田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『嵐が丘』

2018-11-26 12:28:39 | 1950年代小型パンフレット

『嵐が丘』(39)(1993.1.4.)

 「嵐が丘」と呼ばれる古い館に養子として引き取られたヒースクリフ(ローレンス・オリビエ)は、ジプシーの血を引く野生児だった。やがて彼は、館の娘キャシー(マール・オベロン)と身分違いの恋に落ちるが…。原作はエミリー・ブロンテ。監督はウィリアム・ワイラー。



 ドイツ系移民のワイラーの映画を見れば見るほど、その奥底に、舞台や文学への傾倒や、アメリカ人のヨーロッパコンプレックスが描かれていることが分かってきたのだが、このイギリスの悲恋文学の古典を映画化したものを見ると、ワイラーの映画に共通する、ある側面が浮かび上がってきた。それは、人間の持つ冷徹さや残酷さ、裏切りや怨念といったものを作品に内包させることだ。

 例えば、この映画同様に、製作者サミュエル・ゴールドウィンと組んで撮った『孔雀夫人』(36)『この三人』(36)『デッド・エンド』(37)、ベティ・デイビス主演の『黒蘭の女』(38)『月光の女』(40)『偽りの花園』(41)、戦後の『女相続人』(49)『探偵物語』(51)『黄昏』(52)『噂の二人』(61)『コレクター』(65)と、そのフィルモグラフィを見てみると、ワイラーがジョン・フォードやフランク・キャプラのようなハートウォームものをほとんど手掛けていない事が明らかになる。

 そして、オードリー・ヘプバーンと組んだ『ローマの休日』(53)『おしゃれ泥棒』(66)こそがワイラーにとっては異色作であったことに気付かされるのだ。ただ、フォード同様に、ワイラーもまた“映像の魔術師”であり、監督としての堂々たる力量の大きさを示して、救い難く、重過ぎるドラマを、名作にしてしまうところがすごいのである。

ローレンス・オリビエのプロフィールは↓


マール・オベロンのプロフィールは↓

パンフレット(50・太陽洋画ライブラリー)の主な内容
解説/梗概/原作者エミリイ・ブロンテのこと/ローレンス・オリヴィエ、マール・オベロン、デイヴィッド・ニヴン、ジェラルディン・フィッツジェラルド/嵐ヶ丘の背景について(山本恭子)/嵐ヶ丘のメモ(岡俊雄)/鑑賞講座 映画「嵐ヶ丘」について(田村幸彦)

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『おとなの恋は、まわり道』

2018-11-26 07:21:05 | 新作映画を見てみた
 最悪のリゾートウエディングに招待された偏屈男と屁理屈女。飛行機やバスは隣の席で、ホテルは続き部屋。これは奇跡の出会いか、と思いきや、口を開けば皮肉の言い合いに。果たして2人の関係はどうなる…というシチュエーションコメディ。



 ウィノナ・ライダー、キアヌ・リーブス4度目の共演作。セリフがあるのはこの2人だけ。中年になった2人がとにかくしゃべりまくる。「こんなウィノナ、キアヌ、見たことない」という感じで、少々スパイスが効き過ぎの感もある。大笑いではない、失笑、苦笑を誘発する異色作。 
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『映画の森』「2018年11月の映画」

2018-11-26 06:07:47 | 映画の森
共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)11月26日号で、
『映画の森』と題したコラムページに「11月の映画」として5本を紹介。
独断と偏見による五つ星満点で評価した。

古書を巡るミステリー『ビブリア古書堂の事件手帖』☆☆
凶悪なダークヒーローが登場『ヴェノム」』☆☆☆
ロックバンド・クイーンの軌跡『ボヘミアン・ラプソディ』☆☆☆☆
若者投資グループによる詐欺事件『ビリオネア・ボーイズ・クラブ』☆☆☆
シーツをかぶった幽霊の摩訶不思議な物語『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』☆☆

クリックすると拡大します↓



WEB版はこちら↓
https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2018-12-18_1958421/
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