、まさに今、確定申告のさなかですよ。今、税務の現場でどういうような会話が交わされているか。今後、税務職員が実地調査に赴いたときに、中小企業は本当にその日その日を苦しんでいる中で、この問題をどう受けとめていますか。そんなことで日本の納税が適正に正しく行われるか。期待する方が無理だ。そういう意味で、指揮をとる資格はない。
せめて、僕が今言ったように、菅さんから総理には、みずから進んで説明責任を果たせ、母親にも果たしてもらいなさいと、なぜそれぐらい言えないのか。どうして言えないんですか。くどいようだけれども、せめて、それが日本国の統治機構を守っていく根幹じゃないですか。この統治機構の根幹が揺らいでいるんですよ。済みません、知りませんでしたと神妙な顔をして答えている。それだけで説明責任を果たしたことになりませんよ。
もう一遍、くどいようだけれども、鳩山さんにあなたからアドバイスしたらどうですか。なぜできないんですか。もう一遍。
○菅国務大臣 先ほどと同じ答弁になって恐縮なんですが、今、鳩山総理が、税務について、税務当局がやろうとしていることを、何かそれに応じないとか、そういう姿勢をとっておられるとは私は見ておりません。皆さんも御承知のように、国会を含むいろいろな機会に、自分は知らなかったけれどもわかった段階で納税をした、それでいいのかどうかについての判断は国税庁の方で判断されるでしょうという趣旨の答弁をされておりますので、そういった意味で、何かそういうことを避けているとか、逆にそういうことをやらせないようにとめているというようなことが、私にはそういうふうには見受けられませんので、そういった意味で、それ以上のことを申し上げることは考えておりません。
○野田(毅)委員 この問題でいろいろやっても答えはそれ以上進まないかもしれないが、ただ、はっきりしたことは、決して鳩山さんだけじゃなくて、菅さん、あなたにも責任があるんですよ。税務行政の、総理に次ぐ最高責任者なんだから。統治機構として、憲法上も納税義務ははっきり書いてある。納税義務を国民がしっかり果たさなければ国家は成り立たないんですよ。一番の根幹の一つなんですよ。財務大臣もその自覚を持って臨んでもらわないと。これが一番の根幹の本筋なんですよ。先進民主主義国で、こんなことでトップが務まるなんてあり得ないんだ。よほど日本国というのはいいかげんな国なんだねと、世界じゅうにさらけ出すような話だ。