田中雄二の「映画の王様」

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『アタラント号』4Kレストア版

2018-11-01 10:10:48 | 新作映画を見てみた
 1934年に29歳で夭折した伝説の映画監督ジャン・ヴィゴの遺作で、唯一の長編劇映画。日本では91年にようやく初公開された。今回は4Kレストア版での公開となる。



 田舎町とル・アーヴル間を運行する艀(はしけ)船アタラント号。乗組員は船長のジャン(ジャン・ダステ)、老水夫のジュール(ミシェル・シモン)と少年水夫、そして大量の猫たち。そんなアタラント号にジャンの新妻ジュリエット(ディタ・パルロ)が乗り込む。始めは新婚生活にときめいていたジュリエットだったが、やがて狭い船内生活に息が詰まり…。

 伝説のこの映画を初めて見た。サイレントの味わいを残したフォトジェニックな映像、パルロが発散するエロス、新婚夫婦の仲を取り持つ容貌魁偉のシモンの存在感などは、確かに印象に残るが、流布されている伝説ほどには心に響かなかった。良作ではあるが、あくまで小品の佳作といった類のものではないか。

 今回の4Kレストア版での公開について、また蓮實重彦一派が大騒ぎするのだろうか。
コメント
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