田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『逃亡者』

2019-02-06 12:28:08 | 1950年代小型パンフレット
『逃亡者』(47)(1987.7.14.)



 1930年代のメキシコを舞台に、苦悩する司祭(ヘンリー・フォンダ)の姿を描くサスペンスドラマ。

 西部劇以外の、社会派としてのフォードの才能を示す一編。公開当時は見事にこけて、その資金回収のため、フォードは仕方なく騎兵隊三部作(『アパッチ砦』(48)『黄色いリボン』(49)『リオ・グランデの砦』(50))を撮った、などという裏話もあるそうだ。

 とは言え、フォードは本当はこうした社会性のある映画をもっと作りたかったのかもしれない。そう思えるほど、この映画には力が入っている。実際、未見の作品も含めて、『わが谷は緑なりき』(41)『怒りの葡萄』(40)などの名作もあるのだから、フォードを西部劇の神様としてだけで評価するのは乱暴だと思う。

 まあ、この映画はストーリー的には、キリスト教が根底にないわれわれ日本人には理解しずらいところもあるが、ここでも独特の映像美で見る者を圧倒する。どうもフォードには、この線で随分とだまされている気もするのだが…。

ヘンリー・フォンダのプロフィール↓
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『幌馬車』

2019-02-06 06:16:56 | 1950年代小型パンフレット

『幌馬車』(50)(1987.7.12.)



 新天地を求めてユタに旅立つモルモン教の幌馬車隊の旅を、先導する2人の牧童(ベン・ジョンソン、ハリー・ケリー・Jr)を中心に描く。

 ジョン・フォードの西部劇にしては、大作ではないし、大スターも出ていない。ところが、逆に小品の佳作といった味わいがあって、実はフォードの良さは、こういう映画にこそ発揮されるのではないかと思ってしまった。

 また、ストーリーに時折『駅馬車』(39)を思わせる件があったり、アラン・モーブリーに『荒野の決闘』(46)をほうふつとさせる役を再び演じさせたりと、過去の映画を思い出しながら楽しんで作ったようなところも感じられる。

 そして、この映画では、フォード映画の映像美を支える馬が、他の作品にも増して美しく撮られている。日本でも黒澤明が馬を美しく撮ることで知られているが、その黒澤に影響を与えたのがフォードなのだから推して知るべしだ。言い換えるなら、フォードを西部劇の神様たらしめている理由の一つがここにある。馬なくして西部劇はできないのだから。


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