『サンセット大通り』(50)(1986.8.22.銀座文化)
ビリー・ワイルダー監督が、ロサンゼルス郊外の豪邸を舞台に、サイレント映画時代の栄光を忘れられない往年の大女優の妄執と悲劇を通して、ハリウッドの光と影を描く。
往年の撮影所を舞台にした甘々の『キネマの天地』(86)を見た後だけに、今から30年以上も前に作られたこの映画のすごさやうまさを改めて知らされることになった。甘さや感傷を全く感じさせないのに、映画作りの魅力や魔力を感じさせる二面性を持ち、美しさと醜さが同居した異様な世界を展開させるのだ。
何よりすごいのは、グロリア・スワンソンとエリッヒ・フォン・シュトロハイムというサイレント映画からの生き残りの、役柄と実像が重なって見えてくる怖さと哀れさであり、よくこんな役をOKしたなあと思わせるところがある。
その一方、シナリオライター役のウィリアム・ホールデンとナンシー・オルソンという、当時の若手が語る映画への夢も描かれ(2人が語り合いながらシナリオが出来上がっていくシーンは見ていて楽しくなる)、その両極を交差させながら、映画の魅力と魔力を浮かび上がらせるのである。
後年、ワイルダーは、この映画の裏返しとも思える『悲愁』(79)を撮るが、あの映画ではホールデンが旧世代の映画人を演じていたのも印象深い。
そういえば『エアポート75』(74)の乗客の中に、スワンソンとオルソンがいたことを思い出した。スワンソンはこの映画同様、過去の大スターを演じ、オルソンは難病を抱えるリンダ・ブレアの母親役だった。あれはこの映画を意識したキャスティングだったのだろうか。
ビリー・ワイルダーのプロフィール↓
ウィリアム・ホールデン、エリッヒ・フォン・シュトロハイムのプロフィール↓
パンフレット(52・国際出版社)の主な内容
解説/ストーリー/アメリカの批評抜粋/グロリア・スワンソン