田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『サンセット大通り』

2018-11-16 20:03:24 | 1950年代小型パンフレット

『サンセット大通り』(50)(1986.8.22.銀座文化)

 ビリー・ワイルダー監督が、ロサンゼルス郊外の豪邸を舞台に、サイレント映画時代の栄光を忘れられない往年の大女優の妄執と悲劇を通して、ハリウッドの光と影を描く。



 往年の撮影所を舞台にした甘々の『キネマの天地』(86)を見た後だけに、今から30年以上も前に作られたこの映画のすごさやうまさを改めて知らされることになった。甘さや感傷を全く感じさせないのに、映画作りの魅力や魔力を感じさせる二面性を持ち、美しさと醜さが同居した異様な世界を展開させるのだ。

 何よりすごいのは、グロリア・スワンソンとエリッヒ・フォン・シュトロハイムというサイレント映画からの生き残りの、役柄と実像が重なって見えてくる怖さと哀れさであり、よくこんな役をOKしたなあと思わせるところがある。

 その一方、シナリオライター役のウィリアム・ホールデンとナンシー・オルソンという、当時の若手が語る映画への夢も描かれ(2人が語り合いながらシナリオが出来上がっていくシーンは見ていて楽しくなる)、その両極を交差させながら、映画の魅力と魔力を浮かび上がらせるのである。

 後年、ワイルダーは、この映画の裏返しとも思える『悲愁』(79)を撮るが、あの映画ではホールデンが旧世代の映画人を演じていたのも印象深い。

 そういえば『エアポート75』(74)の乗客の中に、スワンソンとオルソンがいたことを思い出した。スワンソンはこの映画同様、過去の大スターを演じ、オルソンは難病を抱えるリンダ・ブレアの母親役だった。あれはこの映画を意識したキャスティングだったのだろうか。

ビリー・ワイルダーのプロフィール↓


ウィリアム・ホールデン、エリッヒ・フォン・シュトロハイムのプロフィール↓
 

パンフレット(52・国際出版社)の主な内容
解説/ストーリー/アメリカの批評抜粋/グロリア・スワンソン

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『麗しのサブリナ』

2018-11-16 11:17:39 | 1950年代小型パンフレット

『麗しのサブリナ』(54)(1985.12.3.銀座文化)

 富豪ララビー家のお抱え運転手の娘サブリナ(オードリー・ヘプバーン)が、一家の次男デビッド(ウィリアム・ホールデン)に失恋しパリに旅立つ。2年後、美しく変身した彼女に堅物の長男(ハンフリー・ボガート)が心を奪われて…。ビリー・ワイルダー監督のロマンチックコメディー。



 映画の魅力、楽しさを全て心得ているからこそなし得る芸当なのだろうが、全くワイルダーの演出力、俳優の生かし方、ストーリーの転がし方…には恐れ入るばかり。この映画にしても、大筋はよくあるシンデレラ物語に過ぎない。それなのに、これほど面白く見せてくれるとは…。

 この映画は、特に俳優の生かし方が素晴らしい。オードリーの前半のかわいらしさ、一転後半の美しさ。ボギーの珍しく喜劇的な演技、ホールデン面目躍如のプレーボーイぶりなど、主役の3人もさることながら、父親役のウォルター・ハムデンをはじめとする、脇役たちもまた見事なのである。

 ワイルダーの映画は、総じて脇役たちが活躍する場が多く、ほんのワンシーンしか登場しない者にまで目が行き届いている。この映画で言えば、パリの料理学校の先生がその最たるもの。

 また、脚本家出身だけに、粋なセリフをちりばめながら、ストーリー展開も実にスムーズに進めていく。帰り際にすれ違った人の「こんないい映画を放っておくなんて許せない」という一言に、我が意を得たりという気がした。



パンフレット(54・東宝事業課(東宝事業課(日比谷映画劇場 No54-18))の主な内容
ワイルダーの演出神経(飯田心美)/ヘップバーンとパラマウント・カラー(筈見恒夫)/ウィリアム・ホールデン、ハンフリー・ボガート/サブリナのヘップバーン/役に立ったボカートの少年時代の肖像画/ウオルター・ハムデン、マーサ・ハイヤー、マルセル・ダリオ/オランダ時代のオードリー・ヘップバーン/かいせつ/ものがたり/ヘップバーンのファッション

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『シュガー・ラッシュ:オンライン』

2018-11-16 08:29:39 | 新作映画を見てみた
 『シュガー・ラッシュ』(12)の続編で、原題は「Ralph Breaks the Internet=ラルフがネットを破壊する」。



 前作で親友になったヴァネロペとラルフが、今回はインターネットの世界に飛び込み冒険を繰り広げる。アーケードゲームのキャラクターがネットの中に入るとどうなるのか…。新たな世界にワクワクするヴァネロペと戸惑うラルフの姿は、初めてインターネットを目にした時の人間の反応の投影でもあるそうだ。そんな中、2人の友情にも変化が訪れる。

 見どころは、インターネットの中身の視覚化。東京をイメージしたというカラフルな世界が現出し、ディズニーキャラクターも多数登場する。プリンセス専用の部屋には、歴代のディズニー・プリンセス14人全員が集うなど、スピルバーグの『レディ・プレイヤー1』のアニメ版の趣もある。
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