快気分析

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自然災害の仕組み 理論化と対策へのアプローチ - 地震雲の話 その5

2015-11-24 23:16:17 | 地震 津波
 先程の記事は少し長くなってしまったので一度区切りました。
 この後の話を続けたいと思います。
 地震雲でよく言われる「さざ波状雲」については当ブログ前々回の記事で少し書きましたが、その後に調べてみると、どうも大気重力波によって発生する事が多いようです。
 大気重力波と地震の関連は例えば次の説明資料がありました。

引用開始(一部抜粋)

http://www.tochiginokenkyusha.com/ikase7/ikase7kiso2.html

4、さざなみ雲と大気重力波

○さざなみ雲

さざなみ雲は元東大地震研究所 応用理学 技術士である宇田進一氏が名づけた。

「さざ波雲」と言うのは幅が約10キロを超え、肉眼では判断しにくいので衛星画像を使って判断します。
「さざ波雲」発生の原因は大気重力波が関連しているらしいですが、明確にはされていません。

○大気重力波

大気重力波は、わたしたちにとって、とても身近な自然現象です。大気重力波とは、海の波と同じように、高度80~100キロ上空で、大気中にできている波のことです。海面に波がたって揺れているように、大気も波がたって揺れているのです。 普段、気が付くことはほとんどありませんが、大気の中は波が満ち溢れています。
他には、山岳波もあります。TVの天気予報などで見ることができる人工衛星「ひまわり」からの映像の中で、雲の部分を気をつけてみていると、大規模な山脈の風下に、畑の”うね”のように連なった規則的な雲を見ることができます。
これは山岳波とよばれているもので、大気重力波より生成する高さが低い。
大気重力波は大気中の波の1種で、海面の波と似たしくみでできています。大気の波なので肉眼で見えませんが、映像なら緑色にとらえる事が出来ます。
世界中"いつでもどこでも"起きている一般的な自然現象です。

上記のように地表面の震動は音波モードあるいは大気重力波モードで雲ができる対流圏のみならず、上空の電離層にまで影響を及ぼすことはわかると思います。それでは、地震の前に生じる地表面の振動(微振動)でできるさざなみ雲や大気重力波で地震を予想することはできるのでしょうか。

まず、さざなみ雲です。他にも多数。

●宇田 進一(2004),宇宙から見た雲の漣状構造による地震予知の的中率(的中数/予測数)(A030)(演旨),日本地震学会講演予稿集秋季大会,2004,,15-15,日本地震学会
●宇田 進一;宇宙から見た雲のさざ波状構造による地震予知の見逃し率および修正見逃し率(E100 P004)
UDA Shinichi(2005),Overlook rate of earthquake prediction by means of ripple like structure of cloud observed from space ,Abstracts, Japan Earth and Planetary Science Joint Meeting (CD-ROM),2005,,E100-P004,Oceanographic Society of Japan.
●宇田 進一;前多 美佳(2006),首都圏で発生する地震の直前前兆の特徴--宇宙から見た雲のさざ波状構造による地震予知法による--(E141-P012)(ポスターセッション)(演旨),日本地球惑星科学連合大会予稿集(CD-ROM),2006,,E141-P012,日本地球惑星科学連合

次に、大気重力波です。他にも多数

●宇田 進一(2007),宇宙から見た大気重力波の分布面積によって地震の発生を予知できるが,これは何を反映したものだろうか(E117-P009)(ポスター セッション)(演旨),日本地球惑星科学連合大会予稿集(CD-ROM),2007,E117-P009,

●謝辞

最近、テレビ報道特番やニュースなどで大地震の危険性とともに地震の予測についても、取り上げられるようになってきました。
4,5年前には考えられなかったことです。
これらは、宇田進一氏の多大な努力ならびに数多くの文献さらにはテレビ出演などにより、多くの方が地震の予知も可能ではないかと評価するようになったためであると思われます。

これらの功績に対し、私どもは深く尊敬と感謝の意を表します。

5、本サイトでの活用方法

本サイトでは、開設以来、ずっと、太陽活動と地震の関係を折を見て報告して来ました。古い読者の皆様はご存知の通りです。

その中で「高速太陽風などによるコロナ質量放出による太陽のエネルギーは地圏のプラズマ対流やオーロラに変換され、大気重力波に変換され、大気質量再分配が起こり、地震が発生する」とするボコフ博士たちの研究は壮大でかつ、日々の地震予想までされているというスケールの大きさです。

