田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『スミス都へ行く』

2018-11-15 16:58:57 | 1950年代小型パンフレット

『スミス都へ行く』(39)(1982.12.12.)

 田舎者のスミス(ジェームズ・スチュワート)は地元のボーイスカウトのリーダーだったが、死亡した上院議員の代わりに、政界に担ぎ出される。スミスはそこで政治の腐敗を知り、単身立ち向かうが…。



 フランク・キャプラ映画のラストは、どれも見え見えのハッピーエンド。普通なら何だばかばかしいとなるところだが、なぜか彼の映画は一味違う。今の目から見れば、特に作り方がうまいというわけでもないのに、これでいいのだと妙に納得させられてしまうところがあるのだ。この映画にしても、最後に悪徳政治家が改心することなど、現実の世の中では起きるはずもない。それなのに快い感動を覚えるのは一体なぜなのだろう。

 多分そこには、現実の世の中では見失われている人間の良心が描かれているからなのだろう。人間は本来こうあるべきなのに、現実はあまりにも正直者がバカを見るようなことが多過ぎるのだ。

 キャプラが活躍した時代は遥か昔であるにもかかわらず、いまだに鮮度を失わないのは、実は悲しむべきことなのかもしれない。また、今のスピルバーグの映画などは形こそ違え、キャプラ的なものだと言えなくもない。そう考えると、人間同士が繰り広げる夢物語が、いつの間にか宇宙にまで手を広げなければ描けなくなっているということなのか、とも思わされる。

 ジェームズ・スチュワート、若い頃は大根役者だった、などという話を耳にしたことがあったが、どうして、どうして。こんなスミスみたいなお人好しは彼にしか演じられないと思わせる名演だった。脇役も悪徳政治家役のクロード・レインズやトマス・ミッチェルが頑張っていたが、何と言っても議長役の俳優が光った。誰かと思って調べてみたら、ハリー・ケリー・ジュニアの親父、つまりハリー・ケリーなんだと…。

フランク・キャプラのプロフィール↓


ジェームズ・スチュワートのプロフィール↓


ジーン・アーサーのプロフィール↓

パンフレット(54・東宝事業課(日比谷映画劇場 No54-14))の主な内容
ものがたり/かいせつ/「スミス都へ行く」を見て(飯島正)/ジーン・アーサー、ジエームス・スチユアート、フランク・キャプラ

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『必死の逃亡者』

2018-11-15 13:43:35 | 1950年代小型パンフレット

 先日、1950年代映画の小型パンフレットを大量に買い込んだが、その中から、見た際のメモが残っている映画について書き出してみようと思う。

『必死の逃亡者』(55)(1981.3.21.)

 平凡な家庭に突然押し入った3人組の脱獄囚。彼らは仲間の情婦が金を届けるまでそこに居座ることにするが…。さまざまなジャンルで名作を残したウィリアム・ワイラーが1955年に撮ったサスペンス風の家庭劇。



 あの頃はこんな人質事件など、映画の中の出来事に過ぎなかったのだろうが、今では、いつこんなことが起こっても不思議ではない。それだけに、先見の明ありといったところだろう。

 フレドリック・マーチ、ハンフリー・ボガート、ギグ・ヤングといった今は亡き名優たちがそれぞれ好演している。特にマーチが演じた勇気ある父親像は、最近見られなくなったタイプなので、悲しいかな珍しいものとして映った。

 主犯の弟(デューイ・マーティン)が次第にこの男を尊敬するように描かれているところも、この男のキャラクターを引き立てるし、主犯のボギーと男の妻(マーサ・スコット)のこんな会話の中にもそれは表されている。「あんたの亭主がこんなに肝っ玉のある奴だと知ってたか」「いいえ、初めて知ったわ」。

 そして、マーチに対抗するかのように、ラストで目をひんむいて死ぬボギーが強烈な印象を残す。

 【今の一言】この映画は、1990年にマイケル・チミノ監督、ミッキー・ローク主演で『逃亡者』としてリメイクされた。
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/254fe903aeb7efa50b0f2843331a260d

パンフレット(56・新世界出版社(AMERICAN MOVIE WEEKLY))の主な内容は
ハンフリー・ボガート、フレドリック・マーチ、アーサー・ケネディ、マーサ・スコット、デューイ・マーティン/ウィリアム・ワイラー/製作余話/解説/ストーリー/原作・舞台・映画と「必死の逃亡者」の大ヒット/ギャング役者の貫禄を見せるハンフリー・ボガート/ウィリアム・ワイラー作品目録/パラマウント・スター告知板・メエリー・マーフィー

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