田中雄二の「映画の王様」

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『メアリーの総て』

2018-11-14 11:20:23 | 新作映画を見てみた
 ゴシック小説の古典『フランケンシュタイン』を生み出したイギリスの女性作家メアリー・シェリーの波乱に満ちた半生を、エル・ファニング主演で映画化。



 19世紀初頭、小説家を夢見る少女メアリーは、妻子ある詩人パーシー・シェリーと出会い、駆け落ちをするが、さまざまな不幸に見舞われる。1816年、失意のメアリーとパーシーを、詩人のバイロンが別荘に招待し、「皆で一つずつ怪奇談を書いて披露しよう」と持ち掛ける。

 サウジアラビア出身のハイファ・アル=マンスール監督をはじめ、製作、脚本も皆女性ということで、メアリーに共感しながら、彼女の心情に焦点を当て、18歳の少女が、なぜ『フランケンシュタイン』を書いたのかを明らかにする。それをファニングが堂々たる演技で表現した。

 ここでは、孤独、喪失、死、裏切りをキーワードに、メアリーが、ガルバニズム(生体電気)ショーに魅せられ、死者を蘇生させることに興味を持ったのは母と娘を失ったから、あるいは、男(夫)への幻滅や絶望感が怪物(自分)を生み出した科学者像に反映されていると推理するなど、興味深い考察がなされている。

 ところで、バイロンが持ちかけたいわゆる「ディオダディ荘の怪奇談義」は『フランケンシュタインの花嫁』(35)『ゴシック』(86)でも描かれていたが、今回は『吸血鬼』を書きながら、バイロン作とされ、失意の中で自殺したジョン・ポリドリの姿も印象的に描かれていた。ポリドリ役の俳優、どこかで見たことがあると思ったら、『ボヘミアン・ラプソディ』でロジャー・テイラーを演じたベン・ハーディだった。

 また『フランケンシュタイン』はSFの祖とも言われる。これがなければ、今のマーベルやDCコミックの映画もなかったかもしれない。などと思っていたら、マーベルコミックスの名物クリエーター、スタン・リーが95歳で亡くなったことを知った。ヒッチコックのように、マーベル作品の“どこか”に、毎回カメオ出演する楽しいじいさんだった。
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