2003年、アメリカのイラクに対する軍事戦略、通称“衝撃と畏怖”が実行された。01年の同時多発テロ後のアメリカを覆った異様な空気(愛国、報復、好戦)を巧みに利用して、政府が捏造した情報によって始まったイラク戦争。大手新聞社も迎合する中、唯一「本当にイラクに大量破壊兵器は存在するのか?」と異を唱えたナイト・リッダーの記者たちの動静を実話を基に映画化。またもや過去の政府の失態を描いた映画が登場してきたわけだが、こうした映画群には、間接的ではあるが、今のトランプ政権に対する反意が込められているのだろう。
監督のロブ・ライナーがワシントン支局長役で出演し、ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、トミー・リー・ジョーンズらが記者を演じているが、記者役は、いつもかっこよく描かれ過ぎると感じた。劇中「どうして記者なんかになっちまったんだろう」「
『大統領の陰謀』(76)を見たからさ」というやり取りがあったが、映画が職業に関するイメージに多大な影響を与えることは否めない。
また、ライナーにとっては、リンドン・ジョンソン元大統領を描いた
『LBJ ケネディの意志を継いだ男』(16)に続く社会派映画だが、今回は短くまとめ過ぎた感がある。それ故、経緯が分かりづらくなり、彼らが果たした役割や事の重大さがあまり伝わってこないのだ。こうした、映画を使った告発、あるいは自己浄化はアメリカ映画の長所だが、それが劇映画として良く出来ているか否かはまた別の話になる。