しかし、私たちが「衛星写真を使用して直接地震規模や震源や発生時期を詳細に予想すること」は、十年ほど前に特許が取得(特許名;人工衛星による雲観察で地震を予知)されており、不可能であると判断し、主として他の観測結果の裏づけとして活用しています。詳細に予想する場合には、特許所有者への許諾が不可欠です。

また、ボランテイアで無償で限れれた時間内で計算式に基づいて予想することは不可能です。本サイト内で投稿された衛星写真による大気重力波やさざなみ雲を上記の文献等により地震規模などをシュミレーションしたりすることは、時間の都合上できません。

引用終了

 前回の記事で「しかし上記の発生要因以外で地震雲が発生するならば、それは地震雲も見ておいても良い、となります。」とは上記の説明でわかると思います。
 つまり、さざ波状雲は、岩石、岩盤の破壊とは関係なく、「地震の発生する要因、トリガー系の雲である」、と言う事になります。

自然災害の仕組み 理論化と対策へのアプローチ - 地震雲の話 その4

2015-11-24 22:23:22 | 地震 津波
 大気イオンが増加すると地震雲の発生になりやすい、と言うのが一般論ですが、その大気イオンの発生過程はいくつもあるようです。
 私が20代の時に目にした資料では岩石に力をかけると、破壊に至る直前に直接、プラズマ(イオン化された気体)が発生する、と言う内容に解釈されたので、殆どそう言うものか、と思っていましたが、特に最近はそうでもないプロセスで大気イオンが発生する説が多いようです。
 それは次の通りです。

引用開始(一部抜粋)

http://blog.sizen-kankyo.net/blog/2011/12/001005.html
事例⑥:東北地方太平洋沖地震
atmc-Tokyoより

東日本大震災の発生前に、大気中のラドンガス濃度が昨年6月から半年間増加していたことが、東北大と神戸薬科大、福島県立医大の研究で分かった。12日から静岡市で開催される日本地震学会で発表する。研究グループは「今後の地震予測に寄与する可能性がある」と期待を寄せている。
研究グループによると、季節により規則正しい増減傾向を示す大気中のラドンガス濃度が、平成20年ごろから数値が乱れ始め、昨年6月から12月初旬まで 増加。その後急激に減少し、東日本大震災発生までの約3カ月間、通常よりやや低い濃度レベルを維持した停滞期間が続いた。
東北大の長濱裕幸教授は「大気中のラドンガス濃度の計測は、放射線測定をしている施設でも可能だ」としたうえで、「今後大気中のラドンガス濃度を計測するモニタリングネットワークができれば、大規模な地震発生地域の予測に貢献できる」としている。

◆ ◆ ◆ 地震予知としてのラドン濃度測定の可能性
以上の事例などから、ラドン濃度測定による地震予知の可能性について考えてみます。
◆ 可能性
地震予知に「使えそう」な根拠を挙げると
①「地震前にラドンが発生する」という根拠が明確(花崗岩の亀裂)
②ラドン濃度の測定手法が確立されている
③過去に事例がいくつもあり、グラフを見てもその変化が明確
④ラドンのもつ電離作用によって大気中の窒素や酸素がイオン化し、地震雲などや電離層の擾乱等の予兆を発生させる、という仮説が成り立つ。(詳細は今後追求していきます)
⇒この前提に立てば、ラドンが原因で発生すると思われる地震の予兆(地震雲・電離層の擾乱)とも併せて見ると、より予知の可能性が高くなりそう。
つまり、「地震前には確実にラドンが発生し」、「その測定も容易で」、「結果も分かりやすい」
ことが、ラドン濃度測定の特徴だといえます。

引用終了

 つまり地殻の中に存在するラドンが地殻の破壊時にラドンガスとして地中から放出され、それで大気中の窒素や酸素がイオン化される、とする見方です。
 これだとその地殻中に含まれるラドンが多い地質と少ない地質では、ラドンガスの発生に大きく差が出る事になりますが、実際どの位の差があるのかは調べきれていません。
 またラドンだけでなく、トリウムも同様に発生し、同様な働きをする、と言う見方もあるようです。

引用開始(一部抜粋

http://www.geosociety.jp/faq/content0421.html
地震の震源付近から何らかの放射性物質や微粒子が放出されるのであれば,その上の水蒸気に飽和した大気に特徴的な雲ができるのは,あり得ることである.実際いくつかの地震の前に,それらの震源の近くで,地下からのラドン(気体の放射性元素)の放出が観測されている(例えば阪神大震災の前;安岡ほか, 1996; 脇田, 1996; 佐伯ほか, 1995).ラドンは岩石中のトリウムやウランの放射壊変により発生するもので,平常時でも地下室の空気中には比較的多く含まれ,断層,地すべり,地割れなどが発生すると地表へ放出される(人為的な掘削工事でも同様).因みに人間の自然被曝の半分程度は,ラドンを呼吸することによる内部被曝である.ラドン222の半減期は3.8日であり,これが震源付近から放出され,上昇気流に乗って上空に達すると,水蒸気に飽和した大気中に帯状の雲ができる可能性はあるが,実証されていない.ラドンに起因する大気イオン(帯電エアロゾル)濃度を各地で測定して地震予測をめざす全国組織もある(弘原海, 1998).この他,震源域から発生する電磁波や流体力学的な重力波(表面波)で地震雲が形成されるとする考えもある(週刊現代特別取材班, 2005; 森谷, 2009).

引用終了


 一方、もう一つの大きな大気イオン(つまりプラズマ)発生のプロセスである「岩石の破壊直前、或いは破壊時に直接プラズマが発生する」と言う分類には、大きく分けて3つあるようです。

引用開始(一部抜粋)

http://www.chem-eng.kyushu-u.ac.jp/lab5/Pages/review/plasma2.html
熱プラズマを発生するには主として電気的方法が用いられ、大別して電極間のアーク放電を利用する方法と、高周波電磁場を利用して誘導的に気体を加熱する方法、マイクロ波により気体を加熱する方法がある。

引用終了

 そしてその各々も次の説明でわかります。

引用開始(一部抜粋)


https://kaken.nii.ac.jp/d/p/15656024.en.html
マイクロ波発生が,高温で生成されるプラズマによるものかを確かめるため,静圧力により岩石を破壊したところ,マイクロ波が検出された.発生電力量は,圧電性強い珪岩と弱い斑レイ岩で,ほとんど同じである.花崗岩と玄武岩では,明らかに発生電力が少ない.そのデータの解析を進めた.発生電力量が,破壊直前の圧縮力(岩石により異なる)にほぼ比例することが示された.従って,この現象がプラズマによるものでなく,岩石の破壊の激しさに関連することが推定される.

地震に際して岩石が破壊され発生するマイクロ波を、人工衛星で受信できるかを見るために,システムの検討を進めた.実験値を元に発生電力を推定し,システムS/Nを求めた.その結果,充分検出の可能性があることが示された.また宇宙研本部の科学衛星の蓄積データにおいて,地震時のマイクロ波受信記録を調査した.


http://muto.nornir.co/?page_id=8
摩擦に伴う岩石の帯電と気体放電プラズマ発生に関する研究

地震に先行して,電磁放射や発光などの電磁気現象が知られている。一方,岩石実験から,岩石破壊時に電磁波(光),荷電粒子やプラズマの発生が報告されているが,地震に先行する電磁放射機構の決定的な解明には至っていない.断層面上でのアスペリティの動きを模擬したすべり摩擦実験から,石英等の天然鉱物間での摩擦帯電による発光を顕微鏡下にて直接観察した.発光は低応力(4MPa),低すべり速度(9.5mm/s)で発生し,分光測定から,摩擦帯電による気体の絶縁破壊(プラズマ発光)に起因することが明確になった.さらに,模擬断層ガウジを用いた摩擦実験から,高速すべりの直前のゆっくりすべり時に断層表面が局所的に帯電する可能性を明らかにした.これらの発見により,地震直前のゆっくりすべり時(地震核形成)に長波長電磁異常が伴われる可能性があることを摩擦実験から明らかにし,地震先行電磁現象を断層力学と地球電磁気学のフレームワークで理解することに成功した.

引用終了

 大きい分類の「高周波電磁場を利用して誘導的に気体を加熱する方法」については、岩石破壊時の例は調べきれていませんが、実際の岩石破壊の過程で起こりうるとは考えられます。

 ですから全体では、大きく分けて2つ。
 一つは岩石からのラドンやトリウム放出による間接的な大気イオン生成。
 もう一つは岩石からの直接的なプラズマ発生による大気イオン放出。

 そうすると「ラドンやトリウム濃度だけでは岩盤破壊は把握できないのか?」と言う事になります。
 地殻の破壊直前時や破壊時に間接法と直接法でどの位の差が出るのか?は比較した事がないのでわかりません。
 地震雲がこれら要因だけで形成されるならば、地震雲を観測するより大気イオン濃度やラドンガス濃度を直接測った方が良い事になります。
 何故なら地震雲は大気中の水蒸気濃度次第で発生する規模が異なるからです。
 しかし上記の発生要因以外で地震雲が発生するならば、それは地震雲も見ておいても良い、となります